結論を先に言います。 一時払い終身保険の予定利率2.25%は「増やす商品」としてはおすすめしません。これは死亡保障と相続・資金の置き場所のための商品で、純粋に増やすならNISAが先です。一方、預貯金がすでに潤沢で、相続対策や確実に遺す手段がほしい人には役割があります。この記事は、退職金・相続の置き場所を考えている50〜60代の方、そして親世代の相談を受ける立場の30代に向けて、予定利率2.25%を実質利回り(IRR)の試算で冷静に見ていきます。
保険業界に10年、その後IT企業に転職したFP2級・投資歴10年超のHIKOが書いています。
2026年8月12日時点の予定利率(円建て一時払終身保険):住友生命 2.25%/朝日生命 1.75%/明治安田生命 15年プラン 2.42%・30年プラン 2.53%。このうち明治安田生命の2つは「契約日が2026年8月1日〜8月15日」に適用される利率で、8月16日には別の利率に入れ替わります(同社は毎月2回、1日と16日に設定し直す方式です)。適用される契約日の条件と、会社ごとに利率の決め方が違って単純な横比較ができない理由は、後半の一覧表と改定履歴で詳しく見ていきます。
※本記事は特定の保険商品の加入・解約を勧めるものではありません。投資・保険の最終判断はご自身の責任で行ってください。記事中のIRR試算は一般的な前提を置いた試算例で、特定商品の確定値ではありません。
結論:予定利率の引き上げは事実だが「増やす目的」ならNISAが先
先に私の見方をまとめます。
- 予定利率が上がったのは事実で、契約者にとっては条件が良くなる方向の話です
- ただし一時払い終身保険は「お金を増やす商品」ではなく、「死亡保障」と「まとまった資金の置き場所・相続対策」のための商品です
- 純粋に資産を増やしたいなら、まず使うべき枠はNISA(と、会社員なら企業型DC・iDeCo)です
- 予定利率2.25%は「契約者が手にする実質利回り」とイコールではありません。保障や手数料のコストが乗るため、実際の利回りはそれより低くなります
「41年ぶり」という言葉に押されて慌てる必要はない、というのが私の立場です。順番に説明します。
報道された内容を整理する
まず、事実を簡単に整理します。以下の数値はすべて住友生命の公表資料(「一時払終身保険の保険料率の改定について」2026年6月25日)が出典です。「41年ぶり」「28年ぶり」も報道の見立てではなく、同リリース末尾の「よくあるご質問」に書かれています(「1998年7月1日以来、28年ぶりの水準となります」「1985年4月2日以来、およそ41年ぶりの引上幅となります」)。2026年8月12日に同リリースを再確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社 | 住友生命 |
| 対象 | 一時払い終身保険 |
| 予定利率 | 1.75% → 2.25% |
| 上げ幅 | 0.5%(41年ぶりの大きさ) |
| 2.25%という水準 | 1998年以来、28年ぶり |
| 適用 | 2026年7月1日の契約分から |
| 背景 | 日銀の利上げなどによる国内金利の上昇 |
住友生命の公表資料には、保険料がどれくらい安くなるかの契約例も載っています。契約年齢60歳・保険金額1,000万円のケースで、男性は7,313,100円から6,631,900円へ(△9.3%)、女性は6,816,200円から6,051,500円へ(△11.2%)です。男性なら68万円ほど安くなる計算になります。
この改定は「スミセイのかんたん告知終身保険90」も同じく1.75%→2.25%で、契約年齢80歳・保険金額1,000万円なら男性が8,903,900円から8,405,500円へ(△5.6%)となっています。
予定利率が上がると、同じ保険金額を用意するために必要な保険料は下がります。だから「保険料が安くなる=条件が良くなる」というのは、その通りです。
この引き上げは2026年7月に実施済みで、動いているのは住友生命だけではありません。明治安田生命も2026年8月に平準払いの積立保険の予定利率を1.4%から1.6%へ引き上げており(読売新聞・2026年8月8日)、各社が同じ方向に動いている局面です。
一時払い終身保険の予定利率|2026年8月時点の各社一覧
円建ての一時払終身保険について、各社が公表している予定利率を並べると次のようになります。
| 会社・商品 | 予定利率 | 適用される契約日 | 次に変わるタイミング |
|---|---|---|---|
| 住友生命 終身保険(一時払い) | 2.25% | 2026年7月1日以降 | 次の改定リリースまで据え置き |
| 住友生命 スミセイのかんたん告知終身保険90 | 2.25% | 2026年7月1日以降 | 次の改定リリースまで据え置き |
| 朝日生命 あさひの一時払終身 | 1.75% | 2026年1月2日以降 | 次の改定リリースまで据え置き |
| 明治安田生命 一時払終身保険(15年プラン) | 2.42% | 2026年8月1日〜8月15日 | 2026年8月16日 |
| 明治安田生命 一時払終身保険(30年プラン) | 2.53% | 2026年8月1日〜8月15日 | 2026年8月16日 |
出典:住友生命「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2026年6月25日リリース)、朝日生命 ニュースリリース一覧(2025年12月11日リリース)、明治安田生命「円貨建一時払商品に適用される予定利率」。数値は2026年8月12日に各社の公表ページで確認したものです。予定利率は改定されるため、契約を検討する際は必ず各社の最新ページをご確認ください。
ここで大事な注意点があります。同じ「一時払終身保険」でも、予定利率の決め方が会社によって違うということです。住友生命や朝日生命は改定のたびにニュースリリースで公表し、次の改定まで同じ利率が続きます。一方、明治安田生命の円貨建一時払商品は毎月2回(1日と16日)予定利率を設定し直す方式で、契約日が半月ずれるだけで利率が変わります。
しかも明治安田生命の場合、契約後もその利率がずっと続くわけではありません。同社のページには、15年プランなら契約日から15年ごと、30年プランなら30年ごとの「予定利率計算基準日」に利率を設定し直すと書かれています(最低保証予定利率は0.25%)。利率の決め方も公表されていて、15年プランは残存期間10年と20年の国債流通利回りの平均値、30年プランは残存期間20年の国債流通利回りに、所定の調整率を加減算して設定するとされています。表の2.42%・2.53%は「2026年8月前半に契約した場合の、最初の期間の利率」だと読んでください。
つまり、この表の数字を左から右に見比べて「明治安田が一番高いから有利」と判断することはできません。利率が高く見える商品は、そのぶん利率が動く前提の設計になっていたり、契約できる期間や条件が違ったりします。比べるなら、同じ日に、同じ年齢・同じ保険金額で、実際の設計書を並べる必要があります。
そして次の章で見るとおり、この表の数字はどれも「契約者が手にする利回り」そのものではありません。
予定利率の推移|住友生命の改定履歴で見る上昇ペース
「41年ぶりの上げ幅」という見出しだけでは、どれくらいのスピードで上がってきたのかが見えません。住友生命の「終身保険(一時払い)」について、公表されている改定履歴をたどると、こう動いています。
| 適用開始 | 予定利率 | 改定幅 | 出典(住友生命リリース) |
|---|---|---|---|
| 2023年10月1日 | 0.75% → 0.90% | +0.15% | 2023年9月28日 |
| 2023年11月1日 | 0.90% → 1.00% | +0.10% | 2023年10月30日 |
| 2024年6月1日 | 1.00% → 1.10% | +0.10% | 2024年5月30日 |
| 2024年8月1日 | 1.10% → 1.25% | +0.15% | 2024年7月30日 |
| 2024年12月1日 | 1.25% → 1.30% | +0.05% | 2024年11月22日 |
| 2025年7月1日 | 1.30% → 1.75% | +0.45% | 2025年6月30日 |
| 2026年7月1日 | 1.75% → 2.25% | +0.50% | 2026年6月25日 |
出典欄のリンクは、いずれも住友生命のニュースリリース(PDF)です。2026年8月12日に全件を開いて予定利率の数値を確認しました。過去分は同社のニュース一覧から年度をさかのぼると辿れます。
2023年11月に1.00%へ上がってから、2年8か月で2.25%まで、1.25ポイント上がった計算です。目を引くのは1回あたりの上げ幅が大きくなっている点で、2024年中は0.05〜0.15%刻みだった改定が、2025年7月に0.45%、2026年7月に0.50%と一段跳ねています。
朝日生命の「あさひの一時払終身」も同じ方向で、2025年7月2日契約分から1.00%→1.25%、2026年1月2日契約分から1.25%→1.75%と、半年間隔で2回引き上げています。
この推移から、私が読み取っていることを2つ書きます。
1つ目は、改定は年に1〜2回のペースで起きているということです。今の水準は「たまたま今だけ高い」のではなく、金利上昇局面が続くあいだは動き続ける数字だと考えたほうが自然です。裏を返せば、「今月中に契約しないと損」と急ぐ理由も、そのぶん薄いということになります。銀行や保険の窓口で「今が過去最高水準です」と言われたときに、この表を思い出してもらえればと思います。
2つ目は、予定利率が1.25ポイント上がっても、契約者の実質利回りが同じだけ上がるわけではないということです。予定利率から死亡保障のコストと経費が引かれる構造は、利率が上がっても変わりません。次の章で、その差を数字で見ていきます。
ただ、ここで一度立ち止まりたいのです。この商品は、そもそも何のための商品なのでしょうか。
そもそも一時払い終身保険とは|「増やす」より「遺す・置く」商品
一時払い終身保険は、契約時に保険料をまとめて一括で支払う死亡保険です。月払いや年払いではなく、最初に何百万円〜という単位でドンと払い込みます。
特徴を整理すると、こうなります。
- 死亡保障が一生涯続く:被保険者が亡くなったとき、保険金が支払われます
- 払った保険料より保険金が大きくなる設計:例の60歳男性なら、約663万円を払って1,000万円の保障を確保するイメージです
- 解約返戻金が時間とともに増える:据え置くほど返戻金が払込額に近づき、やがて上回っていきます
つまりこの商品は、「お金を増やすこと」よりも、まとまった資金に死亡保障という形を与えて、確実に遺す・置いておくことに主眼があります。実際、相続対策(生命保険の非課税枠の活用)や、退職金など使う予定のないまとまった資金の置き場所として語られることが多い商品です。
ここが、NISAやインデックス投資と決定的に違うところです。NISAは「増やす」ための枠、一時払い終身保険は「遺す・守る」ための器、と役割が違います。
一時払い終身保険とNISAの比較表|目的・元本・利回り・流動性・相続
「どちらが得か」ではなく「役割が違う」ことが伝わるように、5つの軸で並べてみます。
| 比較軸 | 一時払い終身保険 | NISA(インデックス投資) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 死亡保障・遺す・資金の置き場所 | 資産を増やす |
| 元本の安全性 | 据え置けば元本確保に近い(早期解約は元本割れ) | 元本保証なし(値動きする) |
| 期待できる収益 | 低め(予定利率より下。後述の試算で年1%前後の例) | 過去実績ベースで年3〜7%想定(将来は不確実) |
| 流動性(引き出しやすさ) | 低い(早期解約は元本割れ・原則寝かせる前提) | 高い(いつでも売却・引き出し可能) |
| 相続対策 | 生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)が使える | 非課税枠の対象外(通常の相続財産) |
| 向いている人 | 預貯金が潤沢で遺す・守る目的の人 | これから増やしたい現役世代 |
NISAは値動きを受け入れて増やす器、一時払い終身保険は値動きを抑えて遺す・守る器です。期待収益・流動性ではNISAが上ですが、相続の非課税枠は保険ならではの強みです。優劣ではなく目的で選ぶ、というのが結論になります。
予定利率2.25%=あなたの利回り、ではない|IRRの試算例で見る
ここが一番の注意点であり、第三者からも「ここを数字で見せてほしい」と指摘された核心部分です。
「予定利率2.25%」と聞くと、預けたお金が年2.25%で増えていくように感じます。でも、予定利率は保険会社があらかじめ見込む運用収益の分だけ保険料を割り引くための率であって、契約者が実際に受け取る利回り(実質利回り・IRR)とは別物です。一時払い終身保険には、死亡保障というコストと保険会社の経費(付加保険料)が乗っているからです。
そこで、報道の数字(約663万円払って保険金1,000万円)を起点に、実質利回り(IRR)がどう見えるかを試算してみます。
重要な前提です。 以下は私が一般的な前提を置いて計算した試算例であり、住友生命など特定商品の確定した解約返戻金推移ではありません。解約時期ごとの返戻率(100%・110%・120%・130%)は、説明のために私が置いた仮定値です。実際の返戻金は商品・契約年齢・経過年数で異なるため、必ず契約時の設計書で確認してください。前提は「一時払い663万円・保険金1,000万円・追加の保険料なし」とします。
まず、生きていて途中で解約する場合の実質利回り(IRR)の試算です。
| 解約時の返戻率(仮定) | 受取額 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
|---|---|---|---|---|
| 100%(払込と同額) | 663万円 | 年0.00% | 年0.00% | 年0.00% |
| 110% | 約729万円 | 年0.96% | 年0.48% | 年0.32% |
| 120% | 約796万円 | 年1.84% | 年0.92% | 年0.61% |
| 130% | 約862万円 | 年2.66% | 年1.32% | 年0.88% |
返戻率が育っても、年数で割り戻すと実質利回りは年1%前後にとどまるケースが多いことが分かります。予定利率2.25%という見出しの数字と、契約者が手にする利回りは別物だということです。これは私が過去に検証したオリックス生命「エンキャン」(返戻率139.5%でも実利回り年1.34%)や、明治安田の積立保険(予定利率1.6%でも実利回り年1%台)と同じ構造です。
次に、死亡して保険金1,000万円を受け取る場合の試算です。
| 受取 | 受取額 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
|---|---|---|---|---|
| 死亡保険金 | 1,000万円 | 年4.20% | 年2.08% | 年1.38% |
「663万円が1,000万円になるなら年率は高いのでは」と思うかもしれません。確かに10年で亡くなれば年4.2%相当に見えます。ただ、これは「亡くなる」という条件が満たされた場合の数字です。長生きするほど年数で割り戻されてIRRは下がり、30年生きれば年1.38%まで落ちます。そして長生きして解約すれば、上の表のとおり年1%前後に収れんしていきます。
ここから見えるのは、単純な「663万円払って1,000万円だから337万円増える」という話ではないということです。差額の337万円は「いつ亡くなるか分からない死亡保障」というコストの裏返しで、保障コストがある分だけ生存時の実質利回りは予定利率2.25%より押し下げられます。これは商品の欠陥ではなく、保険という仕組みの当然の構造です。増やす道具ではなく、保障と置き場所の道具だと割り切る理由はここにあります。
なぜ今、予定利率が上がったのか|金利上昇局面の話
ここは投資家目線で補足したい部分です。
予定利率は、保険会社が「契約者から預かったお金をこれくらいの利回りで運用できる見込みだから、その分だけ保険料を割り引きます」という前提の利率です。保険会社の運用先の中心は国債などの債券なので、国内金利が上がれば、予定利率も上げやすくなります。
近年は日銀が利上げに動き、長期金利も上昇してきました。今回の「41年ぶりの上げ幅」は、その金利上昇を保険商品の側が反映した動き、と理解すると腑に落ちます。明治安田生命が積立保険の予定利率を引き上げた件など、ここ最近は各社が同じ方向に動いています。
ここで投資家として一つ言いたいのは、金利が上がる局面というのは、保険だけでなく、個人向け国債や債券、定期預金など他の「増やし方」の条件も良くなっているということです。予定利率2.25%だけを単独で見て「お得になった」と判断するのではなく、同じ局面で他の選択肢の条件も上がっていることをセットで考えたいところです。
数字を並べると、この論点はかなりはっきりします。
| 置き場所 | 利率・利回り | 性質 |
|---|---|---|
| 一時払い終身保険(予定利率2.25%) | 前章の試算例では実質利回り年1%前後 | 死亡保障のコストと経費が引かれたあとの数字。早期解約は元本割れ |
| 個人向け国債 変動10年(第197回・2026年8月募集) | 年1.87%(税引前) | 国が買い取るため中途換金でも元本割れなし。半年ごとに利率が見直される |
| 個人向け国債 固定5年(第185回・同) | 年2.06%(税引前) | 満期まで利率が変わらない |
国債の利率は財務省「現在募集中の個人向け国債」で2026年8月12日に確認しました(募集期間は令和8年8月6日〜31日)。発行後1年経過すればいつでも中途換金でき、そのとき直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた額が差し引かれます。
つまり、「予定利率2.25%」という見出しの数字と、実際に手元に残る利回りを比べると、元本割れしない国債のほうが上に来る場面があるということです。ただし国債には死亡保障も相続の非課税枠もありませんし、保険の満期差益や死亡保険金には国債の利子とは違う税の扱いがあります。税引前・税引後をそろえずに並べても意味がないので、ここは「同じ局面で選択肢が増えている」という確認にとどめます。
私(HIKO)はどう考えるか
私自身は、保険と投資を分けて考える派です。
自分のお金は、増やす部分はNISAと企業型DCに寄せています。会社の企業型DCは外国株インデックス中心で運用していて、評価額は約114万円、含み益は20万円ほどになりました。NISAは夫婦で積立を続けています。「増やす」ための器は、低コストのインデックス投資で十分だと考えているからです。
一方で、死亡保障は保障として別に確保する、という整理です。増やす機能と保障する機能を一つの商品に詰め込むと、コストの内訳が見えにくくなり、「自分が今いくらの利回りで・いくらの保障に・いくら払っているのか」が分からなくなりがちです。
保険業界に10年いて感じていたのは、貯蓄性保険は「強制的に積み立てられる」「途中で引き出しにくいから貯まる」という行動面のメリットが確かにある、ということでした。意志の力で投資を続けられない人にとって、半強制的に貯まる仕組みは価値があります。ここは否定しません。
ただ、私自身はその強制力よりも、コストの透明さと流動性(必要なときに引き出せること)を優先しました。だからNISA中心の組み立てにしています。これはあくまで私の選択で、正解は人それぞれです。
一時払い終身保険を「買ってもいい人」の具体的な条件
向く・向かないを、より具体的な条件で示します。次のような状況に当てはまる人ほど、一時払い終身保険が選択肢になり得ます。
買ってもいい可能性が高い人(目安)
- 預貯金が3,000万円以上など、生活防衛資金と当面の生活費を十分に確保したうえで、なお使う予定のないまとまった資金がある人
- 遺したい相続人がいて、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)をまだ使っていない人
- NISA・iDeCo・企業型DCなど、増やすための非課税枠をすでに活用済みの人
- そのお金を10年以上、できれば一生使う予定がなく、寝かせておける人
- 値動きのある投資が性格的に向かず、確定した受け取り・遺し方を重視する人
買わないほうがいい可能性が高い人
- 主目的が「資産を増やすこと」の人(→ まずNISA・企業型DC・iDeCoの枠を使うほうが合理的)
- まとまった資金を長期間動かせなくなるのが困る人(早期解約は元本割れの可能性)
- 30代など、これから資産形成を始める段階で、一時払いの原資をまだ作っている途中の世代
- 生活防衛資金がまだ十分でない人
ポイントは、増やす枠を使い切ったあとの、余ったまとまった資金の置き場所として検討する順番だということです。最初の一手ではありません。
30代がこのニュースを知っておく意味|親の退職金・相続の相談に備える
ここまで読んで、「自分は30代で一時払いの原資なんてない」と感じた方も多いと思います。その感覚は正しいです。
ただ、このニュースが30代に無関係かというと、そうではありません。親世代が退職金や相続の相談を持ちかけてくる場面が、これから増えてくるからです。「銀行の窓口で一時払いの保険を勧められたんだけど、どう思う?」と親に聞かれたとき、予定利率と実質利回りは別物だということ、増やす目的ならNISA、遺す目的なら保険という役割の違いを知っているかどうかで、答えられることがまったく変わります。
退職金のまとまったお金は、金融機関にとって格好の提案対象です。だからこそ、子世代が「予定利率2.25%=年2.25%増えるわけではない」という当たり前の前提を押さえておくと、家族のお金を守る側に回れます。自分が契約者になる話としてではなく、相談を受ける立場の備えとして読んでおく価値があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 一時払い終身保険の予定利率は、今いくらですか? A. 2026年8月12日時点で、住友生命の「終身保険(一時払い)」が2.25%(2026年7月1日以降の契約)、朝日生命の「あさひの一時払終身」が1.75%(2026年1月2日以降の契約)です。明治安田生命の円貨建一時払商品は毎月2回(1日と16日)利率を設定し直す方式で、契約日が2026年8月1日〜8月15日なら一時払終身保険が15年プラン2.42%・30年プラン2.53%となっています。明治安田生命の数値は8月16日には入れ替わります。 決め方が違うため単純な横比較はできません。最新値は各社の公表ページで必ず確認してください。
Q. 予定利率が上がったなら、7月1日を待ってから入ったほうが得ですか? A. 予定利率が上がる方向なら、引き上げ後の条件のほうが契約者には有利になりやすいです。ただし「入ること自体が自分に必要か」が先です。増やす目的なら、入る前にNISA・企業型DC・iDeCoの枠を使い切っているかを確認したいところです。
Q. 予定利率2.25%なら、年2.25%で増えるということですか? A. いいえ。予定利率は保険会社が見込む運用収益の分だけ保険料を割り引くための率で、契約者が受け取る実質利回りとは別です。死亡保障や経費のコストが差し引かれるため、解約返戻金ベースの利回りはそれより低くなるのが一般的です。本記事の試算例では年1%前後にとどまるケースが多くなりました。
Q. NISAとどちらがいいですか? A. 目的が違うので「どちらが上」とは言えません。増やすのがNISA、遺す・置くのが一時払い終身保険です。資産を増やしたいだけならNISAが先、相続対策や保障の確保が目的なら一時払い終身保険にも役割があります。
Q. 同じ「安全に置く」なら、定期預金や個人向け国債とどう違いますか? A. 一時払い終身保険には死亡保障と相続の非課税枠という保険ならではの機能があります。一方、純粋に元本を守って置くだけなら、流動性が高く元本割れしない個人向け国債(変動10年)や定期預金のほうがシンプルです。2026年8月募集の変動10年(第197回)は年1.87%(税引前・財務省の公表値)で、本記事の試算例で見た保険の実質利回り年1%前後を上回ります。金利上昇局面では、これらの条件も上がっている点を合わせて比べてください。
Q. 途中で解約したらどうなりますか? A. 一時払いでも、早い段階で解約すると解約返戻金が払込額を下回り、元本割れする可能性があります。当面動かさないお金で考えるのが前提です。
Q. ニュースで見かける「予定利率」は、どれも同じものを指していますか? A. いいえ。対象の違うものが混ざっています。たとえば2026年8月の日本経済新聞の報道では、明治安田生命が団体年金の配当の下限を引き上げ、利回りを1.7%以上にすると伝えられました。これは企業が従業員のために積み立てる企業年金(確定給付企業年金)向けの数字で、個人が契約する一時払い終身保険の予定利率とは対象も仕組みも別のものです。この記事で扱っているのは個人向けの数字です。報道の数字を自分の契約と比べるときは、まず「誰に向けた利率か」を確認してください。
Q. 予定利率はこの先もっと上がりますか? A. 金利動向次第なので断定はできません。各社の予定利率は国内金利を反映して動くため、金利が上がればさらに引き上げの余地はありますが、将来は不確実です。実際の数字は契約時点の設計書で必ず確認してください。
まとめ:見出しの「41年ぶり」より、自分の目的で決める
- 住友生命が一時払い終身保険の予定利率を1.75%→2.25%へ引き上げた(上げ幅0.5%は41年ぶり、2026年7月1日契約分から実施済み)
- 改定は年1〜2回のペースで続いている。住友生命は2023年11月の1.00%から2年8か月で1.25ポイント上げており、「今だけ」の水準ではない
- 予定利率の引き上げは契約者にとって条件が良くなる方向の話で、背景には日銀の利上げなどによる国内金利の上昇がある
- ただし一時払い終身保険は「増やす商品」ではなく「死亡保障+資金の置き場所・相続対策」の商品
- 予定利率2.25%は契約者の実質利回りとイコールではない。試算例では生存・解約時の実質利回りは年1%前後にとどまるケースが多く、保障コストが利回りを押し下げる
- 増やすのが目的なら、まずNISA・企業型DC・iDeCoの枠を優先する。一時払い終身保険は「増やす枠を使い切ったあと、まとまった資金がある人の選択肢」
「41年ぶり」という言葉は確かにインパクトがありますが、商品の役割は引き上げ前後で変わりません。ニュースの大きさに引っ張られず、「自分の目的は増やすことなのか、遺す・守ることなのか」で判断するのが、いちばん後悔の少ない選び方だと思います。
最後にもう一度。本記事は特定の保険商品の加入・解約を勧めるものではありません。記事中のIRR試算は一般的な前提を置いた試算例で、特定商品の確定値ではありません。保険も投資も、元本割れリスクや将来リターンの不確実性を伴います。最終判断は、ご自身の保障ニーズ・家計・最新の設計書や目論見書を確認のうえ、必要に応じて中立的なFP等に相談して行ってください。
非課税枠を使うには証券口座が要ります。まだ口座を持っていない場合は、先にここだけ済ませておくと、目的が「増やす」だと固まったときにすぐ動けます。
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