平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。保険業界で10年働いたあと IT企業へ転職、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。本記事では、明治安田生命「じぶんの積立」の実質利回りを IRR ベースで検証し、定期預金・個人向け国債・NISA と並べて整理します。

ネット上の評判では「元本保証で安心」「返戻率108.3%はお得」という声が目立つ「じぶんの積立」ですが、デメリットも数字で確認しておきたいところです。元本保証・3年経過後はいつでも100%以上で解約できる安心感が魅力な一方、10年満期まで保有しても実質利回り(IRR)は**年率約1.07%**にとどまります。生命保険料控除を加味してもIRRは概算で年率約2.5%。元本保証商品としては優秀ですが、NISA 等の他選択肢との比較・物価上昇を考慮した実質購買力の観点では、選び方を整理してから入る商品です。本記事では公式条件(2026年5月時点)に基づき、メリット・デメリットを数字で確認していきます。

結論:「じぶんの積立」の特徴は3点に整理できる

「じぶんの積立」は元本保証・いつでも100%以上で返ってくる安心感が売りです。検証してみると、特徴は次の3点に整理できます。

  1. 実質利回りは控えめ:10年満期保有しても IRR は年率約1.07%。生命保険料控除込みでも概算年率約2.5%にとどまる
  2. 10年単位の資金拘束がある:5年払込→さらに5年据置で108.3%。3年未満の解約は元本割れ、5年解約だと返戻率100%ジャストで増加分はゼロ
  3. 税優遇は一般生命保険料控除のみ:他の生命保険で控除枠を使い切っていれば、税メリットの上乗せはありません

ここから先は、公式条件と一般的な税制値を使って数字で整理していきます。

「じぶんの積立」の公式条件を整理する

まず2026年5月時点の公式条件を整理します。

項目内容
月額保険料5,000円〜(複数口契約で増額可)
払込期間5年
保険期間10年
5年払込終了時返戻率100.0%(元本割れなし)
10年満期時返戻率108.3%
中途解約時の元本保証3年経過後から返戻率100%以上
加入年齢被保険者6〜75歳・契約者18歳〜
生命保険料控除区分一般生命保険料控除の対象

商品の建付けは「5年間月払い→そのまま5年据え置き→満期で返戻率108.3%」というシンプルな貯蓄型保険です。元本割れリスクが低く、預金より少し増える商品として位置づけられています。

なお、最低額は月5,000円ですが、口数を増やせば月2万円程度まで積み増しできます。ただし保険料控除の上限は所得税で年8万円超で頭打ち(控除額4万円)になるため、月1万円前後で頭打ちに近づきます。

試算:月1万円×5年払い込み・10年満期の実質利回り

月1万円×60ヶ月(5年)の払込で計算します。

  • 払込総額:10,000円 × 60ヶ月 = 600,000円
  • 満期受取額:600,000円 × 108.3% = 649,800円
  • 増加額:49,800円

ここまでは単純な算数ですが、ポイントは「60万円が一括ではなく月1万円ずつ拠出された」「払込終了後5年間は据え置き」という時間構造です。

時間価値を考慮した内部収益率(IRR)を計算すると、月次IRRは約0.089%、**年率に換算すると約1.07%**になります。

返戻率108.3%という見た目に対して、実質利回りは約1.07%/年。これが「10年拘束した上での実態」です。

参考までに、5年払込が終わった直後に解約すると返戻率は100.0%、つまり IRR は年率ほぼ0%になります。「5年積み立てて100%で返ってくる」と聞くと安全に感じますが、5年間の機会を考えると実質的な増加はほぼ生まれません。

解約返戻金の推移:3年未満で解約すると元本割れする

公式のシミュレーション表によると、解約時の返戻率は以下のように推移します。

経過年数返戻率
1年経過100%未満(元本割れ)
3年経過100.0%
5年経過(払込終了)100.0%
7年経過104.5%
10年経過(満期)108.3%

公式サイトには「3年経過後はいつでも100%以上の解約返戻金」との記載があります。3年未満で解約すると元本割れする点は要注意です。

また、5年経過時点(払込終了)でも返戻率は100.0%ジャストで、増加分(49,800円)はすべて残り5年間の据え置き期間に乗ってくる形になります。家計の急変で5年で解約してしまうと、60万円を5年間動かせなかっただけ、という結果になりやすい設計です。

生命保険料控除のメリットを差し引いてみる

「じぶんの積立」の大きな魅力は、保険料を払いながら一般生命保険料控除を受けられる点です。年収500万円・所得税10%・住民税10%帯で試算します。

一般生命保険料控除の控除額(新制度)

年間払込保険料が80,000円超の場合、控除額は以下の上限まで取れます。

  • 所得税:最大40,000円
  • 住民税:最大28,000円

月1万円積立時の節税額(年)

月1万円×12ヶ月=年12万円の払込なので、控除額は上限ベースで適用されます。

  • 所得税:40,000円 × 10% = 4,000円
  • 住民税:28,000円 × 10% = 2,800円
  • 年間節税額:6,800円

5年間の節税合計

ただし、既に他の生命保険(医療保険・終身保険など)で一般生命保険料控除を使い切っている人は、節税メリットはゼロです。30代既婚男性の多くは医療保険や収入保障保険に加入しているため、控除枠が空いていないケースが少なくありません。

仮に控除枠がフル活用できたとして、5年間の節税合計は 6,800円 × 5年 = 34,000円

満期増加分49,800円 + 節税34,000円 = トータル便益83,800円。払込600,000円に対する10年間の便益として計算し直すと、IRR は**年率約2.5%**まで上がります。これは確かに預金よりは良い数字です。

補足:このIRR約2.5%は、節税効果を年次キャッシュフローとして加算した場合の概算値です。実際の控除額は所得・他保険の控除枠状況・住民税の所得割等により大きく変動します。すでに他の保険で枠を使い切っている場合、便益は満期増加分49,800円のみとなり、IRR は年率約1.07%に戻ります。

「じぶんの積立」のデメリット:物価上昇という見えにくいリスク

ここでもう一段、検討しておきたい論点があります。「元本保証=資産価値が維持される」というイメージは、必ずしも正しくありません。

例えば、10年後に100万円が110万円になる商品は、一見「増えている」ように見えます。ただ、その10年間で物価が20%上がっていた場合、実質的な購買力は下がっています。日本でも近年は食品・光熱費・サービス価格の上昇が続いており、年率1%台の利回り商品は「名目では増えても、実質で見ると目減りする」可能性が常にあります。

「じぶんの積立」は元本保証・絶対安全という性質と引き換えに、この実質購買力の目減りリスクと向き合う必要があります。これは「じぶんの積立」固有の欠陥ではなく、低利回りの確定リターン商品全般に共通する性質です。

NISA併用と比較:同じ月1万円を全世界株インデックスに入れたら

同じ月1万円を NISAつみたて投資枠の全世界株インデックスに5年間積み立てて10年間保有した場合、評価額はどうなるかを試算します。

過去30年の全世界株式(MSCI ACWI)平均リターンは年率7%前後ですが、ここでは控えめに3%・5%・7%の3シナリオで比較します。

シナリオ10年後評価額(NISA)じぶんの積立差額
年率3%(保守)約748,670円649,800円+98,870円
年率5%(中央値弱め)約865,494円649,800円+215,694円
年率7%(過去平均)約998,559円649,800円+348,758円

NISA枠なので運用益はすべて非課税。控えめな年率3%でも約10万円、年率5%なら約22万円、年率7%なら約35万円の差になります。

月1万円×5年積立・10年後評価額(NISA vs じぶんの積立)
649800円
じぶんの積立
748670円
NISA年率3%
865494円
NISA年率5%
998559円
NISA年率7%
NISAインデックス想定との10年比較。年率5%なら約22万円、年率7%なら約35万円の差。

ただし、NISAのインデックス投資には元本割れリスクがあります。短期では大きく下落する年もあり、リーマンショック級の局面では一時的に評価額が半分近くまで沈むこともあります。「絶対に減らしたくない資金」を入れる商品ではありません。上の試算はあくまで「長期で平均リターンが実現した場合」の期待値であり、「じぶんの積立」の確定リターンと同列に比較できる性質のものではない点に注意してください。

なお、生命保険料控除34,000円分を加味しても、年率3%シナリオでNISAが約6.5万円リード、年率5%以上ならさらに大きな差が出ます。

他の元本保証系商品と並べて比較する

「じぶんの積立」を検討する際、比較対象として自然なのは同じ低リスク帯の商品です。定期預金・個人向け国債・NISA(インデックス)と並べて、比較軸を「元本保証 / 想定利回り / 流動性 / 税優遇」に揃えて整理します。

じぶんの積立
元本保証 3年経過後
想定利回り 年率約1.07%(控除込み概算2.5%)
流動性 3年未満は元本割れ・10年拘束
定期預金
元本保証 1000万円まで預金保険
想定利回り 年率0.1〜0.5%程度
流動性 中途解約自由(利息は減少)
個人向け国債(変動10年)
元本保証 国による
想定利回り 年率0.5〜1.0%程度(金利連動)
流動性 1年経過後から中途換金可
NISAインデックス
元本保証 なし(元本割れリスクあり)
想定利回り 年率3〜7%(期待値・確定でない)
流動性 いつでも売却可(短期下落リスクあり)

「じぶんの積立」は元本保証商品の中では利回りが高めですが、10年単位の資金拘束が他の3つより重い点が特徴です。逆に「絶対に減らしたくない」「保険料控除枠が空いている」という条件が揃うなら、定期預金より優位な選択肢になり得ます。

「じぶんの積立」の評判を踏まえた、選んでいい人・避けたほうがいい人

ここまでの試算から、選択判断は次のように整理できます。

選んでいい人

  • NISA を満額活用済み:年間120万円のつみたて投資枠を使い切り、さらに余剰資金を「リスクを取らずに置く場所」が欲しい人
  • 生命保険料控除枠が完全に空いている:他に生命保険に入っておらず、所得税・住民税の控除枠を取り切りたい人
  • 絶対に元本を減らしたくない:投資のリスクが心理的に耐えられず、流動性も10年動かさなくて済む余剰資金がある人

避けたほうがいい人

  • NISA がまだ満額埋まっていない:長期での期待リターン差が大きく、NISA 優先のほうが合理的なケースが多い
  • 既に医療保険や収入保障保険に入っている:一般生命保険料控除枠が埋まっており、節税の上乗せメリットが見込めない
  • 10年間動かせない資金とは言えない:3年未満で解約すると元本割れ、5年解約でも増加分ゼロのため、流動性が必要な資金は別商品が無難
  • インフレ局面で資産の実質価値を守りたい:年率1〜2.5%台の利回りでは、物価上昇率を下回って実質購買力が目減りする可能性がある

私自身は2015年から NISA(旧→新)でインデックス投資を続けてきました。投資開始当初は年収300万円スタートで、コナカ株を9年塩漬けし、青山商事で31万円の含み損を出した経験もあります。そのうえで言えるのは、「元本保証=最適」ではないということです。リスクを取らない選択にも、機会の見送りという別の形のコストが必ず伴います。元本保証を優先するか、長期リターンの期待値を優先するかは、家計の余裕と心理的耐性で判断するのが現実的です。

FAQ

Q1. 「じぶんの積立」は本当に元本割れしないのですか? A. 3年経過後から解約返戻率が100%以上になる設計です。ただし1年未満〜3年未満で解約すると元本割れします。「契約から3年は動かさない資金」と考えるのが無難です。

Q2. 月5,000円なら気軽に始められますか? A. 月5,000円ベースだと年6万円・5年で30万円・満期約32.49万円。増加分は約2.5万円のみです。年6万円でも一般生命保険料控除(所得税)の対象にはなりますが、控除額が最大になる「年間払込8万円超」の上限には届かないため、控除を取り切るには月7,000円弱以上が必要です。控除目的だけで月5,000円から積み立てると、資金拘束に対してメリットが限定的になりやすい点は意識しておきたいところです。

Q3. iDeCo や NISA との優先順位は? A. 一般論としては、(1) NISAつみたて投資枠 → (2) iDeCo(節税効果が高い)→ (3) じぶんの積立、の順が合理的なケースが多いです。じぶんの積立は「他の非課税枠を埋め切ったあとの余剰資金の置き場」として位置付けるのが妥当です。

Q4. 保険会社が破綻したら? A. 生命保険契約者保護機構により責任準備金の90%まで保護されます。明治安田生命は国内大手で財務健全性指標(ソルベンシー・マージン比率)も高水準を維持しており、短期的な破綻リスクは限定的です。

Q5. 死亡保障はついているのですか? A. ついていますが、保障額は払込保険料相当額(または解約返戻金相当額)で、純粋な死亡保障商品ではありません。「もしものとき」の備えとしては不十分なので、必要に応じて別途生命保険を検討する必要があります。

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