保険業界10年・投資歴10年超・FP2級の HIKO です。保険会社で10年働いたあと IT企業へ転職し、家計と投資の発信をしています。
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2026年6月、明治安田生命が平準払い(毎月払い)の積立保険の予定利率を、現行の1.4%から1.6%へ引き上げると報じられました。報道によると、契約から10年たった満期で受け取れる金額は払込総額の110%になり、これは2026年4月に続く同年2度目の引き上げとのことです。
ここで、公式で確認できる部分と報道のままの部分を分けておきます。
- 公式で確認できたこと:明治安田生命「じぶんの積立」の公式サイトには、10年満期時の受取率が110.0%と掲載されています(保険料率2026年8月1日現在・2026年8月12日確認)。5年払込・10年満期という建付けも公式に明記されており、報道されていた満期110%は現在の公式条件と一致します。当ブログが以前この商品を検証したときの満期受取率は108.3%でしたから、実際に引き上げられたことになります
- 報道ベースのままのこと:予定利率を1.4%から1.6%へ引き上げたという利率そのものの数字と、2026年7月申込分からという適用時期です。公式サイトは受取率を掲載していますが予定利率の数値は載せていないため、この2つは報道の記述にとどまります
つまり「満期110.0%」は公式で裏が取れた数字、「予定利率1.6%」「7月申込分から」は報道ベース、という切り分けになります。本記事の試算は、すべて公式の110.0%を起点にしています。
ニュースを見て「予定利率が上がったなら、今が買い時では?」と感じた方も多いはずです。本記事では、その満期110.0%という数字を実質利回り(IRR)に翻訳して冷静に見ていきます。
結論:利上げは朗報だが、IRRで見ると依然「年1%台」
先に結論を3点に整理します。
- 利上げは確かに朗報:満期受取率が以前の108.3%から110.0%へ上がったことで、実質利回り(IRR)は年率約1.07%から 年率約1.27% へ改善しました(いずれも本記事の試算)。
- ただしNISAとは役割が違う:積立保険は「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」、NISAインデックスは「元本割れリスクと引き換えに高い期待リターンを狙う商品」。同じ土俵で「どちらが得」とは言い切れません。なお保険は預金保険の対象外で、保険会社が破綻した場合は生命保険契約者保護機構による補償(破綻時点の責任準備金等の原則90%まで)に拠ることになり、預金と完全に同じ安全性ではない点には留意が必要です。
- 「予定利率が上がった=今すぐ買い時」という話には乗らない:予定利率1.6%という数字と、あなたが手にする実質利回りは別物です。数字の見え方に流されず、自分の家計の中での役割で判断するのが現実的です。
ここから先は、報道された数字と一般的な税制値を使って、順番に整理していきます。
報道された内容と、公式で確認できる条件を整理する
出所ごとに列を分けて並べます。
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 対象 | 平準払い(毎月払い)の積立保険 | 報道 |
| 予定利率 | 1.4% → 1.6%(2026年7月申込分から) | 報道 |
| 引き上げの背景 | 国内金利の上昇を反映。2026年内2度目の引き上げ | 報道 |
| 払込期間 | 5年 | 公式 |
| 保険期間 | 10年 | 公式 |
| 10年満期時の受取率 | 110.0% | 公式(保険料率2026年8月1日現在) |
| 3年・5年経過時の返戻率 | いずれも100.0% | 公式(同上) |
| 7年経過時の返戻率 | 105.4% | 公式(同上) |
| 例(月2万円の場合) | 払込総額120万円に対し満期132万円(+12万円) | 公式の受取率からの計算 |
公式の出典は明治安田生命「明治安田生命じぶんの積立」(2026年8月12日確認)です。
報道では「投資信託などに比べて元本割れのリスクが少なく、銀行預金よりも金利は高い」という商品の位置づけも示されていました(報道の文言)。ここは丁寧に補っておきます。公式サイトが返戻率を公表しているのは経過3年・5年・7年・10年満期の4点だけで、その4点はいずれも100.0%以上です。1年・2年の数値は公表されていません。 したがって「早期解約では元本割れする」と断定することも、逆に「いつ解約しても100%以上」と断定することも、公表されている情報からはできません。
そのうえで確かなのは、将来的に商品条件が変更される可能性があること、保険である以上は保険会社の信用力に依存することです。元本保証ではなく「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」と捉えるのが正確です。
予定利率1.6%・満期110%をIRRに翻訳すると年率いくらか
ここが本記事の核です。「予定利率1.6%」と聞くと、年1.6%で増えるように感じます。しかし、私たちが実際に手にする利回りは、もっと低くなります。
月2万円×60ヶ月(5年)払い込み、その後5年据え置いて10年満期で132万円を受け取るケースで計算します。
- 払込総額:20,000円 × 60ヶ月 = 1,200,000円
- 満期保険金:1,200,000円 × 110.0% = 1,320,000円
- 増加額:120,000円
ポイントは「120万円を一括で預けたわけではない」「毎月2万円ずつ5年かけて積み立て、その後5年は据え置いた」という時間構造です。最後に積んだお金は数年しか運用されず、最初に積んだお金だけが約10年運用されます。
この時間価値を考慮した内部収益率(IRR)を計算すると、次のようになります。
| 満期受取率 | 実質利回り(IRR・年率換算) |
|---|---|
| 110.0%(現在の公式条件) | 約1.27% |
| 108.3%(以前の条件・参考) | 約1.07% |
受取率110.0%という見た目に対し、実質利回りは年率約1.27%。利上げによって約0.2ポイント改善した計算ですが、依然として年1%台です。「予定利率1.6%」という数字とは、はっきり差があります。
※IRRは、各月の初めに2万円を5年間(計60回)払い込み、契約から120ヶ月後に満期保険金132万円を一括で受け取る前提で、月次キャッシュフローから内部収益率を求めて年率換算したものです(手数料・税・配当等の細目は加味しない簡易試算)。前提が変われば数値も変わります。なお受取率は払込額に対する割合なので、月1万円でも月2万円でもIRRは同じ約1.27%です。
なぜ「予定利率1.6%」と「実質利回り」はズレるのか
ここがFPとして一番お伝えしたい部分です。両者がズレる理由は大きく2つあります。
1つ目は、予定利率がかかるのは「払い込んだお金のうち、運用に回る部分」だけだからです。 そもそも予定利率は、保険会社があらかじめ見込む運用収益の分だけ保険料を割り引くための率であって、契約者の受取額に直接かかる利率ではありません。保険には保険会社の運営経費(付加保険料)や、わずかでも付帯する保障コストが含まれます。払込総額のすべてに予定利率1.6%がそのまま乗るわけではありません。
2つ目は、先ほど触れた時間構造です。 積立保険は「毎月コツコツ積む→さらに数年据え置く」という形のため、お金ごとに運用される期間がバラバラです。満期時点の「払込総額に対する増加率(返戻率110%)」を、毎年の利回り(IRR)に直すと、必ず小さく見えます。
だからこそ、「予定利率◯%」や「受取率◯%」という表示は、商品同士を比べる物差しとしては不十分です。私はいつも、こうした商品を見るときは受取率を一度IRRに翻訳してから判断するようにしています。今回のように予定利率が引き上げられたニュースでも、まず実質利回りに直してみると、過度に期待しすぎず冷静に見られます。
同じ月2万円をNISAに入れたら、10年後どうなるか
では、同じ月2万円を NISAつみたて投資枠で全世界株インデックスに5年間積み立て、その後5年間そのまま保有した場合の評価額を試算します。
株式市場では長期的に年率数%〜7%程度のリターンが期待されることがありますが、将来の成果は保証されません。ここでは幅を取って3%・5%・7%の3シナリオで比較します。
| シナリオ | 10年後評価額(NISA) | 積立保険(満期110.0%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 年率3%(保守) | 約1,501,034円 | 1,320,000円 | +約181,000円 |
| 年率5%(中央値弱め) | 約1,738,041円 | 1,320,000円 | +約418,000円 |
| 年率7%(強気) | 約2,008,409円 | 1,320,000円 | +約688,000円 |
NISA側は保険側と条件をそろえ、各月の初めに2万円を60回積み立て、そのまま10年目まで保有した前提で計算しています。積立保険の1,320,000円は公式の受取率110.0%から出した確定値で、NISAの3つは期待値にすぎません。
NISA枠なので運用益はすべて非課税です。控えめな年率3%でも約18万円、年率5%なら約42万円、年率7%なら約69万円の差になります。
ただし、ここは強調しておきます。NISAのインデックス投資には元本割れリスクがあります。 短期では大きく下落する年があり、過去にはリーマンショックのように一時的に評価額が半分近くまで沈む局面もありました。上の数字は「長期で平均リターンが実現した場合」の期待値であり、満期110%という積立保険の確定リターンと同列に比べられる性質のものではありません。「絶対に減らしたくないお金」を入れる商品ではない、という点は必ず押さえてください。
それでも積立保険が向く人/NISAが向く人
利上げで条件が良くなったとはいえ、「どちらが優れているか」ではなく「自分の家計のどこに置くか」で考えるのが現実的です。比較軸を「元本保証/想定利回り/流動性/税優遇」に揃えて整理します。
個人向け国債の利率の出典は財務省「現在募集中の個人向け国債」(募集期間 令和8年8月6日〜31日)です。税引後は年1.4901095%になるので、保険料控除の枠が埋まっている人にとっては、積立保険の1.27%より国債のほうが上という関係になります。予定利率が上がったのは事実ですが、同じ局面で国債の利率も上がっている、という点はセットで見ておきたいところです。
積立保険が向きやすい人
- すでにNISAのつみたて投資枠を満額活用していて、さらに余剰資金を「リスクを取らずに置く場所」が欲しい人
- 生命保険料控除の枠が完全に空いている人(他の生命保険で使い切っていない人)。この場合は節税分が乗るため、個人向け国債より有利になります
- 値動きが心理的に耐えられず、10年動かさなくても困らない余剰資金がある人
NISAが向きやすい人
- NISAのつみたて投資枠がまだ埋まっていない人(長期の期待リターン差が大きいため、まずはこちらが合理的なケースが多い)
- すでに医療保険などで一般生命保険料控除の枠を使い切っている人(節税の上乗せが見込めない)
- 10年間ずっと動かせるとは言い切れない資金しかない人(早く解約するほど利回りは下がります)
私自身はどう考えるか
私自身は2015年から NISA(旧→新)でインデックス投資を続けてきました。投資を始めた当初は年収300万円スタートで、コナカ株を長く塩漬けにし、青山商事では約31万円の含み損を出した経験もあります。決して上手な投資家ではありません。
そのうえで、今回のような利上げニュースを見て思うのは、「数字の見え方に動かされないこと」の大切さです。予定利率1.6%・満期110.0%という見出しは魅力的ですが、実質利回りに直せば年率約1.27%。これは「悪い商品」という意味ではなく、「元本割れしにくい安心と引き換えの利回り」として妥当な水準です。問題は、その安心が自分にとって本当に必要かどうかです。
私の場合は、減らしたくないお金は預金で持ち、増やしたいお金はNISAでインデックスに回す、という役割分担に落ち着いています。積立保険を否定するつもりはまったくなく、「NISAを満額使い、保険料控除枠も空いている人にとっては、預金より優位な置き場になり得る」と考えています。最終的にどちらを選ぶかは、家計の余裕と値動きへの心理的な耐性で判断するのが現実的です。投資・契約の判断は、あくまでご自身の責任でお願いします。
積立保険のデメリットは?契約前に確認したい3つの注意点
利上げのニュースだけを見て申し込む前に、この種の積立保険に共通する注意点を3つに整理しておきます。いずれも本記事ですでに触れた内容の再確認です。
注意点1:早く解約するほど利回りは下がる
満期まで保有すれば払込総額を110.0%で受け取れますが、公式サイトの表示では5年経過時点の返戻率は100.0%ちょうどで、増加分はすべて後半5年に乗ってきます。つまり途中でやめると、増えないまま資金を置いていただけになります。なお1年・2年の返戻率は公表されていないため、「早期解約は元本割れ」と断定できる材料は公表情報の中にはありません。いずれにせよ「10年間動かさなくても困らない余剰資金かどうか」が最初のチェックポイントです。
注意点2:預金保険の対象外である
保険は預金と違い預金保険の対象外です。保険会社が破綻した場合は生命保険契約者保護機構による補償(破綻時点の責任準備金等の原則90%まで)に拠ることになり、預金と完全に同じ安全性ではありません。しかも90%が補償されても、保険契約の移転時に予定利率の見直しなど契約条件の変更が行われ、満期保険金や解約返戻金が契約時の想定より少なくなる場合があります。早期解約控除が設けられる可能性もあります。
注意点3:実質利回りは表示の数字より低くなる
予定利率1.6%・満期受取率110.0%という表示に対し、時間価値を考慮した実質利回り(IRR)は年率約1.27%(本記事試算)です。運用に回るのは払込額の一部であること、積立と据え置きの時間構造があることから、表示の数字と体感リターンには必ず差が出ます。
この3点を許容できるなら、リスクを抑えた資金の置き場として検討する価値はあります。逆に1つでも引っかかるなら、まずはNISAなど他の選択肢との比較が先です。
会社側の情報も確認したい場合は、生命保険協会が会社別の苦情受付件数を四半期ごとに公表しています。明治安田生命の数字(保有契約100万件あたりでは業界平均とほぼ同水準)と読み方は、じぶんの積立のデメリットは「生命保険料控除の枠」しだいの「明治安田生命の評判・苦情」でまとめています。
FAQ
Q1. 予定利率が上がったなら、今が買い時ですか? A. 「予定利率が上がった=買い時」とは限りません。予定利率1.6%でも実質利回りは年率約1.27%(本記事試算)で、依然として年1%台です。買うかどうかは、利率の上下より「NISAを満額使い切ったか」「保険料控除枠が空いているか」「10年動かさない資金か」で判断するほうが合理的です。
Q2. 予定利率1.6%なら、年1.6%で増えるのですか? A. いいえ。予定利率は払い込んだお金のうち運用に回る部分にかかる利率で、私たちが手にする実質利回り(IRR)とは別物です。満期受取率110.0%から計算すると、IRRは年率約1.27%です。
Q3. 以前の満期108.3%と比べて、どれくらい得になりますか? A. 本記事の試算では、満期108.3%のときIRRは年率約1.07%、満期110.0%なら年率約1.27%。約0.2ポイントの改善です。月2万円×5年・10年満期の例だと、満期受取が129.96万円から132万円へ約2万円増える計算になります。
Q4. 元本割れの心配はありませんか? A. 明治安田生命の公式サイトが公表しているのは経過3年・5年・7年・10年満期の4点で、いずれも返戻率・受取率は100.0%以上です。1年・2年の数値は公表されていないため、本記事では元本割れの有無を断定していません。契約から3年より前に解約する可能性があるなら、その時点の返戻金を設計書でご確認ください。
Q5. iDeCoやNISAとの優先順位は? A. 優先順位は人によって変わります。一般論としては、生活防衛資金を確保したうえで、NISA・iDeCoなどの税制優遇制度を優先的に検討し、その後に積立保険を比較するケースが多いです。所得税率が高く、老後資金目的で60歳まで使わない資金であれば、iDeCoが優先になる場合もあります。積立保険は「税制優遇枠を活用したあとの余剰資金の置き場」として位置づけると考えやすくなります。
まとめ:数字の見え方ではなく家計の役割で決める
今回の利上げで明治安田の積立保険の条件は改善しましたが、公式の満期受取率110.0%を実質利回り(IRR)に直せば年率約1.27%で、依然として年1%台です。これは「悪い商品」という意味ではなく、満期保有を前提にリスクを抑えた確定リターン商品としては妥当な水準といえます。ただし同じ局面で個人向け国債(変動10年・2026年8月募集分は年1.87%)の条件も上がっているため、保険料控除の枠が埋まっている人にとっては国債のほうが上になります。増やすことを目的とした資金であれば、まずはNISAの非課税枠を検討するほうが合理的なケースが多いです。性格の違いを踏まえ、自分の家計のどこに置くお金なのかで判断するのが現実的です。
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