平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。保険業界で10年働いたあと IT企業へ転職し、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。投資歴は2015年からの10年超です。
この記事では、朝日生命の円建て確定年金「あさひの一時払年金」を取り上げます。退職金や満期保険金、相続で受け取ったお金など、「まとまった円資金をどこに置くか」で迷ったときに候補に挙がる商品です。先にお断りすると、私自身はこの商品に加入していません。資産形成のメインは NISA と企業型DCで進めているためです。あくまで保険業界で一時払商品を間近に見てきた経験と FP の知識をもとに、中立的に仕組みと使いどころを整理します。
この記事は商品の一般的な仕組みと公的な税制ルールをもとにした解説です。予定利率・受取額・税金の扱いは契約時期や契約形態、お住まいの状況によって変わります。加入を検討する際は、必ず最新の「ご契約のしおり」「重要事項説明書」と設計書をご自身で確認し、最終判断は自己責任で行ってください。本記事は特定商品の購入を勧誘するものではありません。
結論:「あさひの一時払年金」はこういう商品
最初に要点を3つにまとめます。
- まとまった円資金を一括で預け、据置期間で年金原資を育てて、5年・10年・15年の確定年金として受け取る商品です。終身年金ではなく期間が決まった「確定年金」が軸で、医師の診査や健康状態の告知は不要です。
- 予定利率は契約時点で固定されます。 安定している反面、契約後に世の中の金利やインフレが進んでも受取額は増えません。逆に低金利期に契約すると、その低い利率で長く固定されることになります。
- 一時払の個人年金は、個人年金保険料控除の対象外です。 ここは誤解が多いところで、節税目的で選ぶ商品ではありません。あくまで「置き場所」としての性格が強い商品です。
これらを踏まえて、向く人・向かない人を後半で仕分けします。
「あさひの一時払年金」の基本的な仕組み
公式情報(2026年8月12日確認)をもとに、商品の骨格を整理します。なお契約年齢などの条件は商品改定で変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。
「あさひの一時払年金」は愛称で、約款上の正式名称は5年ごと利差配当付新一時払個人年金保険です。名前のとおり配当のある商品で、ご契約のしおりにも年金や死亡給付金の支払いに関して「配当金がある場合はあわせてお支払いします」という記載があります。ただし配当の額は運用実績によって決まり、保証されたものではありません。前章の年金額例は「2026年4月現在の予定利率で計算」とだけ注記されており配当の扱いには触れていないため、本記事の試算にも配当は含めていません。
- 保険料の払い方:契約時に一時払保険料を朝日生命の金融機関口座へ振り込む一括払い
- 契約できる年齢:20〜70歳
- 告知:医師の診査や健康状態の告知は不要
- 年金の受け取り方:5年・10年・15年から選べる確定年金
- 据置期間:契約から年金開始までの据置期間を設定できる
- 予定利率:契約時点の予定利率で計算され、その後は固定。金利情勢によっては新規契約の取り扱いを停止することがある
- 年金開始後に被保険者が亡くなった場合:残りの年金支払期間に相当する未払いの年金現価が、年金受取人に支払われる
ざっくり言うと、「一括でお金を預け、据置期間で年金原資を少しずつ育て、決まった期間にわたって取り崩しながら受け取る」円建ての商品です。株や投資信託のように値動きで増減するものではなく、契約時に受取イメージが固まる設計が特徴です。
あさひの一時払年金は200万円でいくら戻るのか|公式の年金額例と戻り率
「結局どのくらい増えるの?」というのが、いちばん気になるところだと思います。ここは設計書を取り寄せなくても、公式の商品ページに年金額の例が載っています。一時払保険料200万円・年金種類は10年確定年金・2026年4月現在の予定利率で計算した数字で、据置期間と契約年齢・性別の12パターンが示されています。
据置期間10年の場合(一時払保険料200万円・10年確定年金)
| 性別・契約年齢 | 年金額(年1回) | 年金受取総額 | 戻り率 | 年金開始時に一括で受け取る場合 |
|---|---|---|---|---|
| 男性40歳 | 241,300円 | 2,413,000円 | 120.6% | 2,252,126円(112.6%) |
| 男性50歳 | 241,700円 | 2,417,000円 | 120.8% | 2,255,859円(112.7%) |
| 男性60歳 | 242,400円 | 2,424,000円 | 121.2% | 2,262,392円(113.1%) |
| 女性40歳 | 241,300円 | 2,413,000円 | 120.6% | 2,252,126円(112.6%) |
| 女性50歳 | 241,400円 | 2,414,000円 | 120.7% | 2,253,059円(112.6%) |
| 女性60歳 | 241,500円 | 2,415,000円 | 120.7% | 2,253,992円(112.6%) |
据置期間15年の場合(同上)
| 性別・契約年齢 | 年金額(年1回) | 年金受取総額 | 戻り率 | 年金開始時に一括で受け取る場合 |
|---|---|---|---|---|
| 男性40歳 | 260,000円 | 2,600,000円 | 130.0% | 2,426,658円(121.3%) |
| 男性50歳 | 261,200円 | 2,612,000円 | 130.6% | 2,437,858円(121.8%) |
| 男性60歳 | 263,600円 | 2,636,000円 | 131.8% | 2,460,258円(123.0%) |
| 女性40歳 | 259,600円 | 2,596,000円 | 129.8% | 2,422,925円(121.1%) |
| 女性50歳 | 259,900円 | 2,599,000円 | 129.9% | 2,425,725円(121.2%) |
| 女性60歳 | 260,500円 | 2,605,000円 | 130.2% | 2,431,325円(121.5%) |
出典:朝日生命「あさひの一時払年金」の年金額・年金受取総額例(2026年8月12日確認)。2026年4月現在の予定利率で計算された数値であり、実際の年金額は契約時に適用される予定利率によって変わります。戻り率は小数点第2位を切り捨てた表示です。
戻り率120.6%を年率に直すと何%か
戻り率130.0%という数字は大きく見えますが、これは25年(据置15年+受取10年)かけて到達する数字です。時間軸を戻して年率にすると、印象が変わります。
以下は本記事の試算です。一時払保険料200万円を契約時に払い、第1回年金を年金支払開始日に受け取る前提(ご契約のしおりの記載どおり期首払い)で、キャッシュフローから内部収益率(IRR)を求めました。
| ケース(男性40歳) | 公式の戻り率 | 実効利回り(年率・本記事試算) |
|---|---|---|
| 据置10年+10年確定年金 | 120.6% | 約1.31% |
| 据置15年+10年確定年金 | 130.0% | 約1.36% |
| 据置10年で年金開始時に一括受取 | 112.6% | 約1.19% |
据置期間を5年延ばしても、年率で見た改善は0.05ポイント程度です。「据置を長くすれば戻り率が上がる」のは事実ですが、上がっているのは期間の長さの分であって、利回りそのものが大きく良くなるわけではありません。
そして同じ2026年8月時点で、財務省が募集している個人向け国債の表面利率は変動10年(第197回)が年1.87%、固定5年(第185回)が年2.06%、固定3年(第195回)が年1.71%となっています(募集期間 令和8年8月6日〜31日。出典:財務省「現在募集中の個人向け国債」・2026年8月12日確認)。
国債の利子は20.315%が源泉徴収されるため、税引後は変動10年で年1.4901095%です。一時払年金の年金は雑所得として課税されるので、こちらも税引前どうしで並べるのが素直な比較になります。税引前で1.87%対1.31%。同じ「円建てで安全に置く」目的なら、いま利回りだけで比べると国債のほうが上です。
ただし性格は同じではありません。変動10年の利率は半年ごとに見直されるので10年間の利回りは事後的にしか分からないのに対し、一時払年金は契約時点で受取額が確定します。また一時払年金には、後述する「決まった期間に自動で受け取れる」「遺族への引き継ぎ設計がある」という機能が付いています。利回りだけで決める商品ではない、というのが正確なところです。
あさひの一時払年金のメリット
中立に見て、この商品の強みは次のとおりです。
- 値動きがなく、受取イメージを契約時に固定できる:株や投資信託のように日々増減しないので、相場を見て一喜一憂したくない人には精神的にラクです。
- 告知・診査が不要で入りやすい:健康状態に不安があっても、医師の診査や告知なしで申し込めます。
- 据置期間で年金原資を育てられる:すぐに使わないお金を、確定年金の形にして計画的な受け取りへ整えられます。ただしこの「育つ」は、途中で引き出せる形では増えません。ご契約のしおり(23項)と重要事項説明書には「据置期間中に解約されたときの返戻金額は一時払保険料相当額となります。ただし、ご契約後一定期間で解約された場合は一時払保険料相当額を下回ります」と書かれています。つまり据置10年の途中でやめると、戻ってくるのは払った200万円と同額(一定期間内ならそれ未満)です。増加分が姿を現すのは年金支払開始日に到達してからで、その時点ではじめて一括受取額2,252,126円という数字になります。商品ページ自身も「据置期間中の死亡給付金・解約返戻金を一時払保険料相当額に抑えることで、年金受取額を多くする仕組み」と説明しており、これは設計上の意図です。据置期間はメリットと段差がセットになっている、という理解が要ります。
- 取り崩しの仕組みが自動化される:自分で資産を取り崩すのが苦手な人でも、決まった期間に自動で受け取れます。
- 遺族への引き継ぎ設計がある:年金開始後に被保険者が亡くなっても、残期間分の年金現価が受取人に支払われます。
あさひの一時払年金のデメリット
一方で、理解しておくべき弱点もはっきりしています。
- インフレ・金利上昇に弱い:予定利率は契約時固定なので、契約後に物価や金利が上がっても受取額は増えません。
- 一時払は個人年金保険料控除の対象外:節税目的で選ぶ商品ではありません(詳細は後述)。
- 据置期間中は増えず、契約後一定期間は元本割れする:据置期間中に解約したときの返戻金は一時払保険料相当額で、契約後一定期間ならそれを下回ります。増加分は年金支払開始日に到達してはじめて出ます。
- 増える力は限定的:公式の年金額例から計算した実効利回りは年1.3%前後で、2026年8月募集分の個人向け国債(変動10年 年1.87%)を下回ります。長期で大きく増やす力は投資信託などに比べるとさらに小さいです。
- 金利情勢で取り扱いが止まることがある:新規契約が一時的にできなくなる場合があります。
ポイント1:予定利率の「固定」はメリットにもデメリットにもなる
一時払年金のいちばんの肝は予定利率です。ここでいう予定利率とは、保険会社があらかじめ見込む運用収益の分だけ保険料を割り引くための率で、契約者が手にする実質利回りとイコールではありません。事業費などのコストが差し引かれるため、実際の利回りは予定利率より低くなります。
契約した時点の予定利率で受取額が決まり、その後は動きません。これは「契約後に金利が下がっても影響を受けない」という安心につながります。一方で、契約後にインフレが進んだり世の中の金利が上がったりしても、受取額は増えないという弱点も同じ理由から生まれます。
私が保険業界にいた頃から、一時払年金や一時払終身は「金利が動くと商品性がガラッと変わる」タイプの代表でした。実際このあさひの一時払年金も「金利情勢によっては新規の取り扱いができないことがある」と明記されています。これは裏を返せば、利率水準次第で魅力が大きく変わる商品だということです。
検討する際は、その時点の予定利率を確認したうえで、
- 同じ時期の 個人向け国債(変動10年) の適用利率
- 定期預金 の店頭金利
- 物価上昇率(インフレ) の見通し
と並べて比べるのが現実的です。固定金利の安心料として納得できる水準かどうか、という見方をおすすめします。
ポイント2:一時払は「個人年金保険料控除」の対象外
ここはとても誤解が多い論点です。
毎月コツコツ払うタイプの個人年金保険には「個人年金保険料控除」がありますが、一時払の個人年金は、税制適格の個人年金保険料控除の要件(保険料払込期間10年以上など)を満たさないため、対象外です。一時払商品を「節税になるから」という理由で選ぶのは、出発点からずれてしまいます。
受取時の税金については、契約者と受取人が同じ人で確定年金を受け取る場合、毎年の年金は雑所得として所得税・住民税の対象になるのが一般的です。雑所得は「受け取った年金額から、それに対応する払込分(必要経費)を差し引いた残り」が課税対象になるため、受取額の全部に課税されるわけではありません。
注意したいのは契約形態です。契約者(お金を出す人)と年金受取人が違う場合は、年金開始時点で受取人に贈与税がかかるケースがあります。親が子のために契約する、夫が妻名義で受け取らせる、といった「名義の置き方」で税金の種類と金額が大きく変わるため、相続・贈与目的で使うときほど、契約前に税理士や担当者へ確認することをおすすめします。
ポイント3:早期解約は元本割れする(流動性が低い)
ご契約のしおりと重要事項説明書には、次のように書かれています。
あさひの一時払年金の据置期間中に解約されたときの返戻金額は、一時払保険料相当額となります。ただし、ご契約後一定期間で解約された場合は一時払保険料相当額を下回ります。
— 朝日生命「ご契約のしおり-定款・約款」23項(2026年4月版・p.47)、および「重要事項説明書(注意喚起情報)」11項
読み方は2段階です。契約直後の一定期間に解約すると、返戻金は払った金額を下回ります。そこを過ぎても、据置期間中はずっと一時払保険料と同額のままで、増えません。前章で見た増加分は、年金支払開始日に到達してはじめて発生します。
つまり、預けたあとの据置期間は「引き出せるが、増えない期間」です。急にまとまった支出が必要になって解約しても、待った年数は利回りとして返ってきません。生活防衛資金や、近いうちに使う予定のあるお金を入れる場所ではない、という点はしっかり押さえておきたいところです。
「当面使う予定がなく、置いておくこと自体が目的のお金」であることが、この商品を検討する前提条件になります。
退職金1,000万円を受け取ったら、どこに置くか
この記事にたどり着いた方の多くは、本音では「一時払年金そのもの」より「退職金や、まとまったお金をどうしよう」を考えていると思います。そこで、退職金1,000万円を受け取った場面を想定して、置き場所の候補を横に並べてみます。FP目線でのざっくりした性格づけが次のとおりです。
| 置き場所 | 安全性 | 流動性 | 増える力 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|---|
| 一時払確定年金 | 高い(円建て・固定) | 低い(据置中は増えず・契約後一定期間は元本割れ) | 公式の年金額例から年1.3%前後・契約時に固定 | 取り崩し前提の年金づくり |
| 個人向け国債(変動10年) | 高い | 中(1年経てば換金可・元本確保) | 第197回は年1.87%(税引前)・金利連動でインフレに少し追随 | 安全な置き場所 |
| 定期預金 | 高い | 高い | 低い | 短期の待機資金 |
| NISA(投信) | 価格変動あり | 高い | 期待リターン高・非課税 | 長期の資産形成 |
退職金のような大きなお金は、1つの商品にまとめて入れるのではなく、「すぐ使うお金」「数年内に使うかもしれないお金」「当面使わないお金」に分けて、それぞれに合った置き場所へ振り分けるのが基本です。
たとえば、当面の生活費や予備費は流動性の高い定期預金・普通預金に。数年内に使うかもしれない分は、1年経てば元本確保で換金できる個人向け国債(変動10年)に。当面使わず取り崩しの予定が立てやすい分は一時払確定年金に、長期で増やす余地がある分は NISA に、といった具合です。
私自身は資産形成のメインを NISA と企業型DC に置いています。値動きを受け入れて長期で増やす部分はそちらが担い、「絶対に減らしたくない、取り崩して使う円のお金」を別枠で安全に置く、という役割分担で考えています。一時払年金は、この「安全に置いて、決まった期間で受け取る」枠の選択肢のひとつ、という位置づけになります。
保険業界にいて感じていたこと
ここからは、商品の数字とは別の「現場感」の話です。
私が保険業界に身を置いていた頃の印象として、一時払年金や一時払終身を検討する人は、退職金を受け取った60代が中心でした。すでに収入を増やすフェーズを終えて、「これ以上減らしたくない」「計画的に受け取りたい」というニーズが強い年代です。逆に、30〜40代でこうした一時払商品を選ぶケースはあまり多くなかった印象があります。
理由はシンプルで、現役世代はまだ長期で増やす時間が十分にあるからです。私自身も、現役のうちは値動きを受け入れて長期で増やす NISA を優先しています。一時払年金が悪い商品という意味ではなく、ライフステージによって「合う・合わない」がはっきり分かれる商品だということです。同じ円建ての安全資産でも、20年後の自分が使う前提なのか、これから取り崩していく前提なのかで、向き不向きが変わります。
「あさひの一時払年金」が向く人・向かない人
ここまでを踏まえて、仕分けします。
向きやすい人
- 退職金や相続資金など、まとまった円資金があり、当面は使う予定がない
- 値動きでハラハラしたくなく、受取イメージを契約時に固定したい
- 自分で取り崩すのが苦手で、決まった期間に自動で受け取れる仕組みがほしい
- すでに NISA や預貯金で「使うお金」「増やすお金」は確保できている
向きにくい人
- 節税(控除)を期待している(一時払は個人年金保険料控除の対象外)
- 近い将来に使う可能性があるお金を預けようとしている(早期解約で元本割れ)
- インフレや金利上昇で受取額も増えてほしい(固定金利なので増えない)
- まだ資産形成の途中で、長期で増やす余地が大きい現役世代
ざっくり言えば、「増やす商品」ではなく「すでにあるまとまった円を、安全に・計画的に受け取る形に整える商品」です。現役で資産形成を進めている段階の人より、使うフェーズに入った資金を持つ人に検討余地があります。
朝日生命の評判・苦情|生命保険協会の公表データで見る
退職金というまとまった金額を預ける相手なので、会社側の情報も確認しておきたいところです。会社単位の苦情件数は、生命保険協会が四半期ごとに会社別で公表しています。
| 項目 | 朝日生命 | 業界平均(27社) |
|---|---|---|
| 協会に寄せられた苦情件数 | 155件 | — |
| 個人保険保有契約件数 | 7,413,979件 | — |
| 保有契約100万件あたり | 20.9件 | 16.3件 |
| (参考)各社が自社で受け付けた苦情件数 | 15,290件 | — |
協会に寄せられた155件の内訳:新契約関係 21.3% 収納関係 1.9% 保全関係 29.7% 保険金関係 38.1% その他 9%
2025年度第1~第4四半期。出典:生命保険協会「生命保険各社の苦情受付情報」。
業界平均は同じ公表資料のうち個人保険保有契約件数が100万件以上の27社について、苦情件数の合計を保有契約件数の合計で割った値です(単純平均ではありません)。
協会に寄せられた件数は窓口が一つなので会社間で比べられますが、各社が自社で受け付けた件数は苦情の定義・計上範囲が会社ごとに異なるため、会社間の比較には使えません。件数の多寡は商品や会社の優劣を示すものではありません。
保有契約100万件あたりで見ると、業界平均より多い水準です。ただしこの数字が示すのは協会の窓口に申出が持ち込まれた頻度で、商品の設計や会社の支払能力を示すものではありません。そちらを確かめたいときは、後述のFAQで触れる経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)のような別の指標を見ることになります。
内訳では保険金関係が最も大きく、申出の4割近くが保険金・給付金の支払をめぐる局面で生じています。一時払年金は「受け取り方を先に決める商品」なので、本記事で確認した受取期間・受取開始時期・遺族が受け取る場合の扱いを契約前に書面で押さえておくことが、この局面での認識のずれを避ける手段になります。
なお公表データは会社単位で、あさひの一時払年金単独の件数は分かりません。商品別の内訳は公表されていません。
よくある質問(FAQ)
Q. 元本保証ですか?
A. 「常に元本保証」ではありません。円建てなので日々の値動きはありませんが、契約後一定期間で解約すると、解約返戻金が一時払保険料相当額を下回り元本割れする点に注意が必要です。その期間を過ぎても据置期間中の返戻金は一時払保険料相当額のままで、増えません。あくまで「年金支払開始日まで持てば、契約時に決まった年金額を受け取れる」設計であって、いつ解約しても元本が守られる商品ではありません。また、保険会社の保険商品は預金保険(ペイオフ)のような公的な元本保証の対象ではなく、保護の仕組みも預金とは異なります。
Q. 保険会社の健全性はどう確認すればいいですか?
A. 支払余力を示す指標は、2026年3月期から経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)に変わりました。早期是正措置の対象も旧規制の200%未満からESRの100%未満になり、水準の出方そのものが違います。一時払年金はまとまった額を一社に長く預ける商品ですが、比率だけで健全性のすべてを判断できるものではないため、各社のディスクロージャー誌もあわせて確認してください。新旧の水準差と見方は30代の保険は見直しが先|削るべき保険と残すべき保険の判断基準に整理しています。
Q. 個人年金保険料控除は使えますか?
A. 使えません。一時払の個人年金は、税制適格の個人年金保険料控除の要件(保険料払込期間10年以上など)を満たさないため、控除の対象外です。節税を目的に選ぶ商品ではない、という点は押さえておいてください。受取時は契約形態に応じて雑所得や贈与税の扱いになります。
Q. 途中で解約できますか?
A. 解約自体はできますが、契約後一定期間で解約すると解約返戻金が一時払保険料相当額を下回ります。その期間を過ぎても据置期間中は一時払保険料相当額のままで増えないため、待った年数は利回りとして返ってきません。近いうちに使う可能性があるお金を入れる場所ではありません。
Q. いくらから加入できますか?
A. 最低の一時払保険料は、公開されている資料の中では見つけられませんでした。2026年8月12日に確認したのは、商品ページ・「ご契約のしおり-定款・約款」(2026年4月版・58ページ/新一時払個人年金保険の約款本文を含む)・「重要事項説明書(注意喚起情報)」・「金額例表等について」(契約日2026年4月2日以降)の4文書で、いずれにも最低額の記載はありませんでした。公式ページの金額例が200万円で示されているため、これが実務上の目安になっている可能性はありますが、確認できたのは「例示が200万円である」ということまでです。実際の最低金額と上限は担当者にご確認ください。
Q. 終身ずっと受け取れる年金ですか?
A. いいえ。終身年金ではなく、5年・10年・15年から選ぶ「確定年金」です。決めた期間だけ受け取る仕組みで、一生涯受け取り続けるタイプではありません。
Q. 健康状態の告知や医師の診査は必要ですか?
A. 不要です。医師の診査や健康状態の告知なしで申し込めるため、健康に不安がある方でも検討しやすい商品です。
Q. インフレに対応できますか?
A. 弱いです。予定利率は契約時点で固定されるため、契約後に物価や金利が上がっても受取額は増えません。インフレで受取額も増えてほしい人には向きません。
Q. NISAとどちらがおすすめですか?
A. 目的が違うので、二択ではなく役割分担で考えるのが現実的です。お金を増やすことが目的なら NISA(長期・分散で期待リターンが高く、運用益が非課税)、すでにあるまとまった円を安全に・計画的に受け取ることが目的なら一時払確定年金、という整理になります。どちらが上というより、「増やす枠」と「安全に受け取る枠」を分けて、自分のライフステージと資金の目的に合わせて使い分けるのがおすすめです。
まとめ:節税ではなく「置き場所と受け取り方」で考える
あさひの一時払年金は、まとまった円資金を一括で預けて、5年・10年・15年の確定年金として計画的に受け取るための商品です。公式の年金額例では、一時払保険料200万円・据置10年・10年確定年金で戻り率120.6%(本記事試算の実効利回りは年約1.31%)、据置15年なら130.0%(同 年約1.36%)となっています。
値動きがなく受取イメージを契約時に固定できる安心感がある一方で、予定利率は契約時固定でインフレに弱く、一時払は個人年金保険料控除の対象外、据置期間中は解約しても増えず契約後一定期間は元本割れする、という性格を理解しておく必要があります。そして2026年8月時点では、同じ「円建てで安全に置く」目的の個人向け国債(変動10年 年1.87%・固定5年 年2.06%)のほうが利回りでは上回ります。
それでも検討する価値があるとすれば、それは利回りではなく「決まった期間に自動で受け取れる」「遺族への引き継ぎ設計がある」という機能のほうです。少なくとも「節税のために」「とりあえず増やすために」という入り方は、この商品にはかみ合いません。
最終的な加入判断は、最新の設計書と「ご契約のしおり」「重要事項説明書」を確認し、税金の扱いは契約形態ごとに専門家へ相談したうえで、ご自身の責任で行ってください。
退職金を受け取ったら最初に考えたいこと
退職金の運用先は、一時払年金かNISAかの二択ではありません。私自身は、生活防衛資金/当面使う予定のお金/長期で運用するお金、を分けて考えています。退職金を受け取った直後は、焦って全額を1つの商品へ入れず、まず資産全体の役割分担を整理することが大切です。
そのうえで、「長期で増やす枠」をこれから準備したい方は、まず NISA の始め方から押さえておくと判断がしやすくなります。非課税枠を使うには証券口座が必要なので、目的が「増やす」だと固まったときにすぐ動けるよう、先に口座だけ用意しておくという進め方もあります。