2024年1月から新NISAが始まりました。同時に、旧NISAで持っていた銘柄を「ロールオーバーするのか」「特定口座に移管するのか」「売って新NISAで買い直すのか」を選ぶ判断が、誰にでも降りてきました。
私の場合、2015年から旧NISAで個別株を中心に積んできた残高が複数あり、移行の判断は1銘柄ずつ違う答えになりました。きれいに「全部こうしました」とはいきませんでした。
この記事では、その判断ロジックと、1年経った今の検証をすべて公開します。とくに、9年5ヶ月塩漬けにしていたコナカ株を、2024年11月26日に「旧NISAで247円売却→同日特定口座で248円買戻し」というクロス取引で処理した一次体験は、ネット上にもほとんど書かれていない実例なので詳しく書きます。
平成時代を生きた30代、川崎市在住、夫婦二人暮らしのHIKOです。投資歴11年(2015年NISAスタート)、保険業界10年からIT企業に転職、FP2級保有。最初の個別株は738円で買ったコナカ(7494)で、いまも特定口座に100株保有継続中です。最大の成功はJTの+376,930円、最大の失敗は青山商事の-310,960円。NISAという制度をフル活用してきたつもりが、移行のタイミングで「制度の限界」と「自分の判断ミス」が両方あぶり出された、という記事になります。
この記事はこんな人に向けて書いています。
- 旧NISAの非課税期間が終わる銘柄を、移管か売却か迷っている
- 新NISA成長投資枠を、旧NISA銘柄の買い直しに使うかどうか決めかねている
- 移管後の取得単価がどう扱われるかが正直よく分かっていない
- 旧NISAで含み損になった銘柄を「損切りして損益通算したい」と思っている
- 1年経過後、実際の手取り配当がどう変化したかの実例を知りたい
結論:私は「3パターン使い分け+1銘柄はクロス取引」で旧NISAを解体しました
最初に結論から書きます。私は旧NISA保有銘柄を以下の4処理に振り分けました。
| 処理 | 主な対象 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 自動移管(待つ) | 軽微な銘柄 | 判断する手間に対してリターンが見合わない銘柄 |
| クロス取引で取得単価リセット | コナカ(7494) | 含み損のまま長期保有予定だが、移管後の損益管理を簡単にしたい銘柄 |
| 売却(益出し) | JT(2914) | 含み益が大きく非課税のうちに利益確定したい銘柄 |
| 売却(損切り)→新NISAで買い直さない | 青山商事・中北製作所 | 銘柄選定の失敗を認めて資金を別へ振り向けるもの |
ロールオーバー(旧NISA→新NISA)はできません。 これが2024年改正の重要ポイントで、誤解している人がまだ多いです。詳しくは次のセクションで書きます。
大前提:旧NISA→新NISAへの「ロールオーバー」は廃止されました
まず制度の話を整理しておきます。これを誤解したまま判断すると、後悔します。
2023年までの旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)には、5年または20年の非課税期間がありました。一般NISAの場合、非課税期間が終わる年に「翌年の新しい非課税枠にロールオーバー(移管)する」ことで、非課税期間を延長できる仕組みがありました。
ところが、2024年からの新NISAスタートに伴い、この旧NISA→新NISAへのロールオーバーは制度として廃止されました。旧NISAの非課税期間が終わった銘柄は、自動的に特定口座(または一般口座)に払い出されることになります。
つまり、旧NISA銘柄に残された選択肢は、実質的に次の3つです。
- 非課税期間終了を待ち、特定口座に自動移管される(何もしない)
- 非課税期間内に売却する(益が出ていれば非課税で利益確定)
- 非課税期間内に売却し、新NISA成長投資枠で買い直す
「ロールオーバーで非課税延長」はもう選べません。私の場合、2015年に買ったコナカは2019年末で5年の非課税期間が終わったので、当時はロールオーバーで非課税を延長していました。延長後の非課税期間は2024年末で終了するため、2024年中に何らかの判断を下す必要がありました。
コナカ(7494):旧NISA247円売却→同日特定248円買戻しというクロス取引
ここが今回の記事の核です。ネット上の旧NISA移行記事はほとんどが「自動移管された/売却した/買い直した」の3択しか書いていませんが、私はもう一つの選択肢を取りました。
何をしたか
2024年11月26日、私は楽天証券の口座で次の取引を1日のうちに実行しました。
| 取引 | 口座 | 価格 | 株数 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 売却 | 旧NISA | 247円 | 100株 | 24,700円 |
| 買戻し | 特定口座 | 248円 | 100株 | 24,800円 |
取得時738円×100株 = 73,800円なので、旧NISAで247円売却した時点で確定したのは -49,100円の譲渡損です。一方、買戻しによって特定口座に取得単価248円のコナカ100株が新規建玉として立ちました。
スプレッドは1円×100株 = 100円。手数料は楽天証券の現物売買手数料コース(私は一日定額コース)を使ったので0円。実質コスト100円で「旧NISA口座を清算しつつ、特定口座に取得単価をリセットした状態でコナカを引き継ぐ」ことができました。
なぜ自動移管ではなくクロス取引にしたか
自動移管を待つ場合、2024年末の最終取引日終値(仮に250円とする)が特定口座の取得単価として記録されます。これでも「移管後の取得単価リセット」自体は起きるので、結果はクロス取引と似ています。
それでも私がクロス取引を選んだ理由は3つあります。
- タイミングを自分で選べること。年末の最終週は流動性が薄く、終値が想定外に動くリスクがある。11月の落ち着いた相場で処理したかった
- 取引履歴が明確に残ること。「旧NISA247円売却・特定248円買戻し」という記録が残ることで、将来このコナカを売却するときに「実際の本当の買値は738円だったが、税務上の取得単価は248円」という説明が自分に対しても明確になる
- 配当金の口座区分を早めに切り替えたかったこと。2024年内に特定口座の建玉にしておけば、2025年以降の配当金は特定口座の源泉徴収扱いに切り替わる
クロス取引のメリット・デメリット整理
| 項目 | 自動移管(待つ) | クロス取引(自分で実行) |
|---|---|---|
| 手数料 | 0円 | スプレッド+売買手数料(私の場合100円) |
| タイミング | 12月末最終日に自動 | 自分で選んだ任意の日 |
| 取得単価 | その日の終値 | 売却・買戻し当日の約定値 |
| 取引履歴 | 「払出」という形で残る | 売却・買戻しの2レコードが明確に残る |
| 損益通算 | できない(旧NISAの損は通算不可) | できない(同上) |
ポイントは、いずれにしてもNISAの売却損は損益通算できないという点。これが次のセクションの落とし穴の話に直結します。
NISA損益通算不可という落とし穴
NISAの一番見落とされやすい仕様がこれです。
何が起きるか
通常、特定口座で株式を売却して譲渡損が出た場合、その損失は同年内のほかの譲渡益や配当益と損益通算でき、節税につながります。3年間の繰越控除も使えます。
ところが、NISA口座(旧・新どちらも)で発生した売却損は、
- 同年内の特定口座の譲渡益と損益通算できない
- 翌年以降の繰越控除に使えない
- 配当課税との通算もできない
**「税金がかからない代わりに、損が出ても税務上の救済も一切ない」**というのがNISA口座の正体です。
私のコナカで具体的に何が起きたか
旧NISAでの売却損 -49,100円は、税務上は完全に「ないもの」として扱われます。
たとえば私が同じ年に特定口座で別の銘柄を売却して+50,000円の譲渡益が出ていた場合、
- 通常の特定口座同士の取引であれば、この+50,000円とコナカの-49,100円を相殺して、譲渡益はわずか900円。税金は20.315%×900円 = 約183円で済む
- ところが、コナカの売却損は旧NISA発のため通算できず、+50,000円の全額が課税対象になる。税金は20.315%×50,000円 = 10,158円
つまり、NISAで含み損になった銘柄を「損切りで節税」しようとしても、まったく節税にならないのです。これは旧NISAも新NISAも同じ仕様です。
じゃあクロス取引は無意味だったのか
いいえ、無意味ではありません。クロス取引の目的は「節税」ではなく「税務上の取得単価のリセット」と「保有口座の整理」です。
私のコナカは特定口座に取得単価248円で再スタートしたので、もし将来400円まで上がって売却した場合、譲渡益は (400-248)×100 = 15,200円。税金は20.315%×15,200円 = 3,088円。本当の買値738円基準では大きな含み損のまま売っているのに、税務上は譲渡益として課税されるという捻じれた結論になります。
これは取得単価リセットの罠そのものです。次のセクションで詳しく書きます。
取得単価リセット問題:移管時時価が「新しい買値」になる罠
旧NISA→特定口座移管で一番ハマりやすい罠を整理します。クロス取引でも自動移管でも、結果として同じ問題が起きます。
何が起きるか
旧NISAで738円で買ったコナカが、特定口座に248円で再スタートした瞬間、その248円が「取得単価」として税務上記録されます。本当の買値(738円)はリセットされ、税務上の損益計算は248円基準で行われます。
具体的に何が起きるかというと、
- 元の買値738円で見れば、いま248円なら 490円×100株 = -49,000円相当の含み損
- ところが特定口座での税務上の取得は248円なので、いま248円で売っても損益0円扱い
- 移管後に300円まで上がって売却すると、税務上は (300-248)×100 = +5,200円の譲渡益として20.315%課税
つまり**「本当は含み損なのに、税金は取られる」**という現象が起きます。マネーフォワードや楽天証券の口座画面で表示される損益は、この税務上の取得単価ベースなので、実際の購入時から見たら大きな含み損なのに、画面では小さな数字に見えてしまいます。
マネーフォワードでの表示との乖離
私がマネーフォワードで保有資産を見ると、コナカの損益は「-800円」前後で表示されます。これは移管後の取得単価248円と現在の株価の差を出しているだけです。
実際の自分の購入価格である738円基準で考えると、含み損は3〜4万円。約50倍の違いがあります。証券会社の画面やマネフォを鵜呑みにすると、自分が損失を抱えていることに気づけません。
何を意識しないといけないか
旧NISAから移管された銘柄を保有している人は、
- 画面上の損益は移管後の取得単価ベース
- 実際の自分の購入価格(オリジナル取得単価)は別で記録しておく必要がある
- 「画面で含み益が出ていても」、本当は大きな含み損である可能性がある
私の場合、コナカの738円購入の事実は、自分の投資ノートに別管理しています。証券会社の画面だけ見ていると、実態を見失います。
ほかの銘柄の処理判断ロジック
コナカ以外の銘柄については、シンプルに以下のように振り分けました。
JT(2914):旧NISA期間内に売却して+376,930円で利益確定
旧NISA最大の成功銘柄でした。累計の含み益+配当で**+376,930円**。非課税期間内に売却して利益確定し、新NISA成長投資枠での買い直しはしていません。配当利回りが高く長期保有も検討しましたが、含み益が大きく積み上がっていたため「非課税のうちに利益確定する」を優先しました。特定口座に移管していれば以降の値上がり益・配当に20.315%課税されるため、移管後に同じリターンを再現するハードルが上がると判断したのが理由です。これが旧NISA11年で最大の成功例になりました。
青山商事:含み損確定→新NISAでの買い直しはしない
旧NISA最大の失敗銘柄。-310,960円。旧NISA期間内に売却して損切りしました。NISA売却損は損益通算できないので税務メリットはゼロですが、それでも「これ以上下がる前に処分したい」という意思決定として実行しました。新NISA成長投資枠での買い直しはしていません。同じ銘柄を非課税枠で買い直すのは「投資判断のリセット」を放棄することなので、別銘柄に資金を振り向けました。
中北製作所(6496):旧NISA期間中に売却→買い直しなし
2018年に旧NISAで購入した銘柄。買付額382,500円・売却額248,500円・配当実額28,000円で、最終的に -106,000円で着地しました。2018年購入分は5年の非課税期間が2022年末で終了。期間内に売却して損切りし、新NISAでの買い直しはしませんでした。
その他の高配当株:放置して自動移管
ソフトバンク(9434)、日本郵政(6178)など、保有量が小さく判断する手間に対してリターンが見合わない銘柄は、何もせず非課税期間終了を待って自動移管しました。判断するコスト(株価チェック・売買タイミング・買い直し判断)も家計の隠れたコストです。「全部に最善手を打とう」とすると疲れるので、軽微な銘柄は放置するのが合理的でした。
配当金の課税変化:旧NISA期間中の0%→特定口座移管後の20.315%
移管後にじわじわ効いてくるのが配当金の課税です。
旧NISA期間中
配当金は非課税。100円の配当が出れば100円受け取れます。
特定口座移管後
20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収されます。100円の配当が出れば、79.685円しか受け取れません。
私の年間配当への影響
私の旧NISAで2024年に受け取った配当は、税引後で140,846円でした。仮にこの全額が2025年以降は特定口座扱いになった場合、税金が引かれることで実質手取りはおおよそ20%減ります。年間で2.8万円ほど目減りする計算です。
実際には、銘柄の一部は2024年中の売却で手放しましたし、新NISA成長投資枠で別銘柄を買い増しているので、単純比較はできません。ただ「旧NISAで受け取っていた配当のうち、特定口座移管後の銘柄分は、税引後ベースで2割減る」という構造変化は確実に起きています。
これは新NISAに移行する人全員に発生する話で、見逃しがちなポイントです。
1年経った今(2026年4月時点)の検証
2024年初の判断から1年4か月ほど経ちました。実際にどうだったかを書きます。
良かった判断
- コナカをクロス取引で処理したこと。年末の流動性が薄い時期を避けられたし、取引履歴が明確に残った
- JTを非課税期間内に売却して+376,930円で利益確定したこと。特定口座移管後の課税を回避できた
- 軽微な銘柄を「判断せず放置」したこと。判断コストを節約できた
後悔している判断
- 青山商事の損切りタイミングが遅かったこと。もっと早く判断していれば-310,960円までは膨らまなかった
- 中北製作所をもう少し早く処分すべきだった
- 新NISA成長投資枠の使い始めが慎重すぎて、年初の買付が小さかった
想定外だったこと
- 取得単価リセットによって、画面上の損益が実態と乖離する違和感
- 配当金が税引き後ベースに切り替わる体感(特定口座の通知書を見て、初めて「あ、引かれている」と実感する)
- マネーフォワードの表示を信じすぎると、自分が含み損を抱えている事実から目をそらしてしまう構造
移行時にやるべき5つのチェックリスト
最後に、これから旧NISAの非課税期間終了を迎える人に向けて、判断のためのチェックリストを残しておきます。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 1. 銘柄ごとに含み益・含み損を整理する | 判断は銘柄単位。一律ではない |
| 2. NISA売却損は損益通算できないと理解する | 損切りしても税務上は救済ゼロ |
| 3. 益出しは非課税のうちに | 特定口座移管後の売却益には20.315%課税される |
| 4. 移管後の取得単価リセットを把握する | 画面上の損益は移管後ベース。実際の買値は自分で管理する |
| 5. クロス取引という選択肢も検討する | 自動移管を待たず、自分でタイミングを選ぶことも可能 |
まとめ:旧NISA→新NISAは「個別判断の積み重ね」になる
旧NISAから新NISAへの移行は、「全部こうすればOK」という答えがありません。銘柄ごとに、含み損益・将来見通し・自分の戦略適合性を見て、4つのパターン(自動移管・クロス取引・売却益出し・売却損切り)から選んでいく作業になります。
私の11年間の旧NISAは、JTを非課税期間内に売却して**+376,930円で利益確定、青山商事は非課税のまま-310,960円で損切り、コナカは738円で買って9年5ヶ月塩漬けの末にクロス取引で取得単価を248円にリセットして特定口座へ、と良いことも悪いことも全部ありました。それでも10年間の配当累計は904,551円**で、約90万円が非課税で家計に入りました。
ロールオーバーが廃止された以上、「非課税期間が終わったら特定口座行き」が原則です。だからこそ、移管前にやるべきことを整理して、慌てず判断していきましょう。とくにNISAの売却損は損益通算できないという仕様は、損切り判断のとき必ず思い出してください。これを知っているかどうかで、出口の戦略はまったく変わります。