27銘柄を5年7ヶ月貸した結果、累計51,452円でした。結論は「基本はやらなくていい。ただし、特定口座に長期保有株が多い人は例外」です。
NISAを中心に資産形成している30代会社員向けに書いています。投資歴10年超・FP2級のHIKO(平成時代を生きた30代、夫婦二人暮らし)です。銘柄ごとの金利差と、あえて「貸さない17銘柄」の線引きまで公開します。
貸株はやめたほうがいい?→私の答えと条件
「貸株はやめたほうがいい?」と検索してたどり着いた方への、私の答えを先に書きます。
基本はやらなくていいです。ただし、特定口座に長期保有株が多い人は例外で、各銘柄に「株主優待・予想有配優先」を設定できるなら続けても問題ありません。これが27銘柄・5年7ヶ月で51,452円(月平均768円)という一次データを持つ私の結論です。
「やめたほうがいい」と言われる理由(証券会社の信用リスク・配当金相当額が雑所得になる問題・優待や長期保有との相性)は実在します。本文で一つずつ実体験ベースで検証しますが、いずれも「条件を満たせば管理可能」なリスクで、逆に条件を満たせない人は最初からやらないほうがいい、という整理になります。
| 保有スタイル | 貸株の判断 |
|---|---|
| NISAがメイン | やらなくていい(そもそも使えない) |
| 優待株を特定口座で保有 | 「株主優待・予想有配優先」設定を入れれば可能(金利は薄まる) |
| 高金利の小型株を特定口座で保有 | スポット的にはあり(ただし条件付き) |
この3行で判断できる人は、以降を読まなくても大丈夫です。
私の貸株27銘柄を全公開します(2026年7月時点)
特定口座で保有している44銘柄のうち、実際に貸株に出しているのは27銘柄です。残る17銘柄はあえて貸していません(理由は次の章に書きます)。
2026年7月27日時点の残高はこうなっています。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 貸株残高 | 5,253,820円 |
| 保有銘柄残高 | 12,855,110円 |
| 7月計上金利 | 416.93円 |
保有額の4割ほどを貸し出している状態です。銘柄ごとの内訳を全部出します。
| コード | 銘柄 | 株数 | 金利 |
|---|---|---|---|
| 9233 | アジア航測 | 100 | 0.40% |
| 3816 | 大和コンピューター | 100 | 0.25% |
| 2301 | 学情 | 100 | 0.15% |
| 2413 | エムスリー | 100 | 0.10% |
| 2432 | ディー・エヌ・エー | 100 | 0.10% |
| 2519 | NF新興国債券ヘ無 | 10 | 0.10% |
| 3148 | クリエイトSDホールディングス | 100 | 0.10% |
| 3626 | TIS | 100 | 0.10% |
| 3854 | アイル | 100 | 0.10% |
| 3921 | ネオジャパン | 100 | 0.10% |
| 4076 | シイエヌエス | 100 | 0.10% |
| 4187 | 大阪有機化学工業 | 100 | 0.10% |
| 4554 | 富士製薬工業 | 100 | 0.10% |
| 4763 | クリーク・アンド・リバー社 | 100 | 0.10% |
| 5388 | クニミネ工業 | 100 | 0.10% |
| 6061 | ユニバーサル園芸社 | 200 | 0.10% |
| 6091 | ウエスコホールディングス | 100 | 0.10% |
| 7494 | コナカ | 100 | 0.10% |
| 7713 | シグマ光機 | 100 | 0.10% |
| 7730 | マニー | 100 | 0.10% |
| 7856 | 萩原工業 | 100 | 0.10% |
| 8697 | 日本取引所グループ | 100 | 0.10% |
| 8772 | アサックス | 100 | 0.10% |
| 8931 | 和田興産 | 100 | 0.10% |
| 9069 | センコーグループホールディングス | 100 | 0.10% |
| 9692 | シーイーシー | 100 | 0.10% |
| 9799 | 旭情報サービス | 100 | 0.10% |
27銘柄のうち24銘柄が金利0.10%です。例外はアジア航測(0.40%)、大和コンピューター(0.25%)、学情(0.15%)の3銘柄だけ。「貸株は高金利銘柄を狙う」と聞くと夢があるように感じますが、現実はほとんどの銘柄が0.1%で横並びになります。
ETFも貸株に出せました(公式ページの記載と実画面が違いました)
表の中に2519(NF新興国債券ヘ無)が入っています。これはETFです。
まず公式ページの記載です。楽天証券の貸株サービス取扱銘柄ページには、非対象銘柄として「ETN/ETF」と明記されています。

非対象銘柄の6番目に「ETN/ETF」と記載されています(出典: 楽天証券貸株サービス 取扱銘柄・2026年7月27日確認。該当箇所のみ抜粋)
次に、私の口座の実際の画面です。2519は貸出設定「全貸」で貸株残高10口として、実際に貸し出されていました。

楽天証券の私の貸出設定画面より。ETF(NEXT FUNDS 新興国債券・為替ヘッジ無/2519)でも通常の株式と同じように「全貸」を選択でき、貸株残高10株/口が立っています(2026年7月27日確認)
この画面では単元株数が「10 株/口」と表示されていて、保有している10口がそのまま貸株残高になっています。株主優待・配当金自動取得のコース(公式のコース名は「金利優先」「株主優待優先」「株主優待・予想有配優先」の3つ。口座の設定画面では「優待・有配優先」のように略記されます)もETFで選択でき、私は他の銘柄と同じく「株主優待・予想有配優先」にしています。
さらに、ログイン後の貸株一覧画面に書かれている対象外の条件は「NISA口座で保有している株式」「証券担保ローンで担保設定中の銘柄」の2つだけで、ETFは挙げられていません。つまり上の2枚のとおり、私が確認した範囲では、説明ページの記載と実際のサービス画面の記載が食い違っていました。すべてのETFで同じ扱いになるのか、今後も同じ運用が続くのかまでは分かりません。
ネット上の貸株解説記事はこの公式ページを引き写しているものが多く、「ETFは貸株に出せない」と書かれていることがあります。ETFを保有している方は説明ページだけで判断せず、ご自身の貸出設定画面で確認してみてください。
なお金利は0.10%です。「出せる」と分かると、次に気になるのは信託報酬との差だと思います。ここは私の口座の実数で確認できたので、続けて書きます。
ETFの貸株金利は信託報酬に届きません(2519の実数)
ETFは保有しているだけで信託報酬がかかります。だとすれば「貸株金利で信託報酬を相殺できるのでは」と考えたくなりますが、私の2519では成立しませんでした。
| 項目 | 年率 | 私の保有分での年額 |
|---|---|---|
| 貸株金利 | 0.10% | 約12円 |
| 信託報酬 | 0.209% | 約25円 |
信託報酬は年0.209%(税込)で、貸株金利0.10%の2倍以上あります。年額は私の保有10口・基準価額1,199.59円(評価額およそ1.2万円)で計算した概算で、評価額が動けば当然変わります。
差はもう少し開きます。貸株金利は雑所得で総合課税の対象ですが、信託報酬は基準価額から差し引かれる税引前のコストだからです。所得税と住民税を合わせて30%の人が金利だけで信託報酬を埋めようとすると、必要な金利は0.209%を0.7で割って年0.3%ほど。国内ETFの貸株金利はほとんどが0.10%ですから、この水準に届く銘柄はまず出てきません。
ただし、貸したから損をするという話ではありません。信託報酬は貸しても貸さなくてもかかるコストで、貸株金利はその上に乗るだけです。成立しないのは「貸株でノーコスト運用になる」という発想のほうだ、というのが正確なところです。私の場合、実際に判断すべきなのは年12円のために証券会社の信用リスク(後述します)を取るかどうか、という水準の話になります。
もうひとつ、ETFで貸株を使うなら分配金の扱いだけは必ず確認してください。貸出中に分配金が出ると「配当金相当額」として戻り、これも雑所得になります。ETFは分配金が主役の商品なので、ここを設定し忘れたときの損は金利の比ではありません。
アジア航測(9233)だけ高金利な理由
なぜアジア航測だけ金利が4倍ついているか。これは需要側、つまり「その銘柄を借りたい投資家がどれだけいるか」で決まります。空売り需要が多い銘柄や、信用取引で品薄になっている銘柄は貸株金利が上がりやすい傾向があります。
ただ重要なのは、この金利は証券会社の判断でいつでも変わるという点です。来月には0.10%に戻っているかもしれません。だから「アジア航測を貸株目的で買う」のは順序が逆です。あくまで保有している銘柄をたまたま貸し出した結果、金利が高かった、という話です。
「株主優待・予想有配優先」設定を全銘柄に入れている理由
貸株中は株の名義が証券会社に移るため、権利確定日をまたいで貸し出し状態だと株主優待・配当の権利が消えます。これを防ぐ設定が「株主優待・予想有配優先」(設定画面の略記は「優待・有配優先」)です。以下、本文では公式のコース名で表記します。
権利確定日の前に自動で返却→確定後に再度貸し出し、という挙動になります。返却中の数日間は金利がつかないので、その分だけ収入が薄まりますが、優待・配当を失うリスクと比べたら誤差です。
私は特定口座の44銘柄すべてに「株主優待・予想有配優先」を設定しています。コナカ(7494)の株主優待(3月末・9月末を基準日とする年2回の20%割引券)や、JPX(8697)の配当などを失ったら、金利数百円どころの話ではなくなります。
貸していない17銘柄|自動返却では守れないものがある
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
44銘柄すべてに「株主優待・予想有配優先」を設定しているのに、そのうち17銘柄は貸株に出していません。自動返却の設定を入れてもなお、守れないものがあるからです。
貸していないのはこの17銘柄です。
木徳神糧(2700)/オカムラ食品工業(2938)/ラクト・ジャパン(3139)/JMホールディングス(3539)/エコミック(3802)/ツムラ(4540)/ニチリン(5184)/巴工業(6309)/ライフコーポレーション(8194)/マックスバリュ東海(8198)/東京建物(8804)/安田倉庫(9324)/NTT(9432)/KDDI(9433)/スバル興業(9632)/ビジネスブレイン太田昭和(9658)/KSK(9687)
17銘柄のうち16銘柄が株主優待のある銘柄です(KSKだけは配当のみ)。そして、貸株を設定している27銘柄で最も高い金利は0.40%ですが、貸していない木徳神糧の金利は0.50%。保有銘柄の中で最高金利の銘柄を、あえて貸さずに置いていることになります。
「株主優待・予想有配優先」は付随条件までは面倒を見てくれない
理由は楽天証券の取引ルールに明記されています。
「株主優待自動取得設定サービス」は、お客様が株主優待を受けられるよう権利確定日に合わせて貸出しを一時解除するものであり、株主優待の付随条件には対応しておりません
(2026年8月13日時点の記載)
付随条件とは、「継続して1年以上保有」「3年以上でグレードアップ」といった長期保有条件のことです。自動取得サービスは権利確定日に株を戻すだけで、そこまでは保証しません。
さらに踏み込んだ記載もあります。
発行会社によっては、決算日以外でも臨時株主総会などで株主を確定し、株主名簿として登録した場合、その株主データを長期保有の株主条件として含む場合がございます。 貸株を利用して自動返却された場合、同一の株主番号であるという保証はございません。
(同ページの注意事項より連続する2項目を引用。2026年8月13日時点の記載)
継続保有の判定は、多くの場合「同一の株主番号で連続して株主名簿に載っていること」で行われます。ところが貸株中は名義が証券会社または第三者に移るため、この連続性が途切れるおそれがある。楽天証券自身が「保証はない」と書いているとおりです。
私の線引き
そこで、こういうルールで運用しています。
- 優待に長期保有条件がついている銘柄は貸株に出さない
- 優待があっても長期保有条件がなければ貸株に出す(学情・コナカ・アサックスなど10銘柄がこれに当たります)
- 貸出設定(全貸/未貸)は一括ではなく銘柄ごとに個別で判断する
- 自動取得コースは全銘柄「株主優待・予想有配優先」で統一する
- 新規購入銘柄の自動貸出設定は「貸出さない」にしておく
最後のひとつが地味に効きます。楽天証券には「買った株を自動で貸し出す」設定がありますが、これをオンにしていると、優待狙いで買い増した銘柄が知らないうちに貸株に回ります。私はここを「貸出さない」にして、買ったあとに1銘柄ずつ判断しています。
「優待株は全部貸さない」ではありません。判断の軸はあくまで長期保有条件の有無です。権利確定日に返ってくれば足りる優待なら自動取得サービスで対応できるので、貸して問題ありません。逆に継続保有で判定される優待は、数年かけて積み上げた期間を年数十円の金利のために失うリスクがあるので貸しません。金利が最も高い木徳神糧を貸していないのは、この判断の結果です。
貸株の解説記事の多くは「自動取得サービスを設定すれば優待は問題ない」と書いています。これは半分しか正しくありません。長期保有条件つきの優待を持っているなら、その銘柄は貸さないほうが安全です。
5年7ヶ月の実績:合計51,452円・月平均768円
実際の収入を年ごとに出します。数字は楽天証券の「貸株金利、配当金相当額受取り明細書」(年度別)から拾ったものです。
| 年 | 貸株金利 | 配当金相当額 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 4,362円 | 8,469円 | 12,831円 |
| 2022 | 9,395円 | 0円 | 9,395円 |
| 2023 | 6,701円 | 0円 | 6,701円 |
| 2024 | 10,979円 | 0円 | 10,979円 |
| 2025 | 8,520円 | 0円 | 8,520円 |
| 2026(7/27時点) | 3,026円 | 0円 | 3,026円 |
| 累計 | 42,983円 | 8,469円 | 51,452円 |
5年7ヶ月で51,452円、月平均にして768円です。「貸株 月500円」という見出しを以前書きましたが、実際は月700〜800円台が現実ラインでした。
2022年以降、配当金相当額はゼロが続いています。全銘柄に「株主優待・予想有配優先」を設定しているので、権利確定日には自動で返却され、配当は通常の配当として受け取れています。
2021年だけ「配当金相当額」が発生している件
2021年だけ8,469円の配当金相当額が発生しています。明細を開いたら、この8,469円はシグマ光機(7713)1銘柄から出ていました。2021年2月17日の入金です。
原因もはっきりしました。私が「株主優待・配当金自動取得サービス」を設定したのは2020年12月26日。シグマ光機は5月期決算で、この配当は11月基準日の中間配当にあたるため、権利確定の時点ではまだ設定を入れていなかったわけです。権利確定日に貸し出したままだった結果、本来の配当ではなく配当金相当額として雑所得で入金されました。
雑所得は他の所得と合算されるため、給与所得のある会社員は所得税率が上がる場合があります。配当金として源泉徴収20.315%で済むはずだった金額が、年収帯によっては不利になることがあるという落とし穴です。
設定を入れた2021年以降は、配当金相当額がゼロで推移しています。雑所得の管理がいらなくなった分、確定申告まわりの面倒さもなくなりました。
注目してほしいのは、たった1銘柄の設定漏れで8,469円という点です。同じ年の貸株金利は4,362円ですから、金利の2倍近い額が課税上不利な形で入金されたことになります。貸株を始めるなら、最初に自動取得サービスを設定してから貸し出す。この順番を守るだけで防げます。
NISAをメインで使っている人は、そもそも使えない
NISAで保有している株は、貸株サービスの対象外です。非課税口座の仕組み上、貸株の設定はできません。
特定口座や一般口座で保有する株のみが対象になります。
NISAをメインに運用していて特定口座の保有が少ない場合、「設定できる株がほとんどない」という状況になります。新NISAで月10万円積み立てている人にとっては、貸株は最初から検討対象外と考えていいです。
それでも27銘柄に貸株を設定している理由
「月800円なら誤差でしょ」と思われるかもしれません。私もそう思います。それでも27銘柄に設定し続けている理由は3つです。
理由1:設定は1回だけ・あとは自動
貸株の設定は証券会社の管理画面でチェックを入れるだけ、1銘柄あたり1〜2分で完了します。「株主優待・予想有配優先」も最初に1回設定すれば、以降は自動で返却・再貸出が回ります。
つまり初回の数十分の作業で、5年7ヶ月で51,452円が入ってきた計算です。手間あたりの効率はそれほど悪くありません。
証券会社にはこうした「一度設定すれば放置できる」制度がいくつかあります。楽天証券の家族プログラムもその一つですが、こちらは私が妻と登録したところ、手数料コースの設定によっては目玉の特典が1円も効かないと分かりました。設定系の制度は、自分の条件で本当に効くのかを一度確かめておくと無駄がありません。
理由2:特定口座の保有銘柄は売る予定がない
貸株に出している27銘柄は基本的に「長期保有・配当目的」で持っているものです。コナカ(7494)は738円×100株を2015年に旧NISAで購入し、ロールオーバー後に特定口座へ移管した塩漬け銘柄。残りも数年単位で持つ前提なので、貸し出してもポートフォリオへの影響はほぼゼロです。
理由3:優待・配当はそのまま受け取れる
「株主優待・予想有配優先」設定を入れていれば、優待カードも配当も従来通り届きます。コナカの優待・JPXの配当・ウエスコHDの配当などは、貸株を始める前と何も変わっていません。「金利が薄く乗る分だけ得」という感覚です。
貸株のデメリット:「やめたほうがいい」と言われる4つの理由
「貸株 やめたほうがいい」と言われる根拠を、独立した項目として一つずつ検証します。
① 証券会社の信用リスク:貸した株は投資者保護基金の対象外
貸株は、保有株を証券会社に貸し出す消費貸借契約です。貸し出し中は株の名義が証券会社に移るため、万一その証券会社が破綻した場合、貸株中の株式は投資者保護基金による補償の対象外になります。通常の保護預かりなら分別管理と投資者保護基金(1人あたり1,000万円まで)で守られる資産が、貸株中はその枠の外に出る、というのが構造上の最大のデメリットです。
各社とも担保の差し入れなどの保全策を講じていますが、リスクがゼロになるわけではありません。月数百円の金利は、この信用リスクを引き受けることへの対価だと理解しておくべきです。私が大手ネット証券で、かつ「売る予定のない長期保有銘柄だけ」を貸している理由もここにあります。
② 配当金相当額が「雑所得」になる問題
貸株の金利収入と配当金相当額は、楽天証券の取引ルールでは税区分上「雑所得」または「事業所得」とされています。会社員が保有株を貸しているだけなら通常は雑所得です。配当金として受け取れば源泉徴収20.315%で完結するところが、権利確定日に貸し出し中だと「配当金相当額」となり、給与所得との合算で総合課税されます。年収帯によっては配当金として受け取るより税率が高くなり、配当控除も使えません。年間の雑所得が20万円を超えると確定申告も必要になります。
私自身、2021年に配当金相当額8,469円を受け取っています。当時「株主優待・予想有配優先」を設定していない銘柄があったためで、本来もらえる配当が雑所得扱いになって課税面で不利になりました。それ以降は全銘柄を見直し、2022年からは配当金相当額ゼロを維持しています。
補足すると、配当金相当額は「配当」ではなく雑所得なので、配当控除も使えませんし、NISA口座の非課税メリットとも無関係です(そもそもNISA株は貸株不可)。さらに、外国株を貸株に出している場合は現地源泉税が引かれたうえで雑所得課税になることもあり、二重課税の調整(外国税額控除)が通常の配当より煩雑になります。私が貸し出しているのは国内株だけなのでこの論点には踏み込みませんが、「配当金相当額は配当より税務上めんどう」という理解で十分です。
ただし金利だけで年20万円を超えるには、相当な保有額(数千万円規模)が必要なので、一般的な会社員の貸株収入で確定申告が必要になることはまれです。
③ 長期保有・優待との相性問題:設定ミスは一発アウト
長期保有の優待株・配当株と貸株は、設定を間違えると最悪の組み合わせになります。「株主優待・予想有配優先」を入れ忘れた銘柄が権利確定日に貸し出し中だと、株主優待・配当の権利を失います。金利収入が年数百円〜数千円のときに、数千〜数万円相当の優待を逃すのは割に合いません。
さらに厄介なのが長期保有条件で、「株主優待・予想有配優先」を設定していても継続保有の判定までは守られません。詳しくは前述の貸していない17銘柄を参照してください。私が長期保有条件つきの優待銘柄を貸さないのは、この一点が理由です。
株主番号が変わるのは貸株だけではありません
私自身は、貸株とはまったく関係のないところでこの問題を踏みました。王子ホールディングス(3861)です。
2024年1月に1,000株を買い、NISA口座で保有しています。NISA口座なのでそもそも貸株には出せない銘柄です。王子ホールディングスの優待は3月末を基準日とするネピア商品のカタログギフトで、条件は継続保有半年以上。公式サイトはその定義をこう書いています。
基準日(毎年3月31日)において、株主名簿基準日(3月31日および前年9月30日)の当社株主名簿に当社株式1,000株以上の保有記録が同一株主番号で2回以上連続している場合
2024年3月末・9月末と保有を続けていたので、2025年6月の発送分から受け取れる計算でした。ところが届きませんでした。
心当たりは2024年9月の引っ越しです。同じページには、株主番号が変わる要因としてこう書かれています。
株主番号は婚姻・転居・相続・貸株サービス利用・証券会社変更などで変更される可能性があります
貸株と並んで「転居」が挙げられています。基準日をまたぐ時期に転居した結果、株主名簿上の連続記録が途切れたと考えるのが自然です。株は一度も売っていませんし、配当も2024年6月から欠かさず受け取っています。保有はまったく途切れていないのに、継続保有の判定だけが切れたわけです。翌年の2026年6月には問題なく届いたので、転居のタイミングだけがピンポイントで刺さった形になります。
そして重要なのは、気づいたときには手遅れだったという点です。優待が届かないことで初めて分かるので、その時点で判定はすでに切れています。事前に確認する手段がありません。
貸株もこれとまったく同じ構造です。楽天証券が「同一の株主番号であるという保証はございません」としか書けない以上、切れたかどうかは事後にしか分かりません。逆に言えば、長期保有条件つきの優待を持っているなら、気をつけるべきは貸株だけではないということでもあります。引っ越し・証券会社の変更・結婚による姓の変更も、同じリスクを持っています。
④ 金利はいつでも下がる
金利は証券会社の判断でいつでも変わります。今アジア航測(9233)が0.40%でも、来月には0.10%に戻っているかもしれません。「高金利のうちに増やそう」という運用は、金利前提では成立しません。
それでも使う価値があるケース
以下の条件に該当する場合に限り、貸株は一定の意味を持ちます。
- 特定口座で複数銘柄を長期保有している(売る予定がない)
- 各銘柄に「株主優待・予想有配優先」を設定できる
- 雑所得が年20万円を超えない範囲で運用できる
逆に言えば、NISA中心で特定口座の保有がほぼない人にとっては、検討する必要すらない選択肢です。
私自身はメインで楽天証券を使っていて、コナカ(7494)をはじめ特定口座の長期保有銘柄をここで貸株に出しています。貸株はあくまで「特定口座の保有があって、はじめて検討できるおまけ」です。これから口座を作る段階の人は、貸株の有無より手数料・取扱商品・NISAの使いやすさで選んでおけば十分です。口座選びそのものは楽天証券と松井証券の比較記事にまとめています。
まとめ:基本はやらなくていい・やるならついでに
27銘柄・5年7ヶ月で51,452円(月平均768円)、金利は27銘柄中24銘柄が0.10%。この実績を踏まえた判定表がこちらです。
| 貸株が向いている人 | 貸株が向いていない人 |
|---|---|
| 特定口座に、売る予定のない長期保有株が複数ある | NISAがメインで特定口座の保有がほとんどない(そもそも設定できない) |
| 全銘柄に「株主優待・予想有配優先」を設定できる | 設定を入れないまま貸し出してしまいそう |
| 長期保有条件つきの優待株は貸さない、と銘柄単位で判断できる | 優待の長期保有条件を気にせず一括で貸し出してしまう |
| 月数百円のおまけと割り切れる | 貸株金利を収入の柱として期待している |
| 貸株中は投資者保護基金の対象外だと理解したうえで貸せる | 保有資産を保護の枠外に置きたくない |
月800円の貸株金利を狙うより、固定費の見直しに30分使う方が月数千〜1万円単位で家計が改善します。固定費の削減は一度やれば毎月効いてくる改善です。
結論は冒頭に書いたとおりです。基本はやらなくていいです。ただし、特定口座に長期保有株が複数あって設定が苦にならないなら、「ついで」で入れておく価値はあります。
よくある質問(貸株のデメリット・確定申告)
貸株はなぜ「やめたほうがいい」と言われるのですか?
主な理由は3つです。証券会社に株を貸す仕組みなので破綻時に投資者保護基金の対象外になること、配当が「配当金相当額」という雑所得に変わって税務が不利になり得ること、優待・長期保有との相性が悪いこと。いずれも条件を満たせば管理できますが、満たせない人にとっては手間とリスクに見合わないため「やらなくていい」が無難な結論です。
貸株の確定申告は必要ですか?
貸株金利と配当金相当額は、税区分上「雑所得」または「事業所得」です(会社員の通常の利用では雑所得)。給与以外の所得(この雑所得を含む)が年20万円を超える会社員は確定申告が必要になります。ただし金利だけで20万円に届くには数千万円規模の保有が必要なので、一般的な会社員が貸株収入だけで申告義務を負うことはまれです。私の5年7ヶ月の累計も51,452円(月平均768円)で、申告ラインには遠く届きません。
貸株金利が低いのですが、上げる方法はありますか?
金利は証券会社が需要(その銘柄を借りたい投資家の多さ)を見て決めるもので、個人側で操作はできません。私の27銘柄も24銘柄が0.10%で、0.10%を超えたのはアジア航測(9233)0.40%・大和コンピューター(3816)0.25%・学情(2301)0.15%の3銘柄だけでした。「高金利狙いで銘柄を買う」のは順序が逆で、金利は来月には下がっているかもしれない前提で見るべきです。
NISAの株は貸株に出せますか?
出せません。貸株サービスの対象は特定口座・一般口座で保有する株だけです。NISAをメインに積み立てている人は、そもそも貸株に設定できる株がほとんどない状態になりがちで、検討対象外と考えて問題ありません。
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※本記事は2026年4月時点の情報をもとにしています。貸株サービスの詳細・金利水準・設定方法は各証券会社にご確認ください。投資は自己責任でお願いします。