30代の保険は、新しく入るより先に、いま払っているものを見直すほうが効果が大きい。これがこの記事の結論です。

私は保険業界に10年在籍したあとIT企業へ転職した30代で、FP2級を持っています。保険を売る営業の立場ではなく、業界の内側から商品と制度を見てきた立場です。このブログでは住友生命・かんぽ生命・日本生命・明治安田生命・オリックス生命・第一生命・朝日生命の積立系商品について、パンフレットに載る返戻率ではなく実質利回り(IRR)を自分で計算し、1本ずつ記事にしてきました。

この記事は、そこで見えてきた共通点を「30代は何を基準に判断すればいいか」という総論の形にまとめたものです。商品ごとの細かい数字は各記事に置いてあるので、気になる論点はそこへ進んでください。

この記事の要点

  • 30代は新規加入より「棚卸し」が先です
  • 医療保険の要否は、商品の良し悪しより先に貯蓄額と公的保障で決まります
  • 貯蓄型保険は「保障」と「貯蓄」を分けて比べると判断がつきやすくなります
  • 残す優先度が高いのは、扶養家族や住宅ローンがある場合の死亡保障です
  • 見直しは「安くすること」だけが目的ではありません(私自身は保険料が上がった見直しをしています)

30代の保険見直しは新規加入より先|結論を3行で

  • 保険は「入っているかどうか」ではなく「何にいくら払っているか」で判断します
  • 公的保障(高額療養費・傷病手当金・遺族年金)でカバーされる範囲に、民間保険を重ねて払っていないかを確認します
  • 削った分を貯蓄・投資に回す前提で考えると、残すべき保障が絞り込めます

業界に身を置いて見えてきた実感として、30代は勧められるまま特約を積み上げた結果、保障が重複した状態になりやすい層だと感じています。逆に言えば、見直しの余地が最も大きい年代でもあります。

保険見直しの判断基準|状況別に「残す・削る」を切り分ける

まず、自分がどの状況に近いかを確認してください。

状況医療保険死亡保障(収入保障保険)就業不能への備え
独身・貯蓄100万円以上優先度は低め必要性は低め貯蓄が薄いなら検討価値あり
独身・貯蓄100万円未満最低限のシンプル型で足りることが多い必要性は低め検討価値あり
既婚・子なし・共働き最低限のシンプル型少額、または不要と判断する人も多い検討価値あり
既婚・子あり/住宅ローンありシンプル型で十分なことが多い優先度が高い(必要保障額から逆算)検討価値あり

この表は一般的な考え方を整理したもので、実際の要否は貯蓄額・勤務先の福利厚生・健康状態・住宅ローンの団体信用生命保険の有無などで変わります。あくまで出発点として使ってください。

医療保険の見直し基準|30代は貯蓄額と高額療養費制度で判断する

医療保険の要否は、商品の中身を比べる前に、公的保障でどこまでカバーされるかを知るところから始まります。

高額療養費制度があるため、公的医療保険が使える治療であれば、ひと月あたりの自己負担には上限があります。年収約370万円〜約770万円の区分(会社員に多い区分です)では、上限額は「85,800円+(総医療費−286,000円)×1%」です(2026年8月診療分から適用されている額)。総医療費が100万円かかった場合でも、自己負担は約9万3,000円にとどまる計算になります(出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」/制度は改正が続いているため、利用前に最新の内容をご確認ください)。

さらに、会社員で健康保険に加入していれば、病気やケガで働けない期間は傷病手当金が支給されます。おおむね標準報酬日額の3分の2、通算1年6か月が上限という制度です。

つまり、貯蓄が100万円程度あれば、入院・手術による医療費の自己負担は貯蓄で吸収できる可能性が高い、という整理になります。この場合、医療保険の優先度は下がります。

ただし注意点が2つあります。

  1. 差額ベッド代・先進医療・食事代などは高額療養費の対象外です
  2. 生活防衛資金と医療費用の貯蓄は、別に考えておかないと計算が合いません

貯蓄が薄い場合や、貯蓄を取り崩すこと自体に不安が大きい場合は、入院・手術のみを対象にした月2,000〜3,000円程度のシンプルなプランで足りることが多い、というのが一般的な目安です。特約を積み上げて月8,000円以上になっているなら、まず内訳を確認する価値があります。

保障を薄くする代わりに保険料を抑える設計と、保障と貯蓄を一体にする設計の違いは、はなさく生命「はなさく定期」は得か損かの「掛け捨てと貯蓄型は、保険料の中身が違います」で分解しています。

貯蓄型保険の見直し基準|「保障」と「貯蓄」を分けて比べる

貯蓄型保険(終身保険・養老保険・学資保険・個人年金など)は、「払った分が戻ってくる」という説明で選ばれやすい商品です。

ただ、実際に主要商品の実質利回りをIRRで計算していくと、私の試算では年1%前後にとどまるものが目立ちました。返戻率が100%を超えていても、それは長い年数をかけた結果なので、年あたりの利回りに直すと印象がかなり変わります。

一方、長期の国際分散投資について過去の実績からよく用いられる想定リターンは年4〜7%程度です(過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません)。貯蓄部分だけを取り出して比べると、貯蓄型保険は分が悪いというのが、個別商品を数字で確認してきた私の見方です。

判断の材料になるのは次の3つです。

  • 保険証券の解約返戻金推移表(いま解約するといくら戻るか、何年後に払込総額を超えるか)
  • 残りの払込期間と、その間に払う総額
  • 保障部分を掛け捨てで確保した場合の保険料との差額

なお、解約は損得だけで決めるものではありません。健康状態によっては新しい保障に入り直せないことがあるため、保障をどう確保するかとセットで考える必要があります。判断の順序は積立保険は解約すべき?30代が「やめていい5つの条件」を具体数字で解説に、商品タイプ別の利回り比較も同じ記事の「積立保険6タイプの実利回りの目安」にまとめました。

金利環境の変化で予定利率が上がっている点も、判断に影響します。この論点は一時払い終身保険の予定利率2.25%引き上げは“買い時”か|元保険業界FPが見た41年ぶりの上げ幅で扱いました。

個人年金保険とiDeCoの優先順位|節税額を前提つきで比べる

「老後の備え」という同じ目的でも、税制上の扱いは制度によって差があります。

個人年金保険の場合、使えるのは個人年金保険料控除です。新制度では控除額の上限が所得税で年4万円、住民税で年2万8,000円です。所得税率10%の人であれば、節税額は年6,800円程度という計算になります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の場合、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。月2万円を拠出すると年24万円で、所得税率10%・住民税率10%を前提に置くと年約4万8,000円です(年収500万円の会社員で、各種控除後の課税所得が所得税率10%の区分に収まる場合を想定した概算です。家族構成や他の控除で変わります)。

拠出額の前提を揃えて比べると差が見えやすくなります。目的が「老後資金づくり」であれば、iDeCoを先に検討するのが合理的だと私は考えています。

なお、iDeCoの拠出限度額は2026年12月1日施行の改正で引き上げられ、企業年金がない会社員は月6.2万円になります(2027年1月の拠出分から適用)。私自身は企業型DCに加入しているためiDeCoは併用していませんが、企業年金がない方にとっては枠が広がる制度変更です。詳細はiDeCoは30代でいくら積める?2026年12月に上限6.2万円へ拡大・年収別の節税額をFP2級が試算に整理しました。

すでに個人年金保険に加入している場合は、解約返戻金の水準・残りの払込期間・今後の控除額を並べて、続けるか止めるかを判断することになります。勤務先の企業年金がある方は、企業年金の利回り1.68%時代へ|元本確保型のままでいいのか30代向けに解説もあわせて確認すると全体像がつかめます。

収入保障保険は残す側|必要保障額を遺族年金から逆算する

削る話が続きましたが、優先度が高いのは死亡保障のほうです。

扶養している家族がいる、または住宅ローンを抱えている場合、自分に万一のことがあったときの生活費を月額で受け取れる収入保障保険は、検討する価値が高い保障だと考えています。保険料の水準は年齢・保険期間・喫煙状況などで変わりますが、30代であれば月3,000〜5,000円程度から選択肢がある、というのが一般的な目安です。

ここで大事なのは、金額を勘で決めないことです。遺族年金や配偶者の収入を差し引いて、足りない分だけを民間保険で埋めるのが基本の考え方になります。逆算の手順は収入保障保険はいらない?遺族年金から逆算する必要保障額の求め方【FPが判定】にまとめました。

病気やケガで働けなくなるリスクは死亡とは別物なので、必要に応じて就業不能保障で分けて備える形になります。

火災保険・個人賠償の見直し|満期前に棚卸しした実体験

見直しの対象は生命保険だけではありません。ここは私自身の体験です。

私は賃貸住まいで、家財保険(少額短期保険)に入っていました。年間の保険料は3,610円です。契約内容を改めて読み直したところ、個人賠償責任の補償が借家人賠償と合算での上限になっていて、実質的にかなり手薄だと気づきました。

そこで2026年6月に乗り換えの手続きを済ませ、8月の満期に合わせて、賠償が別枠になっている火災保険へ切り替えました。個人賠償は1億円・示談交渉サービス付き、家財の補償も100万円から300万円に引き上げています。保険料は年6,000円になったので、支出は年2,390円増えています

見直しというと保険料を下げる話になりがちですが、私自身の一次体験は逆でした。安くすることが目的ではなく、必要な補償が足りているかを確かめることが目的で、その結果として増える場合もあれば減る場合もある、というだけです。そして、その確認をするきっかけになったのは「満期が近づいた」というタイミングでした。

なお、切り替えは先に新しい契約を確保してから旧契約を停止する順序で進めました。この順序にしないと、無保険の期間が生まれることがあります。契約内容の比較と判断の詳細は賃貸保険の個人賠償1,000万円は不足?合算上限に気づいて1億円へ見直した実体験に書いています。

ソルベンシー・マージン比率は「ESR」へ|保険会社の健全性の見方

残すと決めた保険は、何十年もその会社に預けることになります。その会社の健全性をどう見るかも、2026年3月31日から変わりました。

支払余力を示すソルベンシー・マージン比率は経済価値ベースの規制へ移行し、経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)という指標になりました。適格資本を所要資本で割った比率で、所要資本は「200年に1度程度のリスク」(原則99.5%の信頼水準)を考慮して計算されます。

変わったのは計算方法だけではありません。出てくる水準そのものが違います。

区分ESR(新規制)ソルベンシー・マージン比率(旧規制)
生保単体215%873%
損保単体203%750%

金融庁が公表している全社平均(2025年3月末時点、ESRはフィールドテストの結果)です。数字が大きく下がって見えますが、会社が弱くなったのではなく、ものさしが変わっただけです。金融庁はESRのほうが低く出る要因として、より厳格な信頼水準での評価、より広範なリスクのカバー、経済環境の変化への感応度の向上を挙げています。監督上の介入水準も、旧規制の「200%を下回った場合」から「ESRが100%を下回った場合」へ変わりました。旧基準と新基準の数値を並べて比べないようにしてください。

そのうえで、比率だけで健全性を判断できるものではありません。新しい規制はソルベンシー規制(第1の柱)・内部管理と監督上の検証(第2の柱)・情報開示(第3の柱)の3本立てで、金融庁自身も第1の柱だけではとらえきれないリスクが存在するとしています。第3の柱では、所要資本・適格資本、バランスシート、感応度分析、変動要因分析といった定量情報と計算前提などの定性情報が法定開示になり、比較可能性を確保するため定量情報には一定の様式が定められました。会社を見るなら、この開示を見るのが筋だと考えています。

ただし、確報値の提出期限は決算期終了後4か月以内で、2026年3月期分だけは7か月以内という経過措置があります。各社の開示時期はそろわないため、横並びで比較できる状態になるのはもう少し先です(出典: 金融庁「経済価値ベースのソルベンシー規制の概要」2026年7月)。

なお、この規制の対象は保険会社です。上で触れた家財保険のような少額短期保険業者は旧来のソルベンシー・マージン比率規制のままで、保険契約者保護機構の補償も受けられません。制度上の枠と確認したい点は賃貸保険の見直し体験にまとめています。

保険見直しの進め方|4ステップと注意点

  1. 保険証券を全部出します(紙・アプリ・勤務先の団体保険まで含めて全件)
  2. 上の表と照らして、いまの保障が自分の状況と合っているかを確認します
  3. 保障の空白期間をつくらない順序で進めます。一般には、先に新しい保障を確保してから既存契約を整理する順序が推奨されています
  4. 見直しで生じた差額の行き先を決めます

無料の保険相談窓口を使うのも選択肢のひとつです。ただし、こうした窓口の多くは保険会社から支払われる手数料で運営されているというビジネスモデル上の前提は知っておくと良いと思います。相談の前に「今ある契約の整理が目的です」と伝えておくと、話の軸がぶれにくくなります。

なお、対面で提案を受ける機会そのものは今後増える方向にあります。2026年8月11日の読売新聞の報道によると、明治安田生命は2030年度に保険料等収入で業界トップ水準になることを目指し、営業職員の増員に乗り出す方針です。同社は、2026年4月に政令指定都市など全国100か所以上へ設けた「戦略特区」で契約のシェアを高めるため、営業職員数を2026年度末までに前年度比5%増やす計画だと報じられています。採用の入口も、これまで中心だった営業職員の知人紹介から、他業界で営業経験を持つ人材の採用へ広げているとされています。ここは報道ベースの内容で、同社の公表資料で裏を取れた範囲ではありません。

大手が対面チャネルを再拡大する局面では、提案の質は上がっていくと思います。ただ、保険業界に10年いた立場から言えるのは、提案の質が上がることと、その提案が自分に必要かどうかは別の話だということです。声がかかった時期を見直しの開始時期にしてしまうと、比較の順序が相手側の商品ラインに引きずられます。見直しは相手のタイミングではなく、上の4ステップを自分のペースで踏むほうが結局は早く終わります。

具体的な手続きの順序や、解約に伴う不利益の説明は、契約している保険会社や代理店に確認してください。

保険見直しのモデルケース|一例で見る削減幅

業界全体の傾向として珍しくないのが、貯蓄型の終身保険・特約の多い医療保険・個人年金の3本立てで月1万円以上になっているパターンです。以下は私自身の契約ではなく、あくまで一例としてのモデルケースです。

見直し前の例

  • 終身保険(貯蓄型):月8,000円
  • 医療保険(特約多数):月5,000円
  • 個人年金:月2,000円

見直し後の例

  • 収入保障保険:月3,000円
  • 医療保険:シンプル型に変更、または貯蓄が十分なら見送り
  • 個人年金:iDeCoへ切り替え
保険見直し前後の月額保険料の例(円)
¥15000
見直し前
¥3000
見直し後
モデルケース。月12,000円の削減=年14.4万円を投資に回した場合の試算です

この例では月12,000円、年間144,000円の差になります。仮にこの差額を年5%の利回りで20年間積み立てたとすると、約490万円という計算です(元本288万円+運用益約202万円)。一定の利回りを置いた単純な試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

保険見直しで浮いたお金の置き場所|NISA・iDeCoへ

削って終わりにすると、浮いた分は生活費に溶けます。行き先を先に決めておくほうが確実です。

順序としては、まず生活防衛資金(生活費の6か月分が一つの目安です)を現金で確保し、その先をNISAや iDeCo などの非課税制度に回す、という組み立てが分かりやすいと思います。医療保険を薄くする判断をした場合は、その分の現金クッションが前提になるので、投資より先に現金を積む形になります。

差額の受け皿を先に用意しておく
保険料の見直しで生じた差額をNISAやiDeCoに回すなら、証券口座が入口になります。私自身は2015年から楽天証券をメインに使っています。口座開設は無料で、開設したからといって積立を始める義務はありません。
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始め方は新NISAの始め方|30代初心者が最初にやること5ステップ【投資歴10年超】に、保険以外の固定費も含めた優先順位は固定費を下げる方法|まず見直すべき3つと優先順位【30代会社員が解説】にまとめています。

まとめ|30代の保険見直しは「削る」から始める

  • 新しく入る前に、いまの契約を全部出して棚卸しします
  • 医療保険は、高額療養費と傷病手当金でカバーされる範囲を確認してから要否を判断します
  • 貯蓄型保険は「保障」と「貯蓄」を分けて比べると判断がつきます
  • 扶養家族や住宅ローンがあるなら、死亡保障は必要保障額から逆算して確保します
  • 火災保険・個人賠償のように「増やす」判断になる見直しもあります
  • 差額の行き先を先に決めておくと、見直しの効果が家計に残ります

保険は一度入って終わりではなく、更新や住まいの変化のたびに棚卸しするものだと考えています。まずは保険証券を1枚出して、この記事の表と照らし合わせるところから始めてみてください。


保険の個別論点マップ|商品・制度別に深掘りした記事

この記事は総論です。個別の数字はそれぞれの記事にあります。

見直しの判断軸

商品・制度を数字で検証した記事


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本記事は、特定の保険商品への加入や解約を勧誘するものではありません。制度の内容や税率は執筆時点(2026年8月)のもので、今後変更される可能性があります。保障内容や手続きは契約中の保険会社・代理店に、税務の取り扱いは所轄の税務署にご確認ください。投資に関する記述は情報提供を目的としたもので、最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

HIKO

HIKO

保険業界10年勤務・30代IT会社員ブロガー

保険業界10年勤務後、IT企業に転職。生命保険・損害保険の「売り手側の論理」を知った上で、本当に必要な家計管理・投資の情報を発信。NISAや固定費削減の実体験をもとに、30代サラリーマンのお金の不安を減らすことを目指しています。

保険業界10年 IT転職 NISA実践中 固定費削減経験あり