投資歴11年・FP2級保持のHIKOです。年収300万円台からのスタートで、失敗を重ねながら資産形成を続けています。20代のころは「積立保険に入ることが資産形成になる」漠然と思い込んでいた時期があり、その思い込みを解くのにずいぶん時間がかかりました。今回は「予定利率が上がった=いい商品」という報道をそのまま信じる前に確認してほしいことを、実際のプレスリリースデータで整理します。
この記事の結論を先に言います。住友生命Chakin(チャキン)に月1万円×5年払い込んだ場合、10年後の受取額はプレスリリースの実数値で656,395円です。60万円払って56,395円の増加——年換算で約5,600円です。実質利回り(IRR)は年率約1.2%になります。
IRR(内部収益率)とは、投資した元本に対して毎年どれだけのリターンが得られるかを示す利率で、時間の概念を組み込んだ利回り指標です。返戻率のように「総額の増加割合」を見るのではなく、「いつ払ってどれだけ戻るか」というキャッシュフローの時間軸まで含めて利回りを算出します。
この1.2%が高いか低いかは、比較対象次第です。同リスク帯の国債よりはやや上回りますが、NISAの非課税枠を使わずにこの商品を選んだ場合、税制メリットの差だけで10年間に数十万円の機会損失になる可能性があります。この記事では、まずChakinの実態をプレスリリースのデータで確認し、その上で「何を先に選ぶべきか」を整理します。試算はすべて条件付きの参考値であり、将来の運用結果を保証するものではありません。
出典:住友生命プレスリリース(2025年4月28日) https://www.sumitomolife.co.jp/news/news_file/file/260428.pdf
このプレスリリースをもとに、住友生命が2026年5月から提供する平準払い積立保険「Chakin(チャキン)」の中身を検証します。
「予定利率1.5%」の何が問題なのか
住友生命のプレスリリース(2025年4月28日)によると、平準払い積立保険「Chakin」の予定利率を2026年5月から現行の1.1%→1.5%に引き上げます。払込期間5年・保険期間10年という設計です。
「予定利率が上がった=加入者に有利」という読み方は、半分だけ正しいです。予定利率が高ければ、同じ保険料でも受け取れる満期金は増えます。ただし、予定利率はそのまま運用利回りにはなりません。
保険には保険会社の運営コスト・代理店手数料・死亡保障コストが上乗せされており、その分が差し引かれた結果、実質利回りは予定利率より低くなります。具体的な数字で確認します。
試算:月1万円・5年払い込みの実質利回り(プレスリリース実数値)
👉 結論:実質利回りは年率約1.2%(予定利率1.5%より0.3ポイント低い)
前提条件(住友生命プレスリリース・2026年4月28日)
- 月払い保険料:10,000円
- 払込期間:60ヶ月(5年)
- 総払込額:600,000円
- 保険期間:10年
- 満期受取額:656,395円
- 返戻率:109.3%
- 予定利率:1.50%
以下の数値は住友生命プレスリリース(2026年4月28日)に基づく実数値です。IRR(内部収益率)は払込キャッシュフローと満期受取額から算出しています。
IRR(内部収益率)の計算
月1万円を60ヶ月かけて払い込み、120ヶ月後(10年後)に656,395円を受け取るキャッシュフローで内部収益率を計算すると、月次約0.1%・年率約1.2%になります(計算式:月次NPV=0になるrを求めると r≈0.001、年率換算で(1.001)^12−1≈1.2%)。
| 項目 | 数値(プレスリリース実データ) |
|---|---|
| 総払込額 | 600,000円 |
| 満期受取額 | 656,395円 |
| 差引受取額 | 56,395円 |
| 返戻率 | 109.3% |
| 実質利回り(IRR・年率) | 約1.2% |
| 予定利率 | 1.5% |
(10年間で約5.6万円の増加。年換算で約5,600円です)
予定利率1.5%と実質利回り約1.2%の間には、0.3ポイントのギャップがあります。このギャップが、保険コストの実態です。
返戻率109.3%という数字は確かに魅力的に見えます。ただし、これは「600,000円が10年後に656,395円になる」という意味です。年率換算で1.2%という数字がどういう水準かは、後の比較表で確認してください。
解約返戻金の推移:途中解約した場合はどうなるか
👉 結論:初年度から元本超えだが、5年解約のIRRは約0.84%・満期10年で1.2%に改善
Chakinの特徴のひとつが、途中解約した場合の返戻金です。プレスリリースによると、解約返戻金は以下のように推移します。
| 経過年数 | 解約返戻金 | 累計払込額 | 払込額との差 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 120,520円 | 120,000円 | +520円 |
| 2年 | 242,004円 | 240,000円 | +2,004円 |
| 3年 | 364,459円 | 360,000円 | +4,459円 |
| 4年 | 487,894円 | 480,000円 | +7,894円 |
| 5年(払込完了) | 612,317円 | 600,000円 | +12,317円 |
| 6年 | 620,889円 | 600,000円 | +20,889円 |
| 7年 | 629,581円 | 600,000円 | +29,581円 |
| 8年 | 638,395円 | 600,000円 | +38,395円 |
| 9年 | 647,333円 | 600,000円 | +47,333円 |
| 10年(満期) | 656,395円 | 600,000円 | +56,395円 |
出典:住友生命プレスリリース(2026年4月28日)
途中解約した場合の実質利回り(IRR試算)
払込完了5年時点で解約した場合のIRRは年率約0.84%(実データ計算)。満期10年まで保有することで1.2%に伸びる設計です。長期保有するほど実質利回りが改善する構造です。
ポイント:初年度から払込額を上回る設計
Chakinは初年度(1年経過時点)から解約返戻金が累計払込額を上回っています。これは「途中解約でも元本が確保できる安心感」として営業現場で説明されやすい点です。ただし、満期(10年)まで保持した場合が受取額の最大(656,395円)です。「初年度から元本超え」という安心感を得るために10年間の機会費用を払うかどうかが判断のポイントになります。
100万円シミュレーション:10年後に何円の差が生まれるか
👉 結論:Chakinは同リスク帯の国債より5万円多いが、NISAの税優遇と比べると差は大きい
月払いの試算だけでは差がイメージしにくいため、100万円を10年間運用した場合の比較を示します。
| 運用先 | 想定利回り | 10年後の金額 | 元本との差 |
|---|---|---|---|
| Chakin(実データ・IRR) | 年1.2% | 約113万円 | +13万円 |
| 個人向け国債・ネット銀行定期(同リスク帯) | 年0.8% | 約108万円 | +8万円 |
| 全世界インデックスファンド(参考・リスクあり) | 年5.0% | 約163万円 | +63万円 |
Chakinの数値はプレスリリース実データに基づくIRRから算出。インデックスファンドは過去実績を参考にした仮定であり、元本保証はなく将来のリターンを保証するものではありません。
同リスク帯(元本保証・無リスク)での比較では、Chakinは個人向け国債・ネット銀行定期(年0.8%水準)をやや上回ります。この点は正直に認める必要があります。
ただし、以下の点も踏まえてください。
- 税優遇なし:NISAやiDeCoは運用益が非課税になりますが、保険の差益は課税対象になりえます(一時所得等)
- 10年間の拘束:個人向け国債(変動10年)は1年経過後から中途換金可能。流動性が大きく異なります
- 機会費用:同リスク帯でChakinが年1.2%、国債が年0.8%とすれば差は年0.4ポイント。10年で13万円 vs 8万円です。この5万円の差が「10年間の拘束・元本超え保証の対価」として合うかどうかが判断軸になります
NISAを未使用のまましっかりとこちらを選ぶことは、税制優遇という武器を手放すことを意味します。
フェアな比較:リスク別3段階で見る
積立保険は元本割れリスクがほぼない商品です。フェアに比較するなら、同じリスク水準の商品から順に並べるべきです。
同リスク帯(元本保証・無リスク)
| 商品 | 利率・利回り |
|---|---|
| 大手銀行普通預金 | 0.02〜0.1% |
| ネット銀行定期預金(1〜5年) | 0.3〜1.0% |
| 個人向け国債(変動10年) | 直近0.72〜1.0%前後 |
| Chakin・実質利回り(IRR・実データ) | 年率約1.2% |
実データで計算すると、Chakinは同リスク帯の国債・定期預金をやや上回る水準にあります。ただし、拘束期間10年・流動性が低い点は国債より不利です。
中リスク(参考)
債券インデックスファンドは流動性が高くコストも低水準で、積立保険と異なり10年拘束がありません。
高リスク(参考)
全世界株式・S&P500インデックスファンドはリスク水準がまったく異なるため直接比較はフェアではありませんが、資産形成目的なら選択肢として把握しておく価値があります。
「予定利率が上がった」報道の裏にある構造
「良さそうに見える数字」の使われ方
保険の営業現場では「予定利率」「返戻率」「受取総額」という数字が使われます。これらは間違いではありませんが、比較の基準として使うには不完全です。
- 予定利率:保険会社が「この利率で資金を運用する」と約束した数字。実質利回りではありません。
- 返戻率109.3%:「払い込んだ額の109.3%が戻る」という表示。10年かけて9.3%増えても、年率換算では約1.2%です。
- 受取総額656,395円:600,000円より多いのは事実でも、10年間の機会費用・税優遇のなさを考慮すると実態が変わります。
なぜ売れるのか・なぜ買ってしまうのか
営業が勧める理由(一般論として)
現場でよく使われる説明は「60万円払って65万円戻ります」というトークです。ただし、「65万円が10年後」という時間軸をIRRに直した年率が提示されることはほぼありません。返戻率109.3%は事実ですが、年率換算すると約1.2%です。「増える」と「増える速度」は別の話です。
また、積立保険は代理店・営業担当者への販売手数料が高い商品カテゴリーです。インデックスファンドや国債と比べてコミッションが高い分、それが保険料コストに反映されています。
初心者が買ってしまう理由
「増えることが確定している安心感(元本割れなし)」と「保険というカテゴリーへの信頼感」が判断を後押しします。どちらも理解できる心理ですが、「安心できる商品」と「お得な商品」は別物です。
手数料が設計に与える影響
保険営業・代理店には販売時に手数料(コミッション)が支払われます。一般論として、この手数料が高い商品ほど加入者の受取額から差し引かれるコストが大きくなります。積立保険・変額保険・外貨建て保険などは手数料水準が高い傾向があり、その分だけ実質利回りが低くなる構造です。
「今上げた」タイミングの意味
市場金利が上昇すれば、保険会社の運用利回りも上がります。予定利率の引き上げはその一部を加入者に還元するものですが、全部は還元されません。保険会社の利鞘(スプレッド)が確保されたうえで1.5%が設定されています。
「金利が上がった時代に合わせた商品改定」という報道フレームには、加入者への実質的な還元がどの程度かという視点が抜けています。
積立保険はやめたほうがいいのか?
👉 結論:NISA未使用なら後回し。使い切った人・強制貯蓄が必要な人には選択肢になりえる
「やめたほうがいい人」と「向いている人」を分けると
| 判断軸 | 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|---|
| NISA・iDeCo活用 | 枠を使い切っている | まだ使い切っていない |
| 貯蓄の自己管理 | 強制貯蓄の仕組みが欲しい | 自分で積立設定できる |
| 元本保証の優先度 | 元本割れが絶対NG | ある程度の変動を許容できる |
| 資金の流動性 | 10年使わない余剰資金がある | 途中で使う可能性がある |
NISAをまだ使い切っていない方には「やめたほうがいい」という判断が強く当てはまります。NISAの非課税枠が残っている状態でこちらを選ぶことは、税制という最大の武器を使わずに戦うことと同じです。一方、枠を使い切っており強制貯蓄の仕組みが欲しい方には選択肢として成立します。
結論:あなたの状況別に整理する
NISAをまだ使い切っていない方 → この商品より先にNISAの非課税枠(年360万円)を使い切ることを優先してください。NISAで運用しながら、保障が必要なら掛け捨て定期保険を別途検討するほうが合理的です。
加入を検討している方(NISAを使い切っている) → 「10年拘束で年1.2%(実質利回り)」に納得できるなら選択肢になりえます。ただし個人向け国債変動10年(流動性あり・直近利率0.7〜1%前後)と比較した上で判断してください。
すでに加入している方 → 解約返戻金が累計払込額を上回っている状態が続く設計のため、闇雲な解約は不要です。ただしNISAをまだ使い切っていない場合は、解約と同時にNISAへの切り替えを検討する価値があります。
まだChakinに入っていない方へ
まずNISAの枠を使い切ることが、資産形成の第一優先です。非課税で運用できる枠を使い切ってから、それでも積立保険に意味があるかを判断する順番が合理的です。まだ始めていない方は、こちらから読んでください。
新NISAを30代で始める方法【初心者が最初にやること5ステップ】
NISAを始める口座選びに迷っている方は、こちらも参考にしてください。
楽天証券と松井証券を比較【30代投資家が11年使って正直比較|SBI証券も】
すでにChakinに加入している方へ
すでに加入している方は、解約すべきかどうかを経過年数と解約返戻金で判断できます。闇雲に解約するのも、惰性で続けるのも正解ではありません。現時点の解約返戻金と経過期間を確認し、損益分岐点を計算した上で判断することが必要です。
解約を検討する前に、先にこちらを読んでください。
積立保険の解約は損?解約返戻金と判断基準を解説(近日公開予定)
まとめ
- 住友生命Chakinのプレスリリース実データ(2026年4月28日):月1万円×5年払い込み・満期受取額は656,395円・返戻率109.3%
- 実データに基づく実質利回り(IRR)は年率約1.2%(予定利率1.5%との差は0.3ポイント)
- 同リスク帯の国債・定期預金(年0.8%水準)との差は約5万円(10年・100万円換算)。ただし流動性は国債が優る
- NISAをまだ使い切っていない方はこの商品より先に非課税枠の活用が優先
- 枠を使い切っており強制貯蓄の仕組みが欲しい方には選択肢になりえる
同じ「積立型保険の実利回り」を検証した記事
Chakinの実質利回り(IRR)約1.2%という数字が高いのか低いのかは、ほかの積立型保険・元本確保型商品と並べてみると見えてきます。同じ手法で実利回りを検証した記事を集めました。「予定利率」「返戻率」の表示に惑わされず、IRR(時間軸を含んだ実質利回り)で横並びに比較してみてください。
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いずれも「元本確保・低リスクの商品は、安心と引き換えに増えにくい」という同じ結論にたどり着きます。Chakin単体ではなく、この帯の商品全体の利回り感をつかんでおくと、保険の勧誘を受けたときに冷静に判断しやすくなります。
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この記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買・加入を推奨するものではありません。投資・保険の判断はご自身の責任で行ってください。