第一生命の「指数連動型年金ステップジャンプ」は、参照指数の動きに応じて年金原資が増える可能性があり、契約日から3年経過以後は払い込んだ保険料が保証される、と説明されている個人年金保険です。「NISAの値動きは怖いけれど、預金より増やしたい」という層に届きやすい建付けだといえます。裏を返すと3年経過前に解約した場合は払い込んだ保険料の累計額を下回ることがあり、「元本保証」といっても、いつから何が保証されるのかは分けて確認する必要があります。

本記事では「得か損か」を断定するのではなく、NISA・インデックス投信と並べたときにどこを見て選ぶかを、商品紹介ページだけでなくご契約のしおり・約款まで開いて整理します。契約前に押さえておきたい注意点は3つです。(1)参照指数はボラティリティを年率2%に抑える設計で、株式インデックスとは値動きの前提が違う、(2)指数が上がっても上昇率がそのまま乗るのではなく「連動率」を通る、(3)流動性が低く、費用の一部は水準が示されない。いずれも「入るな」という話ではなく、下値保証という安心の対価です。評判・口コミや運用成果が調べても出てこない理由も、後述の項目で個別に整理します。

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。保険業界に10年身を置いたあと IT企業へ転職し、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。なお、当記事は商品の購入・契約を勧誘するものではなく、投資判断・契約判断は最終的にご自身の責任で行ってください。記事末尾の証券口座リンクにはアフィリエイトリンクを含みます。

結論:見るべきは「参照指数の中身」「保証の範囲」「コストの見えにくさ」の3点

指数連動型の個人年金保険を検討するとき、私が着目するのは次の3点です。

  1. 参照指数の中身:連動対象は「バーテックス マルチアセット指数(日本円)」で、指数名も月次の指数値も構成資産も公開されています。ただし値動きの大きさが年率2%になるよう調整される設計で、株式インデックスとは前提が違います
  2. 保証の範囲:上がった年は上昇率がそのまま乗るのではなく連動率を掛けた分が積み上がり、下がった年は上昇率0%扱いで減りません。払い込んだ保険料が保証されるのは契約日から3年経過以後です
  3. コストの見えにくさ:戦略控除率(指数値に対し1.0%)と指数手数料(想定元本の0.39%)は書面に明示されていますが、複製コストと解約時に差し引かれる額は水準が示されていません。信託報酬のように年率ひとつで並べられる形にはなっていません

そのうえで私自身は、税優遇と低コストが明確な NISA とインデックス投信、それに勤め先の企業型DCを資産形成の中心に置いています。理由は記事の後半で書きます。

ステップジャンプ vs NISA 一目比較表

指数連動型個人年金(「ステップジャンプ」はその一例)と NISA インデックス投信を、主な観点で比べると次のようになります。記号は ◯(優れる・有利)/△(条件つき)/✕(弱い・不利)の目安で、優劣の断定ではありません。

観点指数連動型個人年金(例:ステップジャンプ)NISAインデックス投信
元本保証◯(契約日から3年経過以後は払込保険料を保証)✕(元本割れリスクあり)
期待リターン△(上昇率に連動率を掛けた分が積み上がる)◯(指数に概ね連動・値動きは大きい)
流動性(換金しやすさ)✕(長期保有前提・途中解約は元本割れの可能性)◯(いつでも売却可)
コストの透明性△(一部は明示・複製コスト等は水準非開示)◯(信託報酬が年率で明示・低コスト)
税制メリット△(個人年金保険料控除など条件つき)◯(運用益が非課税)

この表だけ見ると NISA 寄りに見えますが、元本割れを絶対に避けたい人にとっては◯と✕が入れ替わります。どちらが正解という話ではなく、何を最優先にするかで評価が変わる、という点が本質です。

ステップジャンプは「やめたほうがいい」「危険」な商品なのか

検索候補に「やめたほうがいい」「危険」「やばい」といった強い言葉が並びます。約款とご契約のしおりを読んだ限り、危険という一言で片づけるのは適切ではないというのが私の見方です。参照指数が下落した年の上昇率を0%として扱う設計は、リスクを抑える方向に働くからです。

にもかかわらず強い言葉が並ぶのは、次の3つが重なっているためだと考えています。

  1. 「元本保証」の射程が誤解されやすい:保証されるのは契約日から3年経過以後の払込保険料です。3年経過前に解約すると払込累計額を下回ることがあり、この線引きを知らないまま契約すると「話が違う」という受け止めになります
  2. 「指数連動」から株式指数並みの増え方を想像してしまう:参照指数は値動きの大きさを年率2%に抑えるよう調整される設計で、株式100%のインデックスとは前提が違います
  3. 増え方の計算が一段複雑:指数の上昇率に連動率を掛けた分が積み上がる仕組みで、その連動率は毎年変動します。仕組みを知らないまま「指数連動だから増える」と受け取ると、想定とのギャップが生まれます

つまり危険というより、期待値の置き方を間違えるとがっかりしやすい商品だと整理できます。それぞれの中身はデメリット(注意点)増え方の仕組みで詳しく書きます。

そのうえで、次に当てはまる人は相性がよくないと考えます。

  • 途中で使う可能性があるお金を入れようとしている:流動性が低く、契約から所定の期間内の解約では所定の方法で計算した額が差し引かれます
  • NISAの非課税枠がまだ余っている:コストの低さと運用益非課税を先に使い切るほうが、目的が同じ「老後資金づくり」なら整理しやすい場面が多いです
  • 「指数連動」に株式インデックス並みのリターンを期待している:この期待のまま契約すると、実際の増え方との差にがっかりする可能性が高いです

逆に、機会損失より元本割れの不安のほうが大きく、値動きを自分で判断したくない人にとっては、選択肢として成立します。「やめたほうがいいか」は商品側ではなく、自分がどちらの不安をより避けたいかで決まる問いだと考えます。

「ステップジャンプ」の公式情報を整理する

第一生命「指数連動型年金ステップジャンプ」について、商品紹介ページとご契約のしおり・約款に書かれている内容を事実ベースで整理します。

項目公式記載の内容
商品種類指数連動型個人年金保険(無配当)2024
連動対象バーテックス マルチアセット指数(日本円)
年金原資の構成基本年金原資(払い込んだ保険料の累計額)+指数連動年金原資の2階建て
元本の扱い契約日から3年経過以後は、払い込んだ保険料が保証される
3年経過前の解約払い込んだ保険料の累計額を下回ることがある
年金総額の保証年金の総額として払込保険料の累計額を保証
判定日年単位の契約応当日の前月1日(第1回は契約日から1年後の契約応当日の前月1日)
契約年齢0歳〜74歳
年金支払開始年齢10歳〜90歳
払込期間5年〜50年
払込方法月払・年一括払
受取方法5年・10年・15年の確定年金(一括受取も可)
税制個人年金保険料税制適格特約を付加すれば個人年金保険料控除の対象
告知健康状態の告知不要

出典:第一生命「指数連動型年金ステップジャンプ」商品紹介ページ(https://www.dai-ichi-life.co.jp/promotion/stepjump/01/index.html /登録番号 C25P0403・2026年3月6日版)および「ご契約のしおり-約款(指数連動型個人年金保険(無配当)2024)」2024年1月版(https://dl-shiori.jp/shiori/no07/2401/07.pdf )。いずれも2026年8月12日に筆者確認。

押さえておきたいのは、払込保険料の累計額は保証される一方、それを超える増加分は参照指数の動きと連動率次第で確定しないという構造です。「下値は守りつつ、上振れを狙う」タイプの商品だと理解できます。なお第一生命の発売時リリースによれば、指数連動型の円建て平準払いの個人年金保険は生命保険業界初とのことです(2023年11月時点・第一生命調べ)。比較できる同型商品が少ないのは、このためでもあります。

第一生命ステップジャンプのメリット

公式情報をもとに整理できるメリットです。いずれも「こういう人には合いやすい」という相性の話です。

  • 一定期間経過後は払込保険料が保証される:契約日から3年経過以後は払い込んだ保険料が下回らない設計とされており、「元本割れだけは避けたい」という人の心理的ハードルは下がります
  • 指数が下がった年も指数連動年金原資が減らない:上昇率が0%未満になった場合は0%として扱われるため、下落した年は積み上がらないだけで目減りはしません
  • 健康状態の告知が不要:持病などで医療保険・死亡保険に入りにくい人でも、貯蓄性の商品として検討の余地があります
  • 自分で売買タイミングを判断しなくてよい:値動きに一喜一憂したくない人には精神的な負担が小さい設計です
  • 個人年金保険料控除の対象になり得る:個人年金保険料税制適格特約を付加し所定の条件を満たせば、年末調整・確定申告で保険料控除を受けられます

第一生命ステップジャンプのデメリット(注意点)

一方で、契約前に押さえておきたい注意点です。「入るな」という話ではなく、比較検討の前に確認しておきたい弱みという位置づけです。

  • 上昇率がそのまま乗るわけではない:指数が上がった年に反映されるのは、上昇率に連動率を掛けた分です。連動率は毎年変動するため、将来の分は契約時点では分かりません
  • 参照指数が値動きを年率2%に抑える設計:株式インデックスのような増え方を前提にすると、期待が外れます
  • 費用の一部は水準が示されない:戦略控除率(指数値に対し1.0%)と指数手数料(想定元本の0.39%)は書面にありますが、複製コストは水準を表示できないとされています
  • 流動性が低い:長期保有が前提で、契約から所定の期間内に解約した場合は所定の方法で計算した額が差し引かれます。その期間と水準はしおりに記載がありません
  • 税制メリットがNISAほど大きくない:NISAは運用益そのものが非課税ですが、個人年金保険の税優遇は保険料控除が中心で、条件や上限があります

これらは商品の欠陥ではなく、下値保証という安心を得る代わりに生じる構造的な制約です。安心の対価として何を差し出しているのかを理解したうえで選ぶことが大切だと考えます。

第一生命ステップジャンプの運用実績・運用成果は公開されている?

ここは切り分けが必要です。公開されているものと、公開されていないものが混ざっています。

種類公開状況
参照指数の月次の値公開(2024年11月1日を100とした推移)
参照指数の月次レポート公開
契約日ごとに適用される運用利率公開(月次で更新)
契約者が実際に受け取った年金原資の実績公開されていない
契約条件別の実質利回り公開されていない

つまり「参照指数がどう動いたか」は、契約者でなくても誰でも追えます。追えないのは、その指数の動きが、ある契約条件のもとで最終的にいくらの年金になったのかという部分です。連動率が毎年変動し、契約年齢・払込期間・払込方法によっても結果が変わるため、契約者ごとに答えが違う商品性でもあります。

インデックス投信であれば、基準価額の推移という1本の数字で過去の結果を確認できます。指数連動型の年金保険は、指数の推移までは確認できても、自分の条件での結果は設計書で個別に見るしかありません。ここが商品を評価するうえでの差になります。

第一生命ステップジャンプのシミュレーションで示された利率の目安

商品紹介ページのシミュレーション欄には、初年度の適用利率として年0.86%という数字が示されています。これを読むときの注意点が2つあります。

1つめは時点です。 この0.86%は「契約日が2025年10月の場合」に初年度適用される利率として掲載されたものです(登録番号 C25P0403・2026年3月6日版)。運用利率は月ごとに更新されており、第一生命が公開している推移は次のようになっています。

契約日適用される運用利率
2026年4月1日年1.03%
2026年5月1日年1.00%
2026年6月1日年1.01%
2026年7月1日年1.06%
2026年8月1日年1.13%
2026年9月1日年1.11%

出典:第一生命「運用利率」(https://www.dai-ichi-life.co.jp/contractor/internet/step_jump/unyoriritsu.html /2026年8月12日筆者確認)。契約日から1年間適用され、その後は年単位の契約応当日ごとに更改されます。

2つめは、この利率が契約者の利回りではないということです。 ここがいちばん誤解されやすい点だと考えています。約款は運用利率を「年金支払開始日前において、コールオプションの購入の原資となる毎年の利息を計算するため、払い込まれた保険料を運用する当社所定の利率」と定義しています。つまり運用利率は、オプションを買うための原資を計算するための率であって、この率で年金原資が増えていくわけではありません。運用利率は次章で説明する連動率の分子として効いてきます。

年金受取開始日以後の予定利率(発売時リリースの参考試算では年0.40%)も同様に、保険会社が年金額を計算するときに用いる率で、契約者が受け取る実質的な利回りとそのまま一致するものではありません。

第一生命ステップジャンプの評判・口コミが見つかりにくい理由

「ステップジャンプ 評判」「口コミ」で調べても、契約者本人の運用結果にもとづく情報にはたどり着きにくいのが実情です。商品が悪いからではなく、次の3つが重なっているためです。

  1. 参照指数がこの商品のために組成された指数である:MSCI ACWI のように多くの市場参加者が共通して使う指数なら、契約者でなくても過去チャートを引いて語れます。バーテックス マルチアセット指数は月次の値こそ公開されていますが、第三者が作った長期のチャートや、他社商品との横並び比較が存在しません
  2. 受け取りまでの期間が長く、体験談が蓄積しにくい:払込期間は契約年齢に応じて5年〜50年です。年金を受け取り終えた人の「結果としてどうだったか」が世に出るまでに相当な時間がかかります
  3. 契約条件によって結果が変わる:連動率は毎年変動し、契約年齢・払込期間・払込方法でも結果が変わります。他人の口コミが自分の条件にそのまま当てはまることは多くありません

評判を探すより、契約時に適用される連動率と費用を書面で確認するほうが確実です。

同じ「下値保証型」で迷っているなら、一時払い終身保険の予定利率引き上げは“買い時”か朝日生命「あさひの一時払年金」はおすすめ?積立保険のIRR比較のように、同種の商品を数字で横に並べるほうが違いが見えます。

第一生命の評判・苦情|生命保険協会の公表データで見る

商品単位の口コミは出てきませんが、会社単位の苦情件数なら生命保険協会が四半期ごとに会社別で公表しています。ただし先に限界を書いておくと、この公表データは会社単位で、商品別の内訳がありません。「ステップジャンプについて何件の申出があったか」は、ここからは分かりません。

項目第一生命業界平均(27社)
協会に寄せられた苦情件数308件
個人保険保有契約件数25,330,645件
保有契約100万件あたり12.2件16.3件
(参考)各社が自社で受け付けた苦情件数27,434件

協会に寄せられた308件の内訳:新契約関係 23.7% 収納関係 5.5% 保全関係 27.9% 保険金関係 35.4% その他 7.5% 
2025年度第1~第4四半期。出典:生命保険協会「生命保険各社の苦情受付情報」。 業界平均は同じ公表資料のうち個人保険保有契約件数が100万件以上の27社について、苦情件数の合計を保有契約件数の合計で割った値です(単純平均ではありません)。 協会に寄せられた件数は窓口が一つなので会社間で比べられますが、各社が自社で受け付けた件数は苦情の定義・計上範囲が会社ごとに異なるため、会社間の比較には使えません。件数の多寡は商品や会社の優劣を示すものではありません。

読むときの注意は3つです。会社間で比べられるのは協会に寄せられた件数だけであること(各社が自社で受け付けた件数は、どこまでを苦情に数えるかが会社ごとに違います)。分母は保有契約件数で見ること(同じ資料の「お客さま数」は名寄せの有無や団体保険を含むかが会社ごとに違います)。そして件数の多寡は商品や会社の優劣を示さないことです。

参照指数「バーテックス マルチアセット指数」の中身

「第一生命所定の参照指数」という商品ページの表現だけを見ると中身が分からない印象を受けますが、ご契約のしおり・約款と参照指数の専用ページまで開くと、指数名から算出のルールまで書かれています。

項目ご契約のしおり・約款の記載
指数名バーテックス マルチアセット指数(日本円)
構成資産(株式)国内・先進国・新興国(各株式市場の先物に対するロール戦略指数)
構成資産(債券)国内・先進国(先物ロール戦略指数およびETF)、新興国(ETF)
構成資産(不動産)国内REIT・先進国REIT(ETF)
配分の考え方リスクが概ね均等になる基本配分戦略(月次で調整)に、戦略的配分戦略・機動的配分戦略を組み合わせる
変動の制御過去一定期間のボラティリティを計測し、年率2%となるようポジション量を調整
指数値の計算短期金利を控除したエクセスリターンベース
指数スポンサーJ.P.MorganSecurities plc
指数助言会社バーテックス・インベストメント・ソリューションズ(第一生命グループ)

出典:第一生命「ご契約のしおり-約款(指数連動型個人年金保険(無配当)2024)」2024年1月版(https://dl-shiori.jp/shiori/no07/2401/07.pdf /2026年8月12日筆者確認)

ポイントは、情報が隠されているという話ではないということです。実務上効いてくるのは、MSCI ACWI のように多くの市場参加者が共通して使う指数ではなく、この商品のために組成された指数であるという点です。

  • 第三者が作った長期のチャートや、他社商品との横並び比較が存在しません
  • 一般に公開されている指数値は2024年11月からで、それ以前の期間の値は出ていません
  • 一般的な株価指数と単純に並べて「どちらが上か」を語ることができません

隠されているのではなく、比較の相手がいないということです。そのうえで、指数連動型を検討するときに書面で確認したいのは次の3点だと考えます。

  1. 契約時に適用される連動率(毎年変動します)
  2. 参照指数の計算で控除される費用と、コールオプションの運用にかかる費用
  3. 契約から所定の期間内に解約したときに差し引かれる額

指数連動型の個人年金保険を見るときのチェックポイント

商品名にかかわらず、指数連動型の貯蓄性保険を見るときに確認する観点を整理します。

1. 「指数連動」と「インデックス投資」は別物

インデックス投信は指数にほぼそのまま連動しますが、保険の「指数連動」は計算式を通してから年金原資に反映されます。参加率・連動率・上限といった名前で、商品ごとに違う計算ルールが置かれています(ステップジャンプの場合は連動率です)。「指数に連動する=指数と同じだけ増える」ではない点を、商品ごとに確認してください。

2. コストは「示される部分」と「示されない部分」がある

下値を守るには、安全資産の比率を高めたり、オプションを買う費用を負担したりする必要があります。ステップジャンプの場合、戦略控除率(指数値に対し1.0%)と指数手数料(想定元本の0.39%)は書面に書かれている一方、複製コストと解約時に差し引かれる額は水準が示されていません。費用の一部が公表されていても、合計としていくらかを契約者の側から検証できる形にはなっていない、というのが実務的な結論です。

比較の相手側である投信のコストは、年々下がってもいます。追加型株式投信の信託報酬(単純平均・税抜)は、インデックス型が2017年の年0.46%から2026年6月末には年0.33%まで低下しました(出典:資産運用業協会「投資信託の主要統計等ファクトブック」2026年6月末版)。オルカンのような主力商品は、さらに低い年0.1%前後です。コストが年率ひとつで公表されているからこそ、業界全体の水準も、下がっているという事実も後から検証できます

3. 流動性と税優遇の違い

個人年金保険は途中解約が元本割れになり得て、税優遇は保険料控除が中心です。NISAは運用益が非課税でいつでも売却できます。「いつでも引き出せる自由」と「下値保証」はトレードオフだと考えると整理しやすいです。

4. すでに入っている契約なら、まず契約年を見る

ここまでは新規に検討する場合の話です。すでに個人年金保険を持っている場合や、親の契約について相談を受けた場合は、判断の順序が変わります。1990年代前半までの契約には今では手に入らない高い予定利率がついていることがあり、同じ「個人年金保険」でも中身がまったく違うためです。契約年代からの見分け方は予定利率の推移で見る「お宝保険」にまとめています。

比較:指数連動型個人年金 vs NISA・投信・国債

冒頭の比較表を、国債・預金まで含めて並べます。個人向け国債は募集中の回号の表面利率、それ以外は将来を保証するものではありません。

指数連動型個人年金(例:ステップジャンプ)
元本性 契約日から3年経過以後は払込保険料を保証・年金総額も払込累計を保証
想定リターン 参照指数の上昇率に連動率を掛けた分が積み上がる(連動率は毎年変動)
流動性 長期保有前提・所定の期間内の解約は所定の額が差し引かれる
NISAインデックス投信
元本性 元本保証なし(元本割れリスクあり)
想定リターン 市場環境により大きく変動・元本保証なし
流動性 いつでも売却可(短期下落リスクあり)
個人向け国債(変動10年)
元本性 国による元本保証
想定リターン 第197回(2026年8月募集)年1.87%・税引前
流動性 1年経過後から中途換金可
定期預金
元本性 預金保険で1000万円まで保護
想定リターン 銀行・期間により異なる
流動性 中途解約自由(利息は減る)

個人向け国債の利率の出典は財務省「現在募集中の個人向け国債」(募集期間 令和8年8月6日〜31日。固定5年 第185回は年2.06%、固定3年 第195回は年1.71%)です。

並べて見えるのは、指数連動型個人年金は受取額が事前に確定しない一方、個人向け国債は募集時点の利率が確定している、という性格の違いです。ただし個人向け国債には保険料控除のような税優遇がなく、変動10年は市場金利によって利率が変わります。どちらが結果的に有利かは、金利水準と参照指数の動き次第で、事後的にしか分かりません。

ステップジャンプは指数が上がるといくら増えるのか|連動率とボラティリティ年率2%

ここがこの商品でいちばん誤解されやすいところだと考えています。「指数連動」と聞くとオルカンやS&P500のような株式インデックスを思い浮かべますが、増え方の決まり方が根本から違います。ご契約のしおり・約款に書かれている順にたどります。

1. 参照指数はボラティリティを年率2%に抑える設計

バーテックス マルチアセット指数は、資産バスケットの過去一定期間のボラティリティ(値動きの大きさ)を計測し、年率2%となるように全体のポジション量を調整します。2%を上回れば減らし、2%以下であれば事前に定めた最大レバレッジの範囲でポジションを引き上げます。株式100%のインデックスとは、そもそも許容している値動きの大きさの前提が違います。

しおりには、これは年率2%の収益を目標としている意味ではない、という趣旨の注記もあります。2%はリターンの目標ではなく、変動の大きさの目標です。

2. 指数の値は短期金利と費用を引いたあとの数字

指数値は短期金利を控除したエクセスリターンベースで計算されます。そのうえで指数の計算にあたって戦略控除率(指数値に対し1.0%)と複製コストが控除されます。公開されている指数の推移は、これらを引いたあとの数字です。

3. 上昇率はそのまま乗らず、連動率を通る

年金原資は、基本年金原資(払い込んだ保険料の累計額)と指数連動年金原資の2階建てです。指数連動年金原資は、判定日の参照指数の値を直前の判定日と比べた上昇率に、連動率を掛けて積み上がります。判定日は年単位の契約応当日の前月1日で、年に1回です。

連動率は約款で「運用利率 ÷ 想定元本1円あたりのコールオプション価格」と定義されています。運用利率もコールオプション価格も市場環境に応じて変動するため、連動率は毎年変わります。

数字の桁感をつかむために、第一生命が発売時(2023年12月)のニュースリリースで参考試算の前提として示した値を使います。以下は発売時点の前提値であり、現在の連動率でも、これから契約する人に適用される値でもありません。

項目発売時リリースが置いた前提値
運用利率年0.40%
連動率44.94%
参照指数の想定4回上昇(上昇率 各3%)・1回下落を繰り返す

この前提で計算すると、参照指数が3%上がった年に指数連動年金原資へ反映されるのは 3% × 44.94% = 約1.35%相当という桁になります。指数が3%上がったら年金原資も3%増える、という商品ではありません。

4. 下がった年は「0%」扱いで減らない

一方、上昇率が0%未満になった場合は0%として扱われます。参照指数が下がった年は指数連動年金原資が積み上がらないだけで、減りはしません。これが下値保証の実体です。上振れを削る代わりに下振れを消す、という交換になっています。

なお第1回判定日の指数連動年金原資は「50% × 基本年金原資 × 上昇率 × 連動率」で計算され、初回は基本年金原資の半分が対象です。第2回以後は、前々回と前回の判定日の基本年金原資を平均した金額が対象になります。

5. 運用利率が上がれば連動率は上がる方向に働くが、逆算はできない

前章のとおり、運用利率はコールオプションの購入の原資となる利息を計算するための率です。連動率の分子がこの運用利率なので、運用利率が上がれば連動率は上がる方向に働きます。2026年9月1日契約に適用される運用利率は年1.11%です。2026年4月1日契約の年1.03%から上がってきています。

ただし分母のコールオプション価格も同時に動きます。したがって、運用利率が上がった倍率だけ連動率も上がる、という逆算は成り立ちません。連動率を自分で計算することはできず、契約時に提示される値を設計書で確認するしかありません。

6. 公開されている参照指数の実績

第一生命は参照指数の月次の値を公開しています。2024年11月1日を100とした推移です。

時点指数値
2024年11月1日(基準)100
2025年1月1日99.6468
2025年6月1日97.7371(公開期間中の最低)
2025年7月1日98.2694
2026年1月1日99.4625
2026年3月1日100.4616(公開期間中の最高)
2026年4月1日99.0361
2026年6月1日99.5056
2026年7月1日99.4755

出典:第一生命「参照指数」(https://www.dai-ichi-life.co.jp/contractor/internet/step_jump/sanshoshisu.html /登録番号 C23P0270・2026年8月12日筆者確認)

事実として言えるのは、公開されている20か月の指数値が100前後で推移しているということだけです。 そのうえで解釈を書きます。判定は年に1回で、直前の判定日との比較で上昇率を測る仕組みですから、この20か月のような推移が続く局面では、指数連動年金原資は積み上がりにくいことになります。

ただしこれは公開が始まってからの20か月の話で、この先どう動くかは分かりません。「増えない商品だ」と決めつけられるだけの期間ではない、というのが正直なところです。判断材料としては、指数の推移そのものより、契約時に提示される連動率のほうが効いてきます

私自身が「NISA+企業型DC」を中心にしている理由

ここからは私個人の選択です。

私は2015年に旧NISAで投資を始めて10年超になります。当初は個別株中心で、青山商事で約31万円の損失を出すなど失敗も重ねてきました(コナカ株は2015年に738円で買って今も塩漬け中です)。その経験を経て、いまは資産形成の中心をインデックス投信のNISAと、勤め先の企業型DCに置いています。理由は3つです。

  • コストと中身が明確:オルカンやS&P500の信託報酬は年率0.1%前後で、何にどれだけ投資しているかが公開されている
  • 運用益が非課税:企業型DCも掛金が所得控除・運用益非課税という税メリットが大きい
  • いつでも売却できる流動性:ライフイベントで方針を変えたくなったとき、機動的に動かせる

保険業界に10年身を置いた立場から付け加えると、貯蓄性の保険は仕組みが複雑なほど、契約時の理解と書面の内容がずれたまま進みやすいと感じてきました。指数連動型はその類型に入ります。だからこそ私は、自分で中身を検証できる商品を選ぶようにしています。

ただしこれは「下値が一切保証されない」という弱点と表裏一体で、私もコロナショックや個別株の失敗で含み損を経験しました。値動きに耐えられる前提があって初めて成り立つ選択です。「保険か投資か」は優劣ではなく目的の違いだと感じています。

もしNISAを検討するなら:証券口座の選び方

「下値保証より、コストの低さと運用益非課税を優先したい」と考えるなら、出発点は低コストのインデックスファンドを扱う証券口座です。開設手順は新NISAの始め方|30代初心者が最初にやること5ステップに、楽天証券と松井証券で迷う場合の選び方は楽天証券と松井証券の比較にまとめています。以下は私自身が使っている口座です(アフィリエイトリンクを含みます)。

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まとめ:商品名より「中身の確認」を

「第一生命ステップジャンプは得か損か」への私なりの答えは、契約時に適用される連動率と、その後の参照指数の動き次第で、事前には決められない、です。

書面で確認したいのは4点です。契約時に適用される連動率、参照指数の値の推移(第一生命のサイトで公開されています)、費用のうち水準が示されているものと示されていないもの、そして契約から所定の期間内に解約したときに差し引かれる額です。

下値保証を優先するか、コスト・流動性・期待リターンを優先するかは、ご自身の価値観とリスク許容度で決めるものです。保険か投資かに唯一の正解はありません。本記事は商品の購入・契約を推奨するものではなく、投資・契約の判断はご自身の責任でお願いします。

よくある質問(ステップジャンプのデメリット・元本保証・NISAとの比較)

Q. 第一生命ステップジャンプはやめたほうがいいですか?

商品側で一律に決まる話ではなく、目的との相性で決まると考えています。途中で使う可能性があるお金を入れようとしている人、NISAの非課税枠がまだ余っている人、指数連動に株式インデックス並みのリターンを期待している人には相性がよくありません。逆に、機会損失より元本割れの不安のほうが大きく、値動きを自分で判断したくない人には選択肢として成立します。契約判断はご自身の責任でお願いします。

Q. ステップジャンプは危険な商品ですか?

約款とご契約のしおりを読んだ限り、危険という一言で片づけるのは適切ではないと考えています。参照指数が下落した年の上昇率は0%として扱われ、指数連動年金原資が減らない設計だからです。強い言葉が並ぶ背景には、元本保証の射程が契約日から3年経過以後である点が誤解されやすいこと、参照指数が値動きの大きさを年率2%に抑える設計であること、指数の上昇率に連動率を掛けた分が反映される仕組みが理解されにくいことがあります。

Q. 第一生命ステップジャンプの主なデメリットは?

大きく3つあります。指数が上がっても上昇率がそのまま乗るのではなく連動率(運用利率÷コールオプション価格)を掛けた分が積み上がること、参照指数がボラティリティを年率2%に抑える設計で株式インデックスとは値動きの前提が違うこと、流動性が低く費用の一部(複製コストや解約時に差し引かれる額)は水準が示されないことです。いずれも下値保証という安心の対価であり、商品の欠陥ではありません。

Q. ステップジャンプは元本保証ですか?

契約日から3年経過以後は払い込んだ保険料が保証され、年金の総額としても払込保険料の累計額を保証するとされています。一方で、3年経過前に解約すると払い込んだ保険料の累計額を下回ることがあり、契約から所定の期間内に解約した場合は所定の方法で計算した額が差し引かれます。元本保証といっても、いつ・何が保証されるのかを契約前に区別して確認することが大切です。

Q. ステップジャンプの参照指数は何ですか?

「バーテックス マルチアセット指数(日本円)」です。国内外の株式・債券・不動産に分散し、リスクが概ね均等になる配分を基本としたうえで、過去一定期間のボラティリティを計測して年率2%となるようポジション量を調整します。指数スポンサーはJ.P.MorganSecurities plc、指数助言会社は第一生命グループのバーテックス・インベストメント・ソリューションズです。第一生命のサイトで2024年11月1日を100とした月次の指数値が公開されています。

Q. 第一生命ステップジャンプの評判・口コミはどうですか?

契約者本人の運用結果にもとづく評判・口コミは見つけにくいのが実情です。参照指数がこの商品のために組成された指数で一般的な株価指数と単純に並べて比べられないこと、年金を受け取り終えるまでが長く体験談が蓄積しにくいこと、連動率が毎年変動し契約条件によって結果が変わることが背景にあります。評判を探すより、契約時に適用される連動率と費用を書面で確認するほうが確実です。

Q. ステップジャンプの運用成果・運用実績は公開されていますか?

参照指数の月次の値と月次レポート、契約日ごとの運用利率は第一生命のサイトで公開されています。公開されていないのは、契約者が実際に受け取った年金原資の実績と、契約条件別の実質利回りです。指数がどう動いたかは誰でも追えますが、自分の条件でいくらになるかは設計書で個別に確認することになります。

Q. ステップジャンプとNISA、どちらがよいですか?

優劣ではなく目的の違いだと考えています。元本割れを絶対に避けたい・売買タイミングを自分で判断したくない人には下値保証型が向き、コストの低さと運用益非課税を優先し値動きを受け入れられる人にはNISA・インデックス投信が選択肢になります。私自身はNISAと企業型DCを資産形成の中心にしていますが、これは私の価値観に基づく選択で、契約・投資判断はご自身の責任でお願いします。

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