保険業界に10年在籍し、FP2級を取得したHIKOです。「解約すると損ですよね」という声は、貯蓄型保険をめぐってもっともよく聞くフレーズです。ただ、その言葉の裏にある「惰性で払い続けている」状態のほうが、実は大きな損になっているケースが多い、というのが業界に身を置いて見えてきた実感です。
結論から言うと、以下の5つのうち2つ以上に当てはまるなら解約を検討すべきです。
- 保険料が手取りの5%以上を占めている
- 積立保険の利回りが年1%未満
- 返戻率が100%になるまで15年以上ある
- NISAやiDeCoをまだ使っていない
- 扶養家族がいないのに死亡保障が500万円以上ある
このまま放置すると、数十万円〜100万円単位で差が出る可能性があります。
「解約=損」というより、「判断せず放置すること」が損になるケースが多いです。仕組みと判断基準を整理しますので、手元の保険証券と照らし合わせながら読んでみてください。
参考までに、生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和4年度)」によれば、1世帯あたりの年間払込保険料は平均37万円前後とされています。月額に直すと3万円超。生涯で見れば1,000万円規模の支出です。だからこそ「払い続けることが正解か」を一度数字で確認する価値があります。
解約返戻金とは何か
積立保険を途中で解約したとき、保険会社から受け取れるお金を解約返戻金(かいやくへんれいきん)といいます。
積立保険の保険料には、大きく分けて2つの用途があります。
- 保障コスト(死亡保障部分): 万が一のときに保険金を支払うための費用
- 積立部分: 解約返戻金や満期保険金の原資となるお金
保険会社はこの積立部分を運用し、一定期間後に「払った保険料より多い金額」が戻ってくるように設計しています。ただし、途中で解約すると積立部分がまだ育っていないため、払込総額より少ない金額しか戻ってきません。
返戻率の目安
解約返戻金が払込総額に対してどの程度の割合かを示す数値を返戻率といいます。
| 加入からの期間 | 返戻率の目安(商品による) |
|---|---|
| 1〜3年 | 50〜70%程度(大きく元本割れ) |
| 5〜10年 | 80〜95%程度(元本割れ) |
| 15〜20年 | 100%前後(損益分岐点) |
| 満期 | 105〜110%程度 |
返戻率が100%を下回っている期間に解約すると、払い込んだ総額より少ない金額しか戻りません。これが「解約すると損」と言われる根拠です。
ただし、この「損」はあくまでも払った保険料との比較です。「今すぐ解約する場合」と「今後も払い続けた場合」を比べて、どちらが自分の状況に合っているかを判断する必要があります。
なお、ここで挙げた返戻率はいわゆる「低解約返戻金型」を含む一般的な終身・養老タイプの目安です。商品によっては10年経過時点で返戻率70%台で頭打ちになるものもあるため、必ず手元の設計書で確認してください。
返戻率と実利回り(IRR)は別物です
判断に入る前に、ここだけ押さえてください。設計書に載っている返戻率は、投資の利回りとそのまま比べられる数字ではありません。
- 返戻率:総払込額に対して、いくら戻るかを単純に比率化した数値です。予定利率も同様で、これは保険会社が見込む運用収益の分だけ保険料を割り引くための率であって、契約者の利回りではありません
- 実利回り(IRR):いつ払っていつ受け取るかという時間軸を組み込んだ年率です。投資商品と比較できるのはこちらだけです
「30年で返戻率120%」は一見大きく見えますが、月払で30年積み立てて30年後に受け取る前提でIRRに直すと年率約1.19%です。しかも同じ「30年で120%」でも、契約時に一括で払う一時払なら年率約0.61%になります。月払は後半に払ったお金ほど寝かせる期間が短いため、同じ返戻率でも年率が高く出るからです。返戻率だけで他社・他商品と比べると、この前提の違いで順位が入れ替わります。
積立保険6タイプの実利回りの目安
| 商品タイプ | 表面利回り(予定利率/返戻率換算) | 実利回り(IRR概算) |
|---|---|---|
| 円建て終身保険 | 返戻率 約107〜140%(10〜30年) | 約0.3〜1.4% |
| 個人年金保険 | 返戻率 約110〜125%(30年) | 約0.4〜1.2% |
| ドル建て終身保険 | 予定利率 約3.0〜4.0% | 約1.0〜2.0%(為替・コスト控除後) |
| 変額保険 | ファンド連動 | 費用控除後で投信に劣後しやすい |
| 学資保険 | 返戻率 約103〜108%(17〜18年) | 約0.3〜0.8% |
| 養老保険 | 返戻率 約103〜108%(10〜30年) | 約0.3〜0.7% |
円建て終身の上限1.4%は、オリックス生命「エンキャン」の公式の契約例(30歳女性・1,000万円・10年払込)から私が計算した実測値です(エンキャンはNISAより得?)。それ以外のIRRは、2025〜2026年時点の各社公開設計書・販売設計例・予定利率の一般的な水準から逆算した概算で、商品カテゴリの大まかな水準を示すものです。実際の数値は契約年・健康状態・特約・予定利率の改定で変わるため、個別の判断は必ず手元の設計書で行ってください。
商品タイプ別の詳しい検証は、それぞれ個別の記事にまとめています。日本生命の個人年金はみらいのカタチのデメリット、ドル建ては外貨建て保険は円安の今、解約すべきか、変額はソニー生命の変額保険の運用実績をご覧ください。
学資保険・養老保険の利回りが低い理由
この2つが特に低く出るのには、3つの理由があります。
- 予定利率自体が低い:運用先が国内債券中心のためです
- 保障コストの上乗せ:純粋な貯蓄商品ではないので、死亡保障のコストが差し引かれます
- 長期固定:途中解約のペナルティが大きく、流動性を手放した分の見返りが取れていません
子どもの教育資金であれば、掛け捨ての死亡保障とNISA積立を組み合わせたほうが、保障とリターンの両面で効率が良くなるケースが多いです。
積立保険とNISAの差は10年で約29万円、20年で約145万円
「利回りの差」という言葉だと実感しにくいので、具体的な数字で確認してみます。
前提:毎月1万円を積み立てた場合(税金・手数料は考慮外。月複利で計算)
10年積立
- 積立保険(年利1%)→ 約126万円(元本120万円)
- インデックス投資(年利5%)→ 約155万円
- 差額:約29万円
20年積立
- 積立保険(年利1%)→ 約266万円(元本240万円)
- インデックス投資(年利5%)→ 約411万円
- 差額:約145万円
10年で29万円の差が、20年では145万円まで広がります。これが複利の効果です。30年積立まで伸ばすと、差額は400万円を超えます。
積立保険の利回りが0.5〜1.5%にとどまるのは、保険料の一部が保障コストや会社経費に回るためです。一方、NISAで全世界株式インデックスに長期投資した場合の期待リターンは年率4〜6%程度(過去の長期実績ベース)とされており、運用効率の差が時間とともに拡大します。
ただし「NISAなら必ず勝てる」ではない
ここで一つ重要な注意点があります。インデックス投資は元本保証ではなく、暴落時に積立を止めてしまうと複利効果も止まります。
年利5%という数字は、あくまで過去の長期平均からの期待値です。特定の10年間や20年間で必ず5%出るわけではなく、運の悪い時期に始めれば年利2〜3%にとどまる可能性もあります。
実際、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは、含み損30%超の局面で積立を止めてしまった方も少なくありません。積立を止めた瞬間に「下がったところで損切り、上がるところに乗れない」最悪のパターンに入ります。
「NISAなら必ず保険より得」ではなく、「長期で淡々と続けられる前提なら期待値が高い」というのが正確な理解です。
逆に「相場が荒れても20年続ける自信がない」のであれば、積立保険の「強制貯蓄機能」のほうが結果的に手元にお金が残るケースもあります。これは判断基準3でも触れます。
税制まで含めると差はさらに広がる
ここまでは「運用利回り」だけの比較でした。税制を加えると評価が変わります。
積立保険側のメリット:生命保険料控除
年間8万円超の保険料を払うと、生命保険料控除(一般)で所得税4万円・住民税2.8万円の所得控除を受けられます。所得税率20%・住民税10%の方で、年間約1万円の節税効果。10年で約10万円、20年で約20万円です。
ただし注意点が2つあります。
- すでに他の終身保険や医療保険で「一般生命保険料控除」の枠を使い切っている場合、この積立保険を解約しても節税メリットは減りません(追加メリットがゼロだったため)
- 解約返戻金が払込総額より大きい場合、差額は一時所得として課税対象です。ただし50万円の特別控除があるため、運用益が小さい契約ではほぼ非課税です
NISA側のメリット:運用益が完全非課税
通常、運用益には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。前述の20年シミュレーションでは運用益が約171万円。これに対して通常口座なら約34万円の税金がかかるところ、NISAでは0円です。
純差はNISA優位になりやすい
ざっくり整理すると以下の通りです(毎月1万円・20年・他の生保契約なしの場合)。下表は特定商品の数値ではなく、積立保険を年利1%・NISAを年利5%と置いた前提での試算です。
| 項目 | 積立保険(年利1%と仮定) | NISA(年利5%と仮定) |
|---|---|---|
| 運用益 | 約26万円 | 約171万円 |
| 税制メリット(控除/非課税) | 約20万円(生保料控除) | 約34万円(運用益非課税) |
| 一時所得課税 | 50万円控除内で非課税 | ─ |
| 合計手取り | 約286万円 | 約445万円 |
差額は約160万円。これはあくまで「他の生保契約なし・所得税率20%」のケースで、契約状況や所得帯で変動します。ただし、長期になるほどNISAの非課税効果が拡大する構造は変わりません。
保険業界10年で見えた「惰性で続けている人」の共通パターン
業界に身を置いて見えてきたのは、「もったいない」という感覚だけで払い続けているケースの多さです。
加入から10年以上が経ち、返戻率が80%台のまま止まっている商品を、「いつか100%になるはず」と信じて払い続けている、というパターンは典型的です。ところが設計書をきちんと確認すると、返戻率が100%を超えるのはさらに10年先、あるいはそもそも満期まで保有しても105%程度にしかならない、という商品も珍しくありません。
もう一つ多いのが、「保険に入っておけばとりあえず安心」という状態が続いているパターンです。加入時に設定した保障額が、今のライフステージに合っていないことに気づいていない、というのは一般的によくある話です。独身のころに加入した大きな死亡保障を、10年以上そのまま払い続けているケースなどが典型です。
こうしたパターンに共通しているのは、「最初に比較検討した」のは加入時だけで、その後は一度も見直していない、という点です。保険は一度入ると「払い続けることが正解」に見えやすい商品です。だからこそ、定期的に数字を確認することが重要です。
よくある設計の一例を挙げます。月2万円・20年払いの積立保険で、10年経過時点の解約返戻金が約180万円(払込総額240万円)というものです。そのまま満期まで払い続けた場合、受取額は260万円前後という設計になります。
この場合、「あと10年で+80万円」か「今解約して投資に回すか」の比較になります。年率換算すると約1%前後にとどまるため、保障ニーズがなければ見直しの優先度は高いと判断できます。
なお、金融庁が公表しているNISA口座開設数は2024年末時点で2,500万口座を超えており、30代の利用率も急速に上昇しています。「保険でコツコツ貯める」が当たり前だった世代から、「非課税口座で運用する」が標準になりつつある流れは押さえておくべきです。
あなたは解約を検討すべき?チェックリスト
以下のうち、当てはまるものを確認してみてください。
- 保険料が手取りの5%以上を占めている
- 返戻率が100%になるまで15年以上ある
- 解約返戻金が払込総額の80%未満
- NISAやiDeCoをまだ使っていない
- 扶養家族がいないのに死亡保障が500万円以上ある
2つ以上当てはまるなら、一度見直しを検討する価値があります。
手元に保険証券や設計書があれば、「解約返戻金の推移表」を確認してみてください。返戻率と残りの拘束期間がわかれば、以下の判断基準と照らし合わせられます。
解約すべき3つの判断基準
判断軸は3つだけ、しかも順番が大事です。先に「損したくないから続ける」と金額から考えると、ほぼ確実に判断を間違えます。まず保障の必要性、次に運用効率、最後に代替手段とのセット。この順番で見てください。
なお「いま解約すると元本割れするから続けたい」という気持ちは、典型的なサンクコスト(埋没費用)バイアスです。すでに払ったお金は戻りません。判断すべきは「いまから先、続けるのと解約するのとでどちらが有利か」だけです。
判断基準1:保険本来の目的を果たしているか
積立保険は「保障」と「貯蓄」を兼ねた商品です。ただし、そのどちらの目的に対しても、専用商品と比べると効率が落ちます。
まず確認してほしいのは、「今のライフステージでその保障が本当に必要か」という点です。
- 独身で扶養家族がいない → 大きな死亡保障は不要
- 貯金が100万円以上ある → 医療費は自己資金で対応できる可能性が高い
- すでに会社の団体保険や社会保険でカバーされている → 重複している保障がある
保障として機能していない保険を続けることには合理性がありません。
判断基準2:運用効率は納得できるレベルか
積立保険の「積立部分」の運用利回りは、多くの商品で0.5〜1.5%程度に収まります(変額保険は除く)。
上で見たとおり、同じ金額をNISAで積み立てた場合と比べると、20年で145万円、税制差まで含めれば160万円規模の差が生じる可能性があります。
保険料の内訳(保障コストと積立部分の比率)を確認し、積立に回っているお金が少なければ、効率は悪いと判断できます。加入時の設計書や保険証券に「積立金(解約返戻金)の推移表」が記載されていることが多いので、手元にあれば確認してみてください。
このとき、保険会社のマイページか保険証券から、(1)これまでの払込総額、(2)現時点の解約返戻金、(3)満期・払込満了までの残り期間とその時点の解約返戻金見込み、の3つを必ず確認してください。3つ目が大事です。「あと3年で元本割れが解消する」が見えているなら続ける合理性が出ますし、「あと15年続けても元本割れ」なら損切りして資金を動かすほうが期待値は高くなります。次のように書き出すと、感情ではなく数字で比較できます。
| 時点 | 払込総額(累計) | 解約返戻金 | 差額 | 返戻率 |
|---|---|---|---|---|
| いま解約 | 例:500万円 | 例:420万円 | -80万円 | 84% |
| 5年後 | 例:650万円 | 例:680万円 | +30万円 | 約105% |
| 払込満了時 | 例:800万円 | 例:880万円 | +80万円 | 110% |
判断基準3:代替手段と比較しているか
解約を検討する際に忘れがちなのが、「解約後に何をするか」のセットで考えることです。
解約返戻金を受け取ったお金をそのまま使ってしまうのであれば、保険を続けているほうが「強制貯蓄」として機能します。しかし、解約後にその資金をNISAやiDeCoに回す計画があるなら、長期的には積立保険を続けるより有利になる可能性があります。
また、保障のニーズがある場合は「解約前に新しい保険を確保する」手順が重要です。解約してから保険に入り直そうとすると、年齢が上がった分だけ保険料が上がっていることがあります。
保障は別で手配 → 解約返戻金を投資に回すという段取りが、解約を検討する場合の基本の流れです。
積立保険を解約すると税金はかかる?|一時所得の計算
解約を検討するときに見落とされやすいのが税金です。ここは国税庁の説明にそって整理します。
保険料を払った人と受取人が同じ場合、解約返戻金は一時所得として扱われます。計算はこうです。
受け取った保険金の総額 − 既に払い込んだ保険料または掛金の額 − 特別控除額50万円
そして、この金額をさらに2分の1にした金額が総合課税の対象になります。
ここから分かることが2つあります。
- 増えた分が50万円以下なら、この計算では課税対象が生じません。返戻率105%で払込総額300万円なら増加分は15万円なので、特別控除の範囲に収まります
- 元本割れしている解約なら、そもそも所得が出ません。「解約すると税金を取られるのでは」と心配して動けずにいるケースがありますが、受取額が払込総額を下回っている状態では、この計算上の所得はマイナスです
例外:源泉分離課税になるケース
一時払の商品には別扱いがあります。一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの、および保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものは源泉分離課税となり、源泉徴収だけで課税関係が終了します。この場合は確定申告の対象になりません。どの商品が該当するか(金融類似商品の具体的な要件)は国税庁のコード1520に整理されています。
出典: 国税庁タックスアンサー No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき(令和7年4月1日現在法令等)。ここに書いたのは制度の一般的な説明です。契約形態(契約者・被保険者・受取人の組み合わせ)によっては贈与税や所得税の別の扱いになることがあり、他の一時所得との合算や給与所得との関係でも結果は変わります。ご自身の申告が必要かどうかは、保険会社から届く支払調書の内容とあわせて、税務署または税理士にご確認ください。
解約後の資金は何に振り向けるか(NISA・個人向け国債・定期預金との比較)
「解約して得たお金をどこに置くか」をセットで決めておかないと、低利回りの保険を無利回りの預金に振り替えただけになりかねません。私が貯蓄目的で実際に使う/検討する選択肢を、解約返戻金の振り向け先として並べておきます。
| 項目 | 貯蓄型保険(継続) | NISA(インデックス) | 個人向け国債(変動10年) | 定期預金 |
|---|---|---|---|---|
| 期待利回り(目安) | 年0.5〜1.5% | 年4〜6%(過去実績) | 1.87%(2026年8月募集・第197回の表面利率) | 0.1〜0.4% |
| 元本保証 | 満期保有なら近い水準 | なし | 国が保証 | 1金融機関1,000万円まで保証 |
| 税制 | 生命保険料控除あり | 運用益・配当が非課税 | 利息は申告分離20.315% | 利息は申告分離20.315% |
| 流動性 | 低(途中解約で元本割れ) | 高(数営業日で現金化) | 中(1年経過後いつでも中途換金可・元本割れなし) | 高(中途解約は利息減額のみ) |
| インフレ耐性 | 弱(固定利回り) | 強(株式は実質ベースで追随) | 中(金利連動) | 弱 |
期待利回りは過去実績や参考値で、将来の利回りを保証するものではありません。個人向け国債の利率だけは確定値で、出典は財務省「現在募集中の個人向け国債」(募集期間 令和8年8月6日〜31日・2026年8月12日確認)です。変動10年は半年ごとに利率が見直されます。金利上昇で、貯蓄型保険の期待利回りを国債が上回る局面になっている点は、振り向け先を考えるうえで押さえておいてください。順序としては、まず生活費3〜6か月分の現金を確保し、次にNISA・iDeCoの非課税枠、その後で個人向け国債・定期預金、という流れが王道です。緊急予備資金が生活費3か月分未満なら、解約資金の一部はまず現金として確保してください。
解約しないほうがいいケース
解約を一律に推奨しているわけではありません。以下に当てはまる場合は、すぐに解約するのではなく慎重に判断してください。
返戻率100%まであと2〜3年の場合 たとえば加入から15年目で返戻率が95%、あと2年で100%を超える設計であれば、今解約すると損が確定します。このゾーンは「我慢して継続する方が合理的」と断言できます。設計書で残り期間と返戻率の推移を確認し、「あと何年払えば元本を回収できるか」を数字で見てから判断してください。
健康状態が悪化していて再加入が難しい場合 積立保険には死亡保障や医療保障が付いているものがあります。一度解約すると、健康上の理由から同等の保障に新たに入れなくなる可能性があります。保障の代替手段を確保してから解約するのが原則です。
「強制貯蓄」の仕組みとして機能している場合 「解約後に自力でNISAを続けられる自信がない」という方は、積立保険を解約すると貯蓄ゼロに戻るリスクがあります。「続けられる習慣がある人向けの選択肢」という前提を忘れないでください。解約後に資金を投資に回す意志と習慣がなければ、積立保険を続けるほうがトータルで有利になる場合もあります。
「払済み保険」という選択肢もある
積立保険には、解約以外に「払済み(はらいずみ)保険」という手続きがあります。
払済みとは、以降の保険料の支払いをストップしつつ、保険自体は継続する方法です。保障額は下がりますが、解約返戻金を原資に保険を小さくして存続させます。
メリット:
- 毎月の保険料負担がゼロになる
- 解約返戻金を保険内に残しておけるため、満期や将来の解約時に運用益を取り戻せる可能性がある
- 健康状態に関係なく手続きできる
デメリット:
- 死亡保障額が大きく下がる(数分の1になることが多い)
- 特約(医療・がん保障など)は基本的に消滅する
- 主契約の運用利回りは契約時の予定利率のまま(低い場合は低いまま)
「保険料がきつい」が解約理由なら、払済みにすることで毎月の支出を減らしながら、解約返戻金をそのまま保険内に残しておけます。返戻率が低い段階での完全解約を避けたいときは、この選択肢も確認してみてください。
向いているのは、返戻率がまだ低い段階で家計を一気に整えたい方、特約を切ってでも主契約だけ残したい方です。逆に、保障そのものが不要で資金を投資に回したいなら、払済みより完全解約のほうが合理的です。
まとめ
積立保険の解約をめぐる「損か得か」は、以下の3つで判断できます。
- 保険の目的を果たしているか — 保障として機能していないなら続ける理由が薄い
- 運用効率は納得できるか — 積立部分の利回りとNISA等の代替手段を数字で比べる
- 代替手段とセットで考えているか — 解約後に資金をどう使うかまで決めてから動く
迷ったら、この順番で判断してください。
- 保険証券で解約返戻金の現在額を確認する
- 返戻率が100%になるまでの年数をチェックする
- 15年以上あるなら → 見直しの優先度が高い
- 2〜3年以内なら → 継続を検討する
「解約すると損」という言葉に縛られて惰性で払い続けることは、一見安全に見えます。ただし、NISAやiDeCoとの差が20年で145万円、税制差まで含めれば160万円規模になることもある以上、「判断しない」こと自体がリスクです。
設計書・保険証券が手元にあれば、解約返戻金の推移表と現在の返戻率を確認するところから始めてみてください。
ここまで読んで「自分の保険が当てはまるか分からない」と感じた方は、まず保険証券の「解約返戻金推移表」を確認するところから始めてください。返戻率と残り年数が分かれば、このページのチェックリストで判断できます。
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